落語自由自在(72)

一席お付き合いを願います~かぼちゃ屋~

公開日:2023.08.01

「かぼちゃ屋」は古典落語の演目の一つで、別名「唐茄子屋(とうなすや)」とも言います。元々は「みかん屋」という上方落語の演目で、大正初年に4代目柳家小さんが東京に持ち込みました。

唐茄子とは?

唐茄子とは、かぼちゃを小型化し、甘みを強くしたもので、明和年間(1764年~1772年)から出回りました。

今の若い人は「唐茄子屋でござぁ~い」と売り声を上げながら「重たい、重たい」と天秤棒を担ぐシーンが理解できないようだと、ある師匠が言っていました。

唐茄子をドーナツだと思ったようで、あんな軽い物を重たいと大げさに言うのはおかしい、という感想文が届いたそうです。唐茄子とドーナツ、耳で聴くと似ていますから、分からなくもないですが、落語家にとっては、やりにくいですね。

「かぼちゃ屋」のあらすじ

二十歳になっても仕事をせず、遊んでいる与太郎は、いつも頭に霧がかかったようにぼんやりしていて、何をやらせてもうまくできず、面倒をみている叔父の佐兵衛は、心配が絶えません。

ある日、与太郎の母の頼みで、商売を教える事になり、かぼちゃを売るようにと持ち掛けます。

「大きい方が13銭、小さい方が12銭。これは元値だから、売る時は上を見て売れよ」とアドバイスします。

ここなのです。初めて商売をする与太郎にとっては、元値ではなく、最初から売値を教えるべきだと思うのですが、どういう訳か、噺はそのまま進んでいきます。

暑い最中、四苦八苦している与太郎を見かねた男が、かぼちゃを売りさばいてくれます。案の定、元値をそのまま言って、与太郎は空を眺めています。叔父さんの教えに従って、上を見ているのです。

唐茄子は、たちまち売り切れてしまい、叔父さんに報告しますが、元値で売ったと分かると「上を見ろとは、掛値をすることだ。もう一度売ってこい」と叱られてしまいます。

ここが理不尽で、どうにも腹立たしいのです。「叔父さんが悪かった。きちんと説明するべきだった」と言って、謝るのが本当だと思います。

「かぼちゃ屋」のあらすじ

沖縄初の落語家

先日、いろは亭の配信を観ていたら、立川笑二さんが「あたいのこと普段からバカにしているのだから、こんな時もちゃんとバカとして扱って欲しい。『上を見ろ』なんて漠然とした言い方をしないで、はっきり掛値をしろと言ってくれればいいのだ」と与太郎に言わせていました。

今まで随分この噺を聞いてきましたが、叔父さんを批判する与太郎は初めてでした。中々斬新で、客席からも笑いが沸き起こっていました。

沖縄初の落語家

立川笑二さんは立川談笑師の2番弟子で、沖縄出身の初めての落語家です。落ち着いていて、32歳とは思えない風格を感じました。

「かぼちゃ屋」は、たくさんの方が演じていますので、ぜひ聞いてみて下さい。落語「かぼちゃ屋」と検索すると出てきます。理不尽だけど、面白い噺です。

■もっと知りたい■

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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