50代婚活奮闘記25・A子の場合 (最終話)

【25】結婚は絶対に諦めない!6か月の婚活で得た成果と自分への期待   

【25】結婚は絶対に諦めない!6か月の婚活で得た成果と自分への期待   

公開日:2025年07月18日

恋愛・婚活ジャーナリストの清葉アキコが出会った婚活女子の第25話。婚活を始めて半年が経過した50歳A子がお見合いをした男性は15人。仮交際までは進むものの、本交際まで進めたい「この人なら!」と思う人と出会えずにいる。あと半年で51歳の誕生日になろうとしていた……。

自分を満たしてくれるものは何なのか?

就職してからこれまで仕事ざんまいだった。そのことで結婚のタイミングを逃したと自覚しているA子は、婚活を機に働き方を変えた。働き方というより生き方を変えたと言ってもいいだろう。

お見合いや仮交際デートの時間を確保するために、休日は仕事から離れることにした。以前のA子は時間の多くを仕事に費やし、やりたいことがあれば仕事の時間をやりくりして何とか時間を作っていた。

「婚活を始めた頃はね、お見合いのために、時間を無理やり作っていたの。だからお見合いしながらも『こんな男性と会うくらいなら、仕事をすればよかった』『結果的に結婚に結び付かない相手と時間を費やすなら、自分のやりたいことに時間を使いたかった』なんて思っていたのよ(笑)」とA子。「私、気付かないうちに、仕事と人間を比べていたのね。どっちが自分を満たしてくれるのか?って」

「仕事に時間を費やしていると、すぐに満たされた気持ちになれる。いつか結果につながるはずって期待が抱ける。でも、人ってそうじゃない。一生懸命接してもうまくいかない。将来的にうまくいくかどうかわからない男性と過ごすくらいなら、確実に自分の心を満たしてくれる仕事に時間を費やすほうが価値があるって信じていたのよ」

そんなA子だったが、婚活を進めていくうちに気が付いたのだ。自分が目先の“満たされる感覚”を得るために、男性たちを天秤にかけてきたことを!

男性にしてみたら、勝手に期待を押し付けられて、時間と天秤にかけられていたことになる。

「いつも忙しすぎて時間に   余裕がないから、時間に対する価値を求めすぎちゃっていたのかもしれない。だから一緒に過ごす相手にもその価値分は自分を満たしてもらいたいって期待をしてしまっていたのよね。

考え方を変えてみたわ。時間に余裕があれば気持ちにも余裕ができる。“婚活のための時間”とひねり出すのをやめて、“将来の自分が幸せになるための時間”として確保することにしたの」

自分を幸せにするのは自分しかいない!

A子は50歳の今まで一人で生きていく覚悟を持ったことはない。ずっといつか結婚するつもりでいた。だからといって、結婚という形で相手に何かを頼ろうと思ったことはない。結婚して誰かと一緒に住むことと自立した大人の女性であることは別だから……。

長いこと、自分自身が大人の女性として成長するために時間を使い、がんばってきたA子だったが、自分でも気が付かないところで、彼氏や友人に対してまで、“自分の時間の価値を高めてくれること”を期待していたことに気が付いたのだ。

「私、婚活で気付いたの。時間に対する価値を決めるのは相手ではなく自分だって。気に入らない相手との時間を『つまらなくて時間の無駄だった』と思うのと、『こういう人もいるのね。あの手の話は私には合わない、と気付かせてくれた時間だった』と思うのとでは同じ1時間でも価値が全然違うし、それを価値づけているのは自分の考え方や受け止め方なのよね」

 “結婚相手が自分を幸せにしてくれる!”なんて思ってはいないつもりだったが、心の奥底では“結婚するなら自分に幸せという充足感を与えてくれる相手じゃなくちゃ”と、   勝手に期待を膨らませていた自分がA子の中にいたのだ。

「自分の時間に価値をつけて、自分の時間を幸せで満たすのは自分なのよね」とA子は微笑みながら言った。先日、婚活で出会った男性たちの話を面白おかしく笑いを交えて話していたA子とは違う表情だ。

