貯まる人になるための「大人のマネー学」#17
注意すべき「壁」はどれ?知っておきたい「パート収入の壁」2025
注意すべき「壁」はどれ?知っておきたい「パート収入の壁」2025
更新日:2025年10月16日
公開日:2025年09月12日
「パート収入の壁」は複雑怪奇!
パートで働く人は「年収の壁」を気にします。一定の年収を超えると、夫の扶養から外れたり、自分自身の収入に税金がかかったりするからです。
実は「パート収入の壁」は複数あり、仕組みがとても複雑。しかも、数年ごとに制度改正があり、パートで働く人にとっては知識のアップデートが必要なのです。そこで今回は「パート収入の壁」について、最新情報をお伝えします。
複数ある「パート収入の壁」にびっくり!
まずは「パート収入の壁」をまとめた図をご覧ください。「壁」が複数あることに驚きます。
パート収入の壁は複数存在する!
106万の壁「社会保険の壁」
110万の壁「税金の壁」(住民税)
130万の壁「社会保険の壁」
※103万~130万あたりに「家族手当の壁」(配偶者手取りの壁)あり
150万の壁「配偶者の手取りの壁」
160万の壁「税金の壁」(所得税)
201万の壁「配偶者の手取りの壁」
年収の低い順から見てみると、「壁」は大きく3つに分類できます。
1つ目:「自分にかかる税金の壁」
パートの年収が110万円を超えると住民税、160万円を超えると所得税がかかりはじめます。
2024年までは、住民税は100万円、所得税は103万円の壁でしたが、「年収の壁問題」で税制改正があり、今年の年収から非課税枠が広がりました。
2つ目:「自分にかかる社会保険の壁」
パート先の従業員数によって、ふたつの「社会保険の壁」があります。
【従業員数51人以上の会社で働く場合】
勤務先の従業員数が51人以上の会社で働く場合、週20時間以上働き、年収が106万円を超えると、社会保険に加入が義務付けられ、厚生年金、健康保険の保険料負担が発生します。
【従業員数50人以下の会社で働く場合】
勤務先の従業員数が50人以下の会社で働く場合は、年収が130万円を超えると、配偶者の社会保険の扶養から抜けなくてはならず、自分自身で社会保険に加入することになります。
勤務先の社会保険に加入する基準を満たさないと、社会保険に入れず、国民年金や国民健康保険の保険料を負担することになります。
3つ目:「配偶者の手取りの壁」
妻が専業主婦や一定の収入以下のパートタイマーなら、夫は「配偶者控除」を受けることができます。
パート収入が150万円を超えると、夫の「配偶者控除」は減り始め、201万円で控除額はゼロになります。
夫が受けられる控除が減ると、夫の税金が増え、手取り額は減少します。
夫の勤務先によっては、妻の収入が一定以下だと、家族手当を受け取れるケースもあります。年収要件は「103万円以下」、「130万円以下」など、企業によりさまざまです。
家族手当が受け取れなくなると、夫の手取り額は減りますが、家族手当そのものを廃止する企業は増加傾向にあることは知っておきたいことのひとつです。
注意すべきは「社会保険の壁」
さて、複数ある「パート収入の壁」ですが、気にしなくてもいい壁と、注意すべき壁があります。
税金にかかわる壁は、気にせずともOK。なぜなら、税金は壁を超えた部分にだけかかるからです。
例えば年収が160万円を超すと、所得税がかかり始めますが、161万円にかかる所得税は500円です(161万円-160万円、1万円に5%の税金がかかる)。
夫が受けられる配偶者控除もいきなり控除額がゼロになるわけではなく、段階的に減っていく仕組みですから、気にしなくてもいいです。
注意したいのは、社会保険の壁です。勤務先の規模により、「106万円の壁」もしくは「130万円の壁」がありますが、壁を超えたとたんに収入全体に社会保険料がかかるのです。
例えば、年収106万円で勤務先の社会保険に加入する場合、年収105万円だと社会保険料はゼロですが、106万円になると、収入全体に15%の社会保険料、年約15万7000円がかかります。年収が1万円増えるにも関わらず、社会保険料の分、手取りが減ることになるのです。
もちろん、自分自身で社会保険に入るメリットもあります。厚生年金に加入することで、将来受け取る年金はわずかですが増えますし、病気で仕事を欠勤したときに健康保険から傷病手当金という給付を受けることができます。
メリットがあるとはいっても、収入が1万円増えたとたんに手取りが減る逆転現象は、誰だって嫌なものです。言葉は悪いのですが「働き損」という印象はぬぐえません。
目指すなら「従業員51人以上の会社」で「年収125万円」!
「106万円の壁」を超えて手取りが減ったとしても、もう少し働くと壁の直前の105万円の時の手取り額を超えます。その年収は125万円です。この金額は重要ですから覚えておきましょう。
WEBやテレビで「パートの年収が106万円を超えると、約15万円も手取りが減る!」といった記事やコメントを見かけますが、目指すべきは106万円ではなく、手取り額が回復する125万円超えなのです。
ただし、勤務先の従業員数が50人以下ですと、パート収入の壁は130万円です。130万円を超えて夫の社会保険の扶養から外れると、多くの場合、自分で国民年金と国民健康保険に加入することになります。勤務先の社会保険に加入するよりも、保険料負担が多くなるため、手取り額が回復するのは170万円前後。時給で年収170万円分働くには、今よりも1.5倍以上勤務時間を増やさないと到達しません。
となると、現実的なのは「従業員51人以上の会社」で、「年収125万円以上」を目指し、勤務先の社会保険(厚生年金と健康保険)に加入することです。
国はパートで働く人も社会保険に加入し、社会保険の被扶養者である第3号被保険者を減らしていく政策をとっています。公的年金制度を持続可能なものにするための策なのでしょう。
パートタイマーを取り巻く法律の変化に注意
「従業員51人以上」の要件は、今後数年かけて「36人以上」「21人以上」「11人以上」……となり、最終的には企業規模要件をなくす方向性です。つまり、どこで働いたとしても、社会保険に加入するという意味です。
年収要件も撤廃する改正案も2025年6月の国会で決まりました。年収106万円とは、月収8万8000円です。このところの人手不足で地域別の最低賃金が上昇しているので、週20時間以上働くと、自然と8万8000円を超す……というのが国の見立てです。ですから、2026年には年収要件もなくなる可能性は大。
パートタイマーを取り巻く法律は大きく変化していきます。もう少し働きたい、自分のために貯蓄したいと考えるなら、最新情報を踏まえ、「社会保険に入れてくれる会社で週20時間以上、年収125万円(月収約10万5000円)働く」準備を始めるのがいいでしょう。
文=深田晶恵
※HALMEK upの人気記事を再編集したものです。
※記事中の情報・金額は2025年9月時点のものです。




