6月~9月は細菌性食中毒に注意

「食中毒予防の3原則」と家庭での感染対策をチェック

公開日:2020.06.16

更新日:2023.06.07

梅雨から夏にかけては、細菌性食中毒が多い時期。厚生労働省では「食中毒予防の3原則」とともに「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」を広く呼び掛けています。家庭での対策の注意点を東京家政大学大学院客員教授・藤井建夫さんに聞きました。

監修者プロフィール:藤井建夫さん

ふじい・たてお 東京家政大学大学院客員教授。著書に『食品の腐敗と微生物』(幸書房刊)など。

食中毒とは?6月~9月は細菌性食中毒の多い季節

食中毒とは、細菌やウイルスが付着した食品や、微生物や化学物質などの有害な物質が含まれる食品を食べることによって、 嘔吐や下痢、腹痛、発熱などの症状を引き起こす健康被害のことです。

厚生労働省の統計(食中毒発生状況、速報値)によると、2019(令和元)年の食中毒は1061件(患者:13018人)報告されています。

2019年(1~12月)に発生した食中毒の発生原因は、約5割がウイルス、約4割が細菌とのこと(参考:食中毒が多い季節は?(農林水産省))。特に、湿度や気温が高い梅雨時期(5月・6月)と夏(7月・8月・9月)は、細菌性食中毒の発生に注意が必要です。

食中毒予防の3原則!付けない・増やさない・やっつける

細菌性食中毒は、原因菌が食べ物に付着して体内へ侵入することによって発生します。 食中毒を防ぐためには、細菌を食べ物に「付けない」、食べ物に付着した細菌を「増やさない」、食べ物や調理器具に付着した細菌を「やっつける」ことが大切です。

▼食中毒予防の3原則
1.付けない
2.増やさない
3.やっつける

「食中毒予防の3原則」のポイントをそれぞれ見ていきましょう。

1.付けない:手洗いの徹底、加熱の有無で食材を分ける

食中毒の原因となる細菌を食べ物に「付けない」ために、調理前や生肉・魚・卵などを取り扱う前後には手洗いを徹底しましょう。また、肉や魚を切ったまな板や包丁から、生のまま食べる野菜などへ菌が付着しないように、調理器具は使用のたびに水で洗い、こまめに殺菌を。食品を保管するときも、食材ごとに分けて密封容器に入れる、ラップをかける、などの対策が大事です。

2.増やさない:冷蔵庫に保存して、早めに食べる

多くの細菌は、10℃以下では増殖がゆっくりになり、-15℃以下では増殖が停止することが知られています。食べ物に付着した菌を「増やさない」ために、肉や魚などの生鮮食品や総菜などは、購入後できるだけ早く冷蔵庫に入れます。また、冷蔵庫の機能を過信せず、早めに食べることが大事です。

3.やっつける:加熱処理で殺菌を

ほとんどの細菌は加熱によって死滅するため、しっかり加熱して菌を「やっつける」ことが大切です。特に肉料理は中心までよく加熱(目安:中心部を75度で1分以上)する必要があります。また、肉や魚、卵などを使った後は、まな板や包丁などの調理器具を洗剤でよく洗ってから、熱湯をかけましょう。

家庭でできる食中毒予防の6つのポイント

続いて「食中毒予防の3原則」を元にした「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」で、具体的に気を付けるべきポイントをチェックしていきましょう。

・ポイント1:食品の購入
肉・魚・野菜などの生鮮食品は、消費期限を確認して、なるべく新鮮な物を購入しましょう。冷蔵や冷凍などの温度管理の必要な食品は最後に購入して、寄り道せずにすぐに帰宅を。

・ポイント2:家庭での保存
生鮮食品は、持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。肉や魚などは、ビニール袋や容器に入れ、冷蔵庫の中の他の食品に接することがないよう、注意します。

・ポイント3:下準備
冷凍食品を調理台に放置したまま解凍するのは危険です。室温で解凍すると、細菌が増える場合があるため、解凍は冷蔵庫の中や電子レンジで行います。料理に使う分だけ解凍し、解凍が終わったらすぐ調理しましょう。

・ポイント4:調理
調理前に再度、台所が汚れていないかをチェックしましょう。タオルやふきんは乾いて清潔なものと交換します。調理前には必ず手を洗いましょう。

・ポイント5:食事
清潔に十分気を付けて、器に食事を盛りつけます。加熱調理した食品でも、室温に長く放置せず、すぐに食べます。食卓に付く前にも手を洗いましょう。

・ポイント6:残った食品
残った食品は早く冷えるように浅い容器に小分けして保存して、食べる前に75度以上に加熱を。味噌汁やスープなどは、沸騰するまで加熱してから食べます。ちょっとでも怪しいと思ったら、食べずに捨てましょう。

どの工程でも、食品を扱う前には、必ず手を洗うことが大切です。
        

誤解がいっぱい!食中毒対策の注意点

厚生労働省などでも食中毒に関する情報の注意喚起が行われている一方で、一般的に知られている情報には、間違いが多いそう。東京家政大学大学院客員教授・藤井建夫さんに、食中毒対策の注意点を教えてもらいました。

カレーも放置はダメ!調理後1時間以内に冷蔵庫へ

カレーなどを鍋のまま保管する人もいますが、肉や泥付き野菜に潜む「ウェルシュ菌」は加熱しても死滅せず、温度が下がりかけた料理は増殖するのに絶好の場所です。料理を作り置く場合は、鍋から容器に移して早めに粗熱を取り、1時間以内に冷蔵庫へ入れましょう。

短時間でも危険!スーパーには保冷剤を持っていこう

「生鮮食品とはいえ、ちょっとの時間なら大丈夫」そう思っている人は要注意。気温が上がる夏場は、スーパーの帰り道など短時間でも注意が必要です。保冷剤を持参して、帰宅したら早めに冷蔵庫に入れましょう。肉や魚を最後に購入するのも効果的です。

「スーパーの惣菜だから安心」はNG!要冷蔵&早めに食べて

健康志向の高まりから、最近の総菜は減塩のものが多く、あまり日持ちがしません。密閉容器に入れて冷蔵庫で保管し、早めに食べましょう。保存容器に移す場合は賞味期限の確認を忘れずに。

低温でも菌は繁殖する!冷蔵庫の中も掃除・消毒を

細菌の多くは、10度以下では増殖がゆっくりになりますが、完全に死ぬわけではありません。食品トレーからこぼれた肉汁や魚のドリップなど、冷蔵庫に保存中の食品から菌が繁殖することもあります。菌の温床にならないよう、冷蔵庫の中はときどき掃除しましょう。アルコールで拭くと効果的です。

野菜や果物は袋入りが安心!なるべく加熱調理を

鮮度が大切な果物や野菜はバラ売りの方が手に取って鮮度を確認しやすいものですが、多くの人がベタベタと触っているため、食中毒菌が付いている可能性も……。この時期は、袋売りの方が安全です。食中毒予防のために、夏場は野菜もできるだけ、加熱して食べましょう。

ペットボトル飲料も菌の温床に!1日で飲み切る

口を付けたペットボトルは、ストローを使っても唾液や口内の細菌が入り、増殖します。ジュースや甘いスポーツドリンクは特に注意。コップに移して飲むか、口をつける場合は1日で飲み切りましょう。

取材・文=田渕あゆみ、大矢詠美(ともにハルメク編集部) 