落語会体験記34

三遊亭円楽プロデュース「大手町落語2020」

公開日:2020.08.25

落語を聞いて笑うことが元気の源なのだというさいとうさん。コロナ禍でなかなか寄席には行けませんが、オンライン生配信で落語を楽しんでいます。今回は三遊亭円楽プロデュース「大手町落語2020」の中の1公演「大江戸東京落語会」を紹介してくれました。

オンラインで「大江戸東京落語会」を堪能しました

本来ならこの時期は、東京オリンピックが開催されているはずだったので、それに合わせて円楽さんが大手町で落語会を開こうと、3日間で8公演、総勢26名が出演するという大掛かりな企画を立てました。私も早くからチケットを買い、楽しみにしておりましたが、払い戻しのお知らせが届きました。一旦払い戻してから、人数を半分に制限し、その代わりにオンライン配信をすることになりました。オリンピックは延期になりましたが、「大手町落語2020」は開催というその大英断に、落語ファンとして心から拍手を送りました。

円楽さんご自身が見たい落語会を実現させたというだけあって、8公演とも素晴らしく、どれを選ぼうかと改めて迷いましたが、「落語自由自在」でまだご紹介していなかった柳亭市馬師匠と、瀧川鯉昇師匠の出演される会を見ようと決めました。題して「大江戸東京落語会」です。

「看板のピン」 三遊亭兼好

三遊亭兼好

前座は高座に上がらず、いきなり兼好師匠とは、それだけでも贅沢な会だということがわかりました。「看板のピン」は古典落語の演目の一つで、「看板の一」と表記することもあります。主人公が他人の言動を真似して失敗をするという噺で、兼好師匠いつもながら時事ネタを巧みに織り交ぜ、軽快なテンポで噺を進め、見事に着地させました。

「天狗裁き」 春風亭一之輔

春風亭一之輔

最後まで「夢は見ていない」と言うはずの八五郎が、天狗に脅されて「かわいい猫に出会い、家に連れ帰ってミーちゃんと名前をつけた」と嘘をつく演出にびっくり、それを天狗が嘘と見抜くとは二度驚きました。一之輔師匠ならではの斬新な表現に、会場から盛んに拍手と笑いが起きていました。

「ちりとてちん」 三遊亭円楽

三遊亭円楽

今から35年くらい前に、五代目圓楽師匠が建てた東陽町の「寄席若竹」で、当時楽太郎だった六代目円楽さんが、よくこの演目をやっていました。私はそれをよく聞きに行っていました、といった方がいいかもしれません。ただしこの噺は「酢豆腐」といわれていました。「酢豆腐は一口に限る」というサゲが、今も耳に残っています。2007年に放映された朝ドラ「ちりとてちん」の影響か、最近は関西だけでなく東京でも「ちりとてちん」になったようです。懐かしく聞かせていただきました。

「厩火事」 柳亭市馬

柳亭市馬

ご存じ、落語協会会長柳亭市馬師匠です。もっと早くにご紹介したかったのですが、日程が合わず連載34回目にしてようやく登場です。

1980年3月 五代目小さんに入門
1984年5月 二ツ目昇進
1991年 にっかん飛切落語会若手落語家奨励賞
1993年 真打昇進 四代目柳亭市馬襲名
1995年 国立演芸場花形演芸大賞
2014年 落語協会会長に就任

登場した途端、「またあの噺かって思われたでしょう?」と言うので、市馬さんはこちらの気持ちをお見通しだと思いました。「厩火事(うまやかじ)」は四季を問わず、よく高座に掛けられる噺です。私も正直、またかと思ってしまいました。

すると、市馬さんは「それはお客様がお元気だからですよ。健康な証拠です」と。なるほど、健康だからこそ、また同じ噺が聞けるというわけです。師匠小さん夫妻のすさまじいけんかの話から入ります。入門した時は、すでに師匠のおかみさんは亡くなっていましたので、兄弟子から聞いたのですが、と断りつつも、まるでその場にいたかのように臨場感たっぷりに話すので、「やはりプロだなあ」思いました。そして、夫婦げんかから噺の幕が開く「厩火事」に入ります。声がよくて、とても心地良かったです。

「船徳」 瀧川鯉昇

瀧川鯉昇

鯉昇師匠も是非ご紹介したい噺家さんの一人でしたが、かなわないまま今日に至ってしまいました。円楽さんも、鯉昇さんが大好きなので、芸協からお呼びしました」と言っていました。

1975年 小柳枝に入門
1977年 春風亭柳昇門下へ
1980年 二ツ目昇進 春風亭愛橋
1983年 NHK新人落語コンクール最優秀賞
1985年 国立演芸場金賞銀賞のつどい大賞
1990年5月 真打 春風亭鯉昇
1986・87年 にっかん飛切落語会奨励賞
1996年 文化庁芸術祭 優秀賞
2005年1月 瀧川鯉昇と改名

質屋の若旦那徳兵衛は、道楽が過ぎて勘当され、船宿に居候をします。揚げ句にいなせな姿の船頭に憧れて、「船頭になりたい」と言い出しますが、簡単になれるものではありません。仕方がないので掃除などをさせて、形ばかりの船頭ということにしていますと、お客がやってきます。女将が止めるのも聞かず、徳兵衛は船を出します。同じところを3回、回ったり、石垣に寄ったりで、思うようにはいきません。鯉昇さん船をこぐ激しい動きに「この噺は疲れる、年を取ってやるもんじゃない」と呟いたりして、大いに笑いを呼びました。若旦那は質屋のせがれといっていましたが、サゲが「質屋だけに船まで流した」で伏線だったとわかりました。鯉昇師匠の独特の脱力感がたまりません。一度聞いたら癖になり、何度でも聞きたくなりますよ。

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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