落語自由自在38

声でつながる演芸会 ~林家彦いち独演会~

公開日:2020.11.27

更新日:2020.12.22

落語を聞いて笑うことが元気の源なのだという、さいとうさん。今回は、林家彦いち独演会の様子を臨場感たっぷりにレポートしてくれました。テンポのいい、さいとうさんのレポートを読むと、まるで落語を聞いているかのように楽しめます。

林家彦いち独演会

オンライン生配信「林家彦いち独演会」を観ました。この催しで得た収益は、全国の子ども食堂や、COVID-19(新型コロナウィルス)でダメージを受けた生産者の応援に使われるそうです。

楽しく笑って社会貢献できるなんて、こんなに素晴らしいことはありません。良い演芸会を選んだと、誇らしい気持ちにさえなりました。

会場は東京都世田谷区経堂の某所で、配信が主ですが、近所の方々がソーシャルディスタンスを取りながら、ぞろぞろっと入場し、観覧しておりました。この演芸会は浅田飴プレゼンツでしたので、配信組の私にも浅田飴が送られてきました。

林家彦いち師匠は、鹿児島県出身で「笑点」でお馴染みの林家木久扇師匠の3番弟子です。1989年12月より、林家きく兵衛として噺家の世界に入りました。1993年5月に二つ目に昇進、大師匠の林家彦六師匠から一文字をもらい、彦いちと改名。2002年3月真打昇進。2003年から2011年まで東京都立大学の非常勤講師を務めました。

主な受賞歴
2000年 第10回北とぴあ落語大賞・NHK新人演芸大賞落語部門大賞
2004年 彩の国落語大賞殊勲賞・第9回林家彦六賞
2007年 彩の国落語大賞
林家やまびこ・きよひこ・ひこうきという3人の弟子がいます。

古典落語と新作落語の両方を手掛ける彦いち師匠ですが、本日の一席目は新作でした。

「つばさ」

古典落語の時代よりはるか昔、ビッグバンがあった頃のことです。そこには、二つの同じような世界があり、私達がいるこちらの世界とは違い、向こうの世界の人々には体に「つばさ」が付いておりました。

寄席がはねた後、新宿末廣亭から、浅草演芸ホールへ収録のために移動する彦いちは、東京上空をつばさをひろげて向かいます。ところが吾妻橋でちょっと思いついたことが、とんでもない事態を招き、誤解を生んでしまうという噺です。

大空を自由に飛び回る彦いちさんの、バサバサッと羽を広げる仕草が心に残ります。途中、吾妻橋で民生委員が出てきたあたりから、どんどん引き込まれていきました。実はこの噺は9月にも配信で鑑賞しましたが、近年の代表作といってもいいかと思いました。

休憩なしで、二席目に入りました。いつもパワフルな彦いち師匠らしいと思い、今度は古典落語だろうと決めつけていましたが、これまた新作落語でした。

「神々の唄」

主人公は「嘘つきゲンちゃん」と呼ばれていて、詐欺師程悪ではないけれど、自分を大きく見せたくて話をつい盛ってしまうタイプなのです。大概はすぐにバレる嘘で、「ほら吹きゲンちゃん」とも呼ばれています。でも、たまに嘘が大きくなり過ぎて、そこにはいづらくなってしまいます。

そして、度々引っ越しを余儀なくされる女房は泣いております。やっとなじんだ新しい環境で、またまた嘘をついてしまったゲンちゃん、八幡様のお祭りにあの天使の歌声の「スーザン・ボイル」をゲストに呼べると言ってしまったのです。嘘だと分かっている友人たちが、一緒に謝ってあげると言ってくれたのに「呼べるよ」と言い切ってしまったため、友人にも見放されてしまいます。

こうなると、頼れるのは女房だけです。亭主の嘘つきが直りますようにと祈りながら、毎日八幡様の境内を掃除する女房に、あろうことか「スーザン・ボイルになって」と頼むゲンちゃん。「またか」と嘆く女房は、八幡様に嘘のつき納めですからと願をかけ、やむなくスーザン・ボイルのそっくりさんとして、人々に歌を披露します。

ところが、これが町おこしとして、全国の八幡様のお祭りから引っ張りだことなるのです。実は、この女房は歌手になるのが夢でしたので、思いがけずその夢が叶うという結果になりました。途中で語られるゲンちゃんの嘘のエピソードも面白く、楽しく聞きました。

古典落語には「弥次郎」「やかん」「ちりとてちん」「千早ふる」など嘘をついても、許される噺が多々あります。この噺も嘘をつかれた人々が、最初はポスターを見て、「スーザン・ボイルは、どうせそっくりさんだよ、本物のはずがないよ」と大らかに受け止めてくれたことで、夫婦の運気がアップしました。落語の世界の住人は、みんな優しいのです。

「林家彦いち独演会」を見て、幸せな気持ちになった祝日の午後でした。

 

■もっと知りたい■

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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