「この半年、婚活でいろんな男性と会ってきたじゃない?『なんでこんな人にしか会えないの!?』と落ち込んだときもあったけれど、私が   時間的にも余裕を持つことができれば『あぁ、こういう人もいるんだな』とさらっと受け流せたかもしれないわね。そして、相手への期待がなければもっといろんな人が“対象”として受け入れられていたかもしれない。“いい相手がいない”状態にしていたのは私自身の余裕のなさだったのかもね(笑)」

今は“幸せ”という充足感を与えてくれる誰かを探すのではなく、この人といると自分がどうしたら幸せでいられるか?って考えてみることにしている、と言うA子。そういえばお見合い後の報告も、最近は相手への愚痴よりも面白かったという話が増えていた。

大人の婚活が、人生の楽しみを生んだ

時間的な余裕は心の余裕を生むって言うけれど、A子の変化を目の当たりにして、本当にそう実感した。そして、改めて「婚活は自分自身の人生を見直すいい機会」なのだと確信した。自分自身の心と向き合う時間を作らずがむしゃらにがんばって前に進んできた人ほど、婚活は人生の転機となるように思う。

先日、久々に独身男女6人の食事会にA子を誘ったが、彼女の顔が以前より柔和に見えたのは気のせいではないだろう。その証拠に、男性たちが「A子ちゃん、いいね!」と口々に言っている。

「正直、婚活って短い時間で人を見極めなくてはいけないし、相手から選ばれるためにも自分をいつも以上によく見せなくちゃいけない、っていう緊張感   がいつもあったの。仕事の契約を取るときのような感覚――。

でも、自分が一緒にいて楽しいと思える相手を見つけるなら、まずは自分が楽しいと思えるようにすればいいって気付いたの。こう思えるようになったのは、自分のプライベートの時間は楽しむためにあるって割り切って働き方を変えたからかな」

甘えるのが苦手と言っていたA子が、例の食事会で、さりげなく男性陣に「〇〇してくれたらうれしいな」と甘えていたのを私は見逃していなかった。余裕を手に入れたA子は、これからもどんどん変わっていくに違いない。

「結婚相談所での婚活を始めてみて、この半年で真剣交際まで進んだ人がいないけれど、私、以前のように焦っていないの。正直、大人の婚活ってこんなにも苦しいのか……って落ち込んだときもあった。でも、今の自分は結構人生を楽しんでいる。この“楽しい”を共有できる相手と巡り合えたらもっと楽しい人生になるって思うから、結婚は絶対にしたい!だから婚活は続けるわよ~」

そう“婚活継続宣言”をしたA子の頬は、いつも以上に赤みを帯びて艶やかだった。

婚活初心者専門コンサルタント・三島光世さん

三島さんからのひと言

『“忙しい”を理由にしていると、いつまで経っても真剣に婚活に取り組むタイミングが訪れません。思い切って、“今だけは!”と割り切り短期集中で時間と労力を婚活に注いでみると、視野が広がって、より良い出会いが訪れる可能性もあります』

婚活業界歴19年。20代・30代向けの結婚相談所「ganmi(眼深)」と50歳以上の結婚相談所「とわ婚」(https://towakon.net/)を展開する株式会社ヒカルヨの代表をつとめる。メディア出演多数。著書に『「普通」の結婚がなぜできないの?』(WAVE出版)、『婚活は「がんばらないほうが」うまくいく』(秀和システム)がある。

清葉アキコ
清葉アキコ

雑誌編集部に在職していた20年間、「恋愛」「婚活」など女性の生き方に関する企画を多く担当。編集者として25年以上、年間1000人以上の声を聞いてきた取材・分析力や多くの専門家への取材で得た人脈や知識を活かし、恋愛・婚活ジャーナリスト/コラムニストとして独立。女性たちのインサイトに訴えかける恋愛関連記事の制作・アドバイスや、自身の「婚活」経験をもとにした婚活コラムの執筆などを行っている。