落語自由自在33

オンラインで生配信「志の春落語劇場」

公開日:2020.08.19

更新日:2020.08.25

落語が大好きなさいとうさん。落語を聞いて笑うことが元気の源なのだそう。コロナ禍でなかなか寄席には行けませんが、オンライン生配信で落語を楽しんでいます。今回は、志の春落語劇場について語ってくれました。

一度聞いてみたかった志の春師匠の噺

志の春師匠の噺

志の春さんは、アメリカ・イェール大学を卒業後、三井物産勤務という異色の経歴を経て、2002年10月立川志の輔師匠に入門、2011年1月に二ツ目、2020年4月に真打に昇進しました。

毎月届く演芸専門誌「東京かわら版」で志の春師匠を知り、噺を聞いてみたいと思いましたが、立川流は寄席に出ないので、簡単にはいきません。おまけにコロナ禍の真っただ中、チャンスはないと諦めておりました。折りしも、オンライン落語会で度々お世話になっているPeatixより「志の春落語劇場7月」の案内が届き、飛び付きました。

パソコンをテレビにつなぎ、今か今かと待っていますと、しゃれたアレンジの「ウィリアム・テル序曲」が流れてきました。チャットに「おしゃれな曲だ」と打った方がいます。これはロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」といって、私が小学生の頃、「ローン・レンジャー」というテレビ番組のテーマ曲として使われ、大人気でしたね、と打とうとしてハタと手が止まりました。恐らく私よりずっとお若い人だから、わかるわけがないのです。

こういう場合、大概は三味線太鼓ですから、予想を覆す音楽にワクワクして、ついチャットでコメントを打とうとしてしまいました。やがて三味線で「春がきた」が流れ……、志の春だから「春がきた」か、なるほどと感心していたら、志の春師匠が登場! 今夜は料亭からの生配信だそうで、背景はしゃれた襖になっています。

「青菜」 志の春

「青菜」 志の春

「青菜」は落語のスタンダード、滑稽噺の典型です。

お屋敷で仕事中の植木屋がひと休みしていると、主人から声を掛けられ、お酒を勧められます。ごちそうになったのは、上方の柳蔭(やなぎかげ)と言う銘酒で、すっかりいい心持ちになり、おまけにコイのあらいまでいただき上機嫌。続いて大好物の菜のおひたしを勧められます。

ところが、次の間から奥様が「鞍馬より牛若丸が出でまして、その名を九郎判官(くろうほうがん)」と言います。旦那は「義経にしておけ」と答え、よく意味のわからないことを言って植木屋を煙に巻きます。

植木屋はもしや来客かと思い、「お客様がお見えなら失礼します」と言うと、旦那は「お客ではない。菜はもう食べてしまってないので、「菜は食らう=九郎」、「それならよしとけ=義経」という意味で、失礼のないように隠語で話したと、植木屋に説明しました。そのやり取りにすっかり感心した植木屋は、家に帰ると女房に話し、悪友を相手に同じことをしようと企てます。

志の春師匠の演ずる品のいいお屋敷の主人と、落ち着いていながら、やがて暴走を始める植木屋のおかしさが相まって、グイグイと引き込まれてしまいました。

「寝床」 志の春

「寝床」 志の春

大店の旦那は「義太夫」に凝っていて、豪華な料理とお酒を出して義太夫を聞かせれば、さぞ長屋の住人たちは喜ぶだろうと思っていますが、住人達はそれが苦痛で、いろいろと理由をつけて逃げようとします。

ある日住人が全員断るので、それでは店の使用人達に聞かせようとすると、これまたみんな仮病を使います。腹を立てた旦那は、全員出て行けと怒ってふて寝をしてしまいます。これに困った一同は、義太夫を聞こうと話し合い、再び旦那の部屋へ行きます。

「どうせ私は下手ですよ」といじける旦那に「旦那様の芸には華と味があります。技術はお稽古をすれば身に付きますが、人の華というものは後から身に付けられるものではないです。天から授かったものです」とおだてて、その気にさせるシーンは何とも圧巻です。

金物屋が全国金物屋連盟の会長を辞任してきましたと、さらに追い打ちをかけ、「旦那様の義太夫が聞けないのなら、全国金物屋連盟の会長などやっていても仕方ありません」と、とどめを刺します。一度欠席と言ったのに、なぜまた来たのかをいちいち聞き出す旦那もすごいです。理路整然としていて、その隙間におかしさがあり、真っ直ぐに演ずる志の春師匠の落語は、実に楽しくて爽やかでした。

 

志の春師匠のアフタートーク

志の春師匠、「青菜」に登場したお酒の柳蔭(やなぎかげ)を、岐阜の白扇酒造から取り寄せたと言って、飲み始めます。

「キツイお酒です」と言ってから、瓶のラベルを読みます。お酒は割ってお飲みくださいと書かれていて、「割って? どおりでキツイと思った」と言いながらそのまま飲み、チャットを見ながらトークが続きます。オンライン生配信ならではの粋な演出でした。

予定では、生配信は1時間ということでしたが、気が付くと30分もオーバーをしていました。次回は8月14日、師匠の誕生日に開催されるそうで、早速申し込みました。楽しみです。

        

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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