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- 声でつながる演芸会 ~林家彦いち独演会~
落語を聞いて笑うことが元気の源なのだという、さいとうさん。今回は、林家彦いち独演会の様子を臨場感たっぷりにレポートしてくれました。テンポのいい、さいとうさんのレポートを読むと、まるで落語を聞いているかのように楽しめます。
目次
林家彦いち独演会
オンライン生配信「林家彦いち独演会」を観ました。この催しで得た収益は、全国の子ども食堂や、COVID-19(新型コロナウィルス)でダメージを受けた生産者の応援に使われるそうです。
楽しく笑って社会貢献できるなんて、こんなに素晴らしいことはありません。良い演芸会を選んだと、誇らしい気持ちにさえなりました。
会場は東京都世田谷区経堂の某所で、配信が主ですが、近所の方々がソーシャルディスタンスを取りながら、ぞろぞろっと入場し、観覧しておりました。この演芸会は浅田飴プレゼンツでしたので、配信組の私にも浅田飴が送られてきました。
林家彦いち師匠は、鹿児島県出身で「笑点」でお馴染みの林家木久扇師匠の3番弟子です。1989年12月より、林家きく兵衛として噺家の世界に入りました。1993年5月に二つ目に昇進、大師匠の林家彦六師匠から一文字をもらい、彦いちと改名。2002年3月真打昇進。2003年から2011年まで東京都立大学の非常勤講師を務めました。
主な受賞歴
2000年 第10回北とぴあ落語大賞・NHK新人演芸大賞落語部門大賞
2004年 彩の国落語大賞殊勲賞・第9回林家彦六賞
2007年 彩の国落語大賞
林家やまびこ・きよひこ・ひこうきという3人の弟子がいます。
古典落語と新作落語の両方を手掛ける彦いち師匠ですが、本日の一席目は新作でした。
「つばさ」
古典落語の時代よりはるか昔、ビッグバンがあった頃のことです。そこには、二つの同じような世界があり、私達がいるこちらの世界とは違い、向こうの世界の人々には体に「つばさ」が付いておりました。
寄席がはねた後、新宿末廣亭から、浅草演芸ホールへ収録のために移動する彦いちは、東京上空をつばさをひろげて向かいます。ところが吾妻橋でちょっと思いついたことが、とんでもない事態を招き、誤解を生んでしまうという噺です。
大空を自由に飛び回る彦いちさんの、バサバサッと羽を広げる仕草が心に残ります。途中、吾妻橋で民生委員が出てきたあたりから、どんどん引き込まれていきました。実はこの噺は9月にも配信で鑑賞しましたが、近年の代表作といってもいいかと思いました。
休憩なしで、二席目に入りました。いつもパワフルな彦いち師匠らしいと思い、今度は古典落語だろうと決めつけていましたが、これまた新作落語でした。
「神々の唄」
主人公は「嘘つきゲンちゃん」と呼ばれていて、詐欺師程悪ではないけれど、自分を大きく見せたくて話をつい盛ってしまうタイプなのです。大概はすぐにバレる嘘で、「ほら吹きゲンちゃん」とも呼ばれています。でも、たまに嘘が大きくなり過ぎて、そこにはいづらくなってしまいます。
そして、度々引っ越しを余儀なくされる女房は泣いております。やっとなじんだ新しい環境で、またまた嘘をついてしまったゲンちゃん、八幡様のお祭りにあの天使の歌声の「スーザン・ボイル」をゲストに呼べると言ってしまったのです。嘘だと分かっている友人たちが、一緒に謝ってあげると言ってくれたのに「呼べるよ」と言い切ってしまったため、友人にも見放されてしまいます。
こうなると、頼れるのは女房だけです。亭主の嘘つきが直りますようにと祈りながら、毎日八幡様の境内を掃除する女房に、あろうことか「スーザン・ボイルになって」と頼むゲンちゃん。「またか」と嘆く女房は、八幡様に嘘のつき納めですからと願をかけ、やむなくスーザン・ボイルのそっくりさんとして、人々に歌を披露します。
ところが、これが町おこしとして、全国の八幡様のお祭りから引っ張りだことなるのです。実は、この女房は歌手になるのが夢でしたので、思いがけずその夢が叶うという結果になりました。途中で語られるゲンちゃんの嘘のエピソードも面白く、楽しく聞きました。
古典落語には「弥次郎」「やかん」「ちりとてちん」「千早ふる」など嘘をついても、許される噺が多々あります。この噺も嘘をつかれた人々が、最初はポスターを見て、「スーザン・ボイルは、どうせそっくりさんだよ、本物のはずがないよ」と大らかに受け止めてくれたことで、夫婦の運気がアップしました。落語の世界の住人は、みんな優しいのです。
「林家彦いち独演会」を見て、幸せな気持ちになった祝日の午後でした。
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