家出の勧め

公開日:2023年09月11日

よりぬき!ハルメク人気連載「毎日はじめまして」5

村木厚子さん「家出の勧め」

2009年、郵便不正事件で冤罪に巻き込まれた元・厚生労働省事務次官の村木厚子さん。164日間におよぶ勾留中に心配されたことの一つは、主婦不在の家のことだったそう。さて、村木家はどうだったのでしょうか。

村木厚子(むらき・あつこ)さんのプロフィール

村木厚子さん

1955年、高知県生まれ。元厚生労働事務次官。2009年、厚生労働事務次官在任中、郵便不正事件で冤罪を被り164日の勾留を強いられる経験をした。

2015年10月退官後は、企業の社外取締役や大学客員教授等に就任。またSOSを心に抱えた少女や若い女性の支援を目的とする「若草プロジェクト」の代表呼びかけ人を、故・瀬戸内寂聴さんと共に務め、現在に至る。

2018年から雑誌「ハルメク」で、社会問題や生き方など日々の気付きを綴った連載「毎日はじめまして」をスタート。現在も好評連載中。

※記事は2017年5月号初出。

結婚35年、満たされない心があった?

結婚35年、満たされない心があった?

拘置所にいるとき、ちょっと年上の女性の友人が、アン・タイラーの『歳月のはしご』という本を差し入れてくれました。40歳の女性主人公が、何となく心が満たされないという思いを抱えて、ある日、夫や子どもを残し、成り行きで家出をする。部屋を借り、仕事を見つけ、見知らぬ町で新しい生活が始まる……。そんな物語でした。

当時の私の日記には、「空の巣症候群。夫と子どもを捨て、一人で別の街で暮らし始める。とても共感してしまうところがある。」という感想が記してあります。自分でも気付かなかった「満たされない心」を友人は見抜いてこの本を差し入れてくれたのだろうかとドキッとしました。

結婚して35年、家出をしたことはありませんが、拘置所に164日いたので、結果的に「主婦の家出」が半年ほど続いたことになります。

妻がいなくなったとき、夫は生活できるか

妻がいなくなったとき、夫は生活できるか

こんなこともあったので、最近、講演などで特に中高年の主婦の方に家出をお勧めしています。妻がいなくなったときの予行演習を夫にしてもらうためです。妻が勾留されることはさすがにまれでしょうが、妻が先に亡くなる、入院する、あるいは親の介護で実家に帰ってしまうといったことは大いにあり得るでしょう。

実は、私も夫も、母親が先に亡くなり、父親が残って独り暮らしをしています。何となく母が父をみとってくれて、その後私が母をみとるのだろうと思い込んでいた私は、「想定外」の事態に焦りました。幸い、父は若い頃に家事・育児を一人で切り盛りした経験があるので、宅配弁当も活用しつつ元気に一人で暮らしています。

妻が亡くなると残された夫は早く亡くなる、逆に夫が先に亡くなると妻は元気で長生きするとよく言われます。だから講演会では、「もし夫を愛しているなら家出をしましょう。まずは1泊、それができるようになったら次は1週間。1週間一人で暮らせれば、後はそれの繰り返しです」と言っています。

妻は心の洗濯ができて、本格的な家出が防げるかもしれません。そして夫は妻のありがたみを再認識でき、かつ一人暮らしの予行演習ができます。いいアイデアではないでしょうか。

安心して、次の家出に

安心して、次の家出に

我が家の夫は164日の「家出」の前から、家事万端、何でもできました。勾留されたとき、弁護士さんが心配して「どうしますか。家政婦さんでも雇いますか」と夫と娘に聞いてくれましたが、夫は初めは何を心配されているのかわからなかったようです。

やっと、一家の主婦がいなくなったことを心配してくれているのだと気が付き、「大丈夫です。今までと何も変わりませんから」と答えました。拘置所に面会に来た弁護士さんが大笑いしながら私にそう報告してくれました。ひどい、ちょっとは主婦しているのに。

しかし、そんな夫だから、勾留中、家族の日々の暮らしを心配せずに済み、また、退職後、悠々と1か月近いイギリス一人旅という家出を楽しめたのです。次は、いつ、どこへ、どんな家出をしようかと心を膨らませています。

 

