誰にでも起こりうる一人暮らし女性の救急体験記 #1

51歳おひとりさま初めての救急搬送|突然の激痛から119番まで

51歳おひとりさま初めての救急搬送|突然の激痛から119番まで

更新日:2025年08月15日

公開日:2025年08月09日

51歳おひとりさま初めての救急搬送|突然の激痛から119番まで

一人暮らしで怖いのが、病気ではないでしょうか。それも突然襲われたら…。これは51歳女性の救急搬送体験です。実話から「救急車を呼ぶべき症状・実際の費用・入院準備」のリアルをわかりやすく解説。孤独な夜に何をすべきかも紹介します(全4回)

一人暮らし女性、自宅で突然の激しい頭痛と嘔吐に襲われて

一人暮らし女性、自宅で突然の激しい頭痛と嘔吐に襲われて
USSIE / PIXTA

51歳、独身一人暮らし。東京でフルタイム勤務をしている、ごく普通の会社員の私。特に大病したことも、基礎疾患もなく、年相応に元気なつもりでした。

ある冬の朝、その日は自宅で仕事。少し寝坊し、午前中のオンライン会議にギリギリ間に合うよう慌ただしく業務を始めました。

会議も終わり、ひと休憩しようとした瞬間、突然“ズキーン”と激しい痛みが後頭部を襲ったのです。ハンマーで殴られたような、これまで体験したことのない痛み。

私は普段、痛みに強い方だと自負していましたが、今回は経験したことのない激痛でした。太い血管が激しく脈打つような感覚と突き刺さるような痛み。さらに、突然吐き気に襲われ、その場で嘔吐。

「これは普通の頭痛じゃないかもしれない……」と危機感を覚え、慌ててスマホで「突然の頭痛 嘔吐」と検索すると、「くも膜下出血」という言葉が目に飛び込んできました。

――まさか。

救急車を呼ぶ決断・ひとり暮らしだからこその緊急時の現実

救急車を呼ぶ決断・ひとり暮らしだからこその緊急時の現実
Peak River / PIXTA

十数年前、私の兄は30代で脳内出血を経験し、一時は危篤、そして半身麻痺に。家族全員で闘病を支えました。

「また家族に迷惑をかけるのでは」

「死ぬのは仕方ない。でも後遺症は……」

そんな複雑な気持ちと、とにかくこの激痛から逃れたい気持ちで、勇気を出して119番通報しました。

さらに背中を押したのは、最近ニュースでよく見る“孤独死”。

有名人の孤独死ニュース、前職の上司が家族の不在時に自宅で急死した話も身近にあって「このまま誰にも気付かれなかったら…」という不安がありました。

残された家族に迷惑をかけたくない、その思いも大きかったです。

過去にアナフィラキシーショックで救急車を呼んだ際、「もっと重篤化してから電話ください」と言われた経験があったので、呼んでも来てもらえないのではと不安でしたが、今回は痛みと嘔吐で言葉も途切れるほど。

なんとか状況を伝え、「すぐ向かいます」と言ってもらえたことに心からほっとしました。

寒い冬、部屋着で玄関前に倒れても声をかける人はなく

寒い冬、部屋着で玄関前に倒れても声をかける人はなく
Caito / PIXTA

電話を切ると、私はオートロックマンションの5階に住んでいたため「部屋で気を失ってしまったら、救急隊員がカギを開けて入ってこれなくなる」と思い、着のみ着のまま、スマホだけ手に持ってなんとか1階まで降りました。

