50代婚活奮闘記24・バリキャリB美の場合
【24】56歳・最後のお見合い!そして新たな出発(最終話)
【24】56歳・最後のお見合い!そして新たな出発(最終話)
公開日:2025年07月09日
3か月ぶりに2件のお見合いが決定

「若い頃は一人では寂しいと思っていたし、結婚したらそれは解消できると思っていたんだけど、誰かがいればいいって話じゃないのよね。
年齢を重ねた今、誰かといることの方がストレスになることもあるってわかっているじゃない? 今の私はいろいろなことを一緒に楽しめる友人がいるし、一人でも楽しむ方法も知っているから、無理するような相手と結婚して一緒に暮らす必要はないって気付いちゃったのよ」。B美は大きく口を開いて笑った。
皮肉にも久々にB美のお見合いが決まったのはこのタイミング。結婚相談所を退会し、婚活をやめようと決めたときだった。
「これが人生で最後のお見合いになるかもね(笑)」。そう言ったB美の顔に、以前のような表情が戻っていた。表情は同じだが、婚活のために変えた女性らしい外見のせいか、いや、大きな決断でいろいろなことを吹っ切ったせいか、以前よりも魅力的な女性に見えた。
「本当に会いたい」と思って申し込んだお見合いだったが……

2件のお見合いは、どちらもB美が挙げていた条件にぴったりハマる男性だった。申し込んでも断られる日々にうんざりしていた中で、もう本当に会いたい人にしか申し込まない!と決めて選んだ2人だった。実際に会ってみると、写真よりも印象がいい。
1人目の男性はあと2年で定年退職になる初婚の公務員で、会話をしているととても堅実で優しい人だとわかった。彼との結婚生活はとても穏やかなものになるだろうとイメージできたが、B美にはそういう生活は単調で面白みがなく感じてしまった。
2人目は同い年のバツイチで、電気機器メーカーの営業職の男性だった。さすが営業職という感じの話し上手でお見合いでは盛り上がったが、「なぜ結婚したいのか?」の質問に「孤独死するのが嫌だから!」という回答で、「ん?」と感じてしまった。
彼は看取ってもらえる相手を得ることが結婚の目的で、自分自身の孤独死の不安を解消したいということ以外の目的がなかった。さらに話をしていくと、妻との死別から立ち直れず、娘からの勧めで相談所に入ったという。正直、本当は結婚する意欲がないのではないかと感じずにはいられなかった。
最後のお見合いを終えて

ああ、やっぱり私のこれからの人生を一緒に歩ける人はもうこの世にはいないのかもしれない……。B美は踏ん切りがついた。正直、最後のお見合いで運命的な出会いがあるんじゃないか?と一縷の希望も抱いていたけれど、奇跡はそう簡単に起こらない。「これが自分の運命なのだ」とB美は改めて現実を受け入れた。
「2人から仮交際を申し込まれたけれど断っちゃった。これで私のお見合いは終了よ!」とB美はさらっと私に言った。
「どちらも結婚相手としては良かったのかもしれない。でも、私が老後を一緒に過ごす相手としては違うなって……。
今後の私に必要なのは結婚相手ではなく“老後に楽しいことを一緒にできる相棒”って気付いたから、私は今後、結婚とか性別とかにこだわらない“気の合う相棒”探しをすればいいのよね。
それなら結婚相談所で探さなくていいって思ったし、今慌てて探す必要もない。今は今しかできないことを思いきりやって、退職後に時間や心に余裕ができてから、いろいろやっていく中で見つけていけばいいかな」
結婚という形をとらないパートナー的な存在なら、“気の合う相棒”という点だけで選べばいい。「もし、それでこれから先ずっと一人だとしても、しょうがないわよね」とカラッと笑いながらB美は話し続ける。
「“寂しい”って思いは自分でどうにかできるけれど、他人の言動は変えられない。相手にあれこれ希望を抱くより、自分の心地よい状態を自分で見つけていくことにするわ。これが私らしい人生だと思う!」
やっぱりB美はクールでかっこいい。そして強い!
「人生に必要なこと・大切にしたいこと」は人によって違う

正直、女性が一人で生きていると「寂しくないの?」と言われることが少なくない。B美も私も、結婚を望まない変わった女性だとか、結婚すらできない人格に問題がある女性だと散々言われてもきた。
若い頃は家族をつくり子どもを産んで育てる人生への憧れを抱いたし、それが叶わないと思ったときに涙した。両親が亡くなったときは何とも言えない喪失感と寂しさに押し潰されそうになり、家族をつくっておかなかった自分を恨んだこともある。
でも、今独身でいることに卑屈にならず生きているのは、自分の人生は自分の手でつくるという覚悟を持ち、自分らしく生きていきたいという強い望みがあるからだ。
世の中では“結婚”して家族をつくることが当然であるように思われているが、「人生にとって必要なこと」「人生で大切にしたいこと」は人それぞれ。“結婚”でしか得られないこともあるけれど、“結婚”しないからこそ得られたこともあるし、“結婚”でなくても得られることもある。
「私、口ではいろいろ言っていたけれど、“独身”であることにちょっと卑屈になっていたところがあったのよね。でも、今は全くそう思わない。私は自分で結婚をしなくてもいいって決めたの。だからもう卑屈になんてならないし、この決断に後悔しないよう生きていくだけ」とB美。
最後のお見合い後、B美は、相変わらず休日返上で仕事の鬼と化している。仕事のペースも取り戻したようで、近いうちに昇進するという話も出ているらしい。B美が自分らしく生き生きと過ごすために必要なことは、結婚相手でも結婚生活でもなく、自分が人生をかけてやってきた仕事だったのだ。
B美とは仕事の打ち合わせで毎月のように会っているが、先日、彼女がふざけたように笑ってこんなふうに言った。
「私が退職後にうっかりいいパートナーと出会って結婚しても、絶対に笑わないでよ! 私、『結婚しなくてもいい』とは決めたけど『結婚しない』って決めたわけじゃないんだから!」
婚活初心者専門コンサルタント・三島光世さん
三島さんからのひと言
『結婚は、一般的に同じ籍に入り生計を共にすることですが、子どもをつくらない50代以上の男女の場合、2人の間で心地よい関係を保つことができるのであれば、必ずしも結婚という形でなくてもよいでしょう。心のよりどころになる相手とほどよい距離感で過ごすパートナーシップは、最近熟年層でも増えています』
婚活業界歴19年。20代・30代向けの結婚相談所「ganmi(眼深)」と50歳以上の結婚相談所「とわ婚」(https://towakon.net/)を展開する株式会社ヒカルヨの代表をつとめる。メディア出演多数。著書に『「普通」の結婚がなぜできないの?』(WAVE出版)、『婚活は「がんばらないほうが」うまくいく』(秀和システム)がある。