■もっと知りたい■
よりぬき!ハルメク人気連載
村木厚子さんの「毎日はじめまして」

その1「瀬戸内寂聴先生のこと」
その2「マスコミって…」
その3「高齢者は何歳から?」
その4「孤立・孤独」
その5「家出の勧め」
その6「初めての海外一人旅」

この記事は雑誌「ハルメク」2017年5月号を再編集し、掲載しています。

■もっと知りたい■

雑誌「ハルメク」
雑誌「ハルメク」

女性誌売り上げNo.1の生活実用情報誌。前向きに明るく生きるために、本当に価値ある情報をお届けします。健康、料理、おしゃれ、お金、著名人のインタビューなど幅広い情報が満載。人気連載の「きくち体操」「きものリフォーム」も。年間定期購読誌で、自宅に直接配送します。雑誌ハルメクサイトはこちら

みんなの コメント

【PR】ブラトップでシルエット美人に!

ブラトップでシルエット美人に!

下着メーカーが本気でつくったブラトップ ♥ブラに比べ、しめつけ感の少ないブラトップはラクちんで大人気です!

2025.03.04
【PR】始めるなら相談できる「対面証券」がおすすめ

お金のこと、なんでも無料相談

資産運用、相続、ローンまで!お金の「よくわからない」をプロに気軽に相談できる♪

2024.12.17
【PR】鼻への重量感・違和感のストレスから解放!

「ふわっ」と軽いメガネ♥

メガネがずり落ちる・鼻の頭が重いなど、メガネのプチストレスにサヨナラ!あっと驚く程つけ心地抜群のメガネをぜひお試しください

2024.12.17
【PR】ぽっこりおなかもラクにきれいなパンツとは?

ラクなのにきれいシルエット♥

ワコールが開発したぽっこりお腹もスッキリ隠れるストレッチ抜群の「パンツ」!ただいま、返品送料が無料になる「ご試着キャンペーン」実施中♪

2025.03.13
【PR】戸籍に氏名のフリガナが記載されます

全員忘れずに通知の確認を!

5月26日に「戸籍法」改正し、国民には「氏名のフリガナ通知」が届きます。通知が届いたら必ずやるべきこととは?

2025.03.10
【PR】部分入れ歯のウソホント!?正しいケアって?

部分入れ歯のウソ・ホント!?

部分入れ歯が不安定・外れそうで怖い…そんなお悩みは「ケアの仕方」に原因が!?間違えている人が意外に多い、部分入れ歯の「正しい使い方」を専門家が紹介します!

2025.03.12
【PR】飽き症でも、ゼロから英語が話せるようになったワケ

ゼロから英語が話せる!

飽き症さんでもOK!たった60日で英語が苦手な人でも英会話ができるようになると話題の「インド式英会話」をご存知ですか?無料体験セミナー実施中です!

2025.02.05
人生100年時代!50代〜のライフプランと資産形成

老後の支出いくらかかる?

もし100歳まで生きるとすると、65歳からでも約1億円も必要ってホント!?老後の支出と収入、ちゃんと把握してる?

2025.01.08
【PR】美術館でお花見!?春爛漫をアートと食で感じよう

美術館で桜とアートを愛でる

東京国立近代美術館では、毎年人気イベント「美術館の春まつり」を開催!近代日本画の巨匠・川合玉堂 作・重要文化財《行く春》の公開など、期間限定の特別イベントです♪

2025.03.10
「ひょっとして認知症かも」と心配になったらどうすればいい?(前編)

認知症の相談窓口知ってる?

認知症は\"早期の治療\"が何よりも大事!「初診はどこに相談すればいい?」「もしかして認知症?」と心配な方は急ぎ認知症の相談窓口へ!

2025.03.13
【PR】頼れる家族がいない……入院・入居どうする?

おひとり様の備えはOK?

この先「おひとり様」になったら意外な落とし穴がいっぱい…。そんな不安に備える、おひとり様専用お助けサービスが誕生!

2024.07.22
英訳が難しい日本語10選

英語でお疲れさまはなんて言う?

「お疲れ様です」「お世話になります」など英訳が難しい日本語10選をご紹介。曖昧な日本語表現をサラッと言い換えてみよう

2025.03.03
【限定コラボ】職人技が光る!ハルメク×マエノリのセーター誕生秘話