集合玄関にうずくまり、冬の寒さと激痛に耐えつつ、だんだん意識が朦朧としていくなか、間もなく聞こえてきた救急車のサイレンだけが希望でした。

「障害が残りませんように」「この痛みから早く解放されますように」と祈り続けていました。

救急搬送の現実——5件以上断られ「病院たらい回し」に絶望

救急搬送の現実——5件以上断られ「病院たらい回し」に絶望
’90 Bantam / PIXTA

救急隊員の方々が駆け寄り、「佐藤さんですか?」と声をかけてくれましたが、私はうめき声を上げるだけで精いっぱい。

嘔吐と頭痛が止まらず、手足にしびれを感じ始めたことも伝えると、救急隊員は「手術の可能性もある」と都内の病院へ受け入れ要請を始めました。

ところが……5件断られたところまでは覚えています。

「大丈夫!」「必ず病院に連れていきますからね」と救急隊員の方が声をかけてくれますが、断られるたびに絶望の底に突き落とされるような気持ちになり、涙が出てきます。

それに、すぐに鎮痛剤を投与してもらえるかと思っていましたが、救急車ではそういった治療はできないようで、ただただ耐えるしかありません。

40分以上、受け入れ先が見つからず、救急車は停止したまま……。

「このまま病院に搬送されなかったら?」——本当に不安でした。

緊急時の家族連絡、スマホの落とし穴

緊急時の家族連絡、スマホの落とし穴
hellohello / PIXTA

「手術の可能性もある」……緊急手術が必要な場合などは、同意のため家族のサインが必要なのだそうです。

すぐに救急隊員に「ご家族に連絡できますか?電話番号は?」と聞かれました。
しかし普段、家族の連絡先はすべてスマホ任せで暗記していません。

さらにスマホの充電がほとんどない。その場で「実家の固定電話しかわかりません」としか答えられず、しかも家族は遠い田舎にいる。

困った救急隊員に「都内に親族はいませんか?」いるはいるけど、連絡先を思い出せない……。

緊急時には——

  • 連絡先を紙に控えておく
  • スマホはいつも充電
  • スマホの「緊急連絡先」機能も活用 

この大切さを強く感じました。

意識が途切れ途切れの中、救急隊員が実家の母に「娘さんが…」と説明する声が遠くで聞こえます。

ようやく受け入れ病院に搬送、朦朧とする意識の中で

ようやく受け入れ病院に搬送、朦朧とする意識の中で
Fast&Slow / PIXTA

 何分経ったのか、やっと、遠く離れた大学病院に搬送が決まり、救急隊員に励まされながら到着。すぐさまER(救命治療室)に入ります。

ERではまな板の上の鯉状態。たくさんの医師に囲まれ、CT・髄液検査・血液検査・カテーテル……と次々に検査・治療が続きました。畳みかけるように質問や説明をされるのですが、ただただ痛みをこらえるので精いっぱい。

ここで特に驚いたのが、
「肝臓や腎臓に何か持病はありませんか?」「これまでに薬や食べ物でアレルギーなどは?」――と、何度も何度も念入りに確認されたことです。

おそらく投薬や治療でショックなどの副作用が出ないか慎重にチェックしていたのでしょうが、自分の体についてきちんと把握していないと、これほどはっきり答えられないのだと実感。

もし誤った申告をしてしまったら……と不安にもなりました。

痛み止めが欲しかったものの、原因判明までは投与できないとのこと。「手術の必要はなさそう」と説明を受けた後、やっと鎮痛剤を投与してもらえました。

結果はまさかの「偏頭痛」——その診断に感じたギャップ

結果はまさかの「偏頭痛」——その診断に感じたギャップ
ペイレスイメージズ1(モデル) / PIXTA

感染症の可能性も、血管に大きな損傷も見られず、なのに異常なほど痛みを訴え、のたうちまわりながら吐き続ける私。医師たちはさまざまな検査を行い慎重に診断を進めてくださいました。

さらにMRI検査も受けましたが、重篤な異常はなく外科的治療は不要とのこと。

いったん、ICU(集中治療室)に移され、その夜は入院することに。時計を見ると、18時30分を過ぎていました。

しばらく、痛み止めの点滴を受けながら休んでいると、主治医が説明に来て……

診断名は「偏頭痛」でした。

こんなに激しい症状でも偏頭痛――

「命にかかわる異常ではなかった」という安堵と同時に、「偏頭痛でもこんな激痛や嘔吐が起きるもの……?」という戸惑いが残りました。

【情報】緊急時!一人暮らしで命を守るためのチェックリスト

【情報】緊急時!一人暮らしで命を守るためのチェックリスト
yuz / PIXTA

緊急時に「本当にこれが必要」と実感したポイントは、以下の4つです。

1.急な激痛・嘔吐など症状に危険を感じたら、まずは医療機関に相談!

症状によっては、早めの受診が重要となる場合があります。判断に迷う場合は、救急相談窓口(#7119など)に電話相談することもできます。

2.家族・緊急連絡先は「紙」と「スマホ」両方で管理

緊急連絡カードやメモはカバンや冷蔵庫など、すぐ見つかる場所に。

3.持病・アレルギー・服用中の薬情報はお薬手帳&スマホにも記録

お薬手帳や救急情報シートをすぐ持ち出せるようにしておく。

4.安全な範囲で、可能な限り、連絡が取れる状態を保つ

家のカギを開けておく、倒れて動けなくなる前に移動しておくなど、状況に応じて救助までの時間を短縮する工夫をする。

突然の「命の危機」は、年齢や健康状態に関係なく誰にでも起こりえます。
今できることから、少しずつ備えておくことをおすすめします。

※本記事はあくまで個人の体験談であり、すべての人に当てはまるものではありません。症状や状況に応じて、適切な医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。


次回予告>>
無事、命に別状はなかったものの、この後すぐに“入院生活”が始まります。一人暮らし、家族が遠方の状況で「会社への連絡」「病院への持ち物」「実際にかかった入院費用」など、これまで想像もしなかった現実的な壁に直面しました。

 

誰にでも起こりうる一人暮らし女性の救急体験記(全4話)

#1 51歳おひとりさま 119番で初めての救急搬送

#2 おひとりさまの“入院生活”に本当に必要な備え

#3 “群発頭痛”の絶望と不安、医療費の不安

#4 揺れる診断と薬、完治しない病の向き合い方

HALMEK up編集部
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