村木厚子さん「孤独・孤立」

2024年02月19日

よりぬき!ハルメク人気連載「毎日はじめまして」4

村木厚子さん「孤独・孤立」

コロナ禍でより必要性を増した社会的困窮者の救済。郵便不正事件で冤罪に巻き込まれた元・厚生労働省事務次官の村木厚子さん。2021年から、孤独・孤立対策担当室で活動しています。日本人の「誤った美学」ゆえ、自殺率が高く孤立してしまう人とは?

孤独や孤立が困窮につながる

※記事は2021年10月執筆。

2021年2月に孤独・孤立対策担当大臣が任命され、担当室も設置されました。イギリスに次いで、世界で2人目の担当大臣の誕生です。

コロナ禍で自殺率が上がり、とりわけ女性や若者の自殺が急増したことで、危機感を抱いたのが大きな背景です。

この担当室で、私は6月から大西連さんと共に政策参与を務めています。大西さんは貧困対策に取り組むNPOの理事長でまだ30代です。二人で、官民が連携してこの問題に取り組むための橋渡し役をしています。

孤独・孤立が重要な問題だということは、福祉の現場ではずいぶん前から言われていました。

10年ほど前、役所で生活困窮の問題を担当した際、現場の方々からこう教えられました。困窮している人には二つの共通点がある。一つは複数の困難が重なっていること、もう一つは社会とのつながりが切れていることだと。

しかし、当時は、孤独や孤立が困窮につながるということは政府内でもなかなか理解してもらえませんでした。それが、今や担当大臣が置かれるほどになったのですから、社会の意識もずいぶんと変わってきました。

頼ること、相談することが難しい、中年男性

ところでみなさんは、孤独・孤立といったときにどんな人を思い浮かべますか。

一人暮らしの高齢者、ワンオペ育児のお母さん、引きこもりの若者、厳しい家庭環境にある子ども、刑務所出所者、非行少年、外国人やLGBTQの方々などが孤立しやすいかもしれません。

そこで担当室でも「子育て」「生活困窮」「子ども・若者」「女性」などさまざまなテーマを設けてヒアリングを続けています。

一方、こういうとき、対象として頭に浮かびにくいのが中高年男性です。

コロナ禍で自殺が増えているのは女性・若者ですが、自殺率が最も高いのは、実はコロナの前も後も中高年男性なのです。「立派な社会人」に見えて孤独に苦しんでいる中高年男性、みなさんの周りにはいませんか。どうか気を付けてあげてください。

中高年男性はもちろんのこと、ヒアリングの中で共通して指摘されたのは、相談をすることの難しさです。人に頼ってはいけない、人に迷惑をかけてはいけないと教えられて育った日本人には、相談をすることをためらう人、人に頼ることは恥ずかしいことだと思う人が多いのです。

本当の自立は、多くのものに少しずつ依存すること

私は、この考え方を少し変えられないかなあと思っています。

東京大学の熊谷晋一郎先生が「自立とは、人に依存しないことではない。たくさんのものに少しずつ依存できるようになることだ」と教えてくれました。困ったらSOSを出せる、一方で自分もできることで人を助ける、そんなお互い様の社会が生きやすいと思います。

私が関わっている、生きづらさを抱えた少女たちを支援する「若草プロジェクト」で、LINE相談を担当するボランティアの大学生に、どんな人だったら相談しやすいか聞いてみました。

「自分の考えを押し付けない。悩みを悩みとして聞いてくれる人」という答えが返ってきました。

あなたの身近にも孤独を感じている人がいるかもしれません。もし、そんな人に出会ったら、まずは聞いてあげてください。

村木厚子(むらき・あつこ)さんのプロフィール

村木厚子

むらき・あつこ 1955年、高知県生まれ。元厚生労働事務次官。2009年、厚生労働事務次官在任中、郵便不正事件で冤罪を被り164日の勾留を強いられる経験をした。

2015年10月退官後は、企業の社外取締役や大学客員教授等に就任。またSOSを心に抱えた少女や若い女性の支援を目的とする「若草プロジェクト」の代表呼びかけ人を、故・瀬戸内寂聴さんと共に務め、現在に至る。

2018年から雑誌「ハルメク」で、社会問題や生き方など日々の気付きを綴った連載「毎日はじめまして」をスタート。現在も好評連載中。

※この記事は雑誌「ハルメク」2021年12月号を再編集し、掲載しています。

 

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その4「孤立・孤独」
その5「家出の勧め」
その6「初めての海外一人旅」

この記事は雑誌「ハルメク」2021年12月号を再編集し、掲載しています

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その1「瀬戸内寂聴先生のこと」
その2「マスコミって…」
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HALMEK up編集部
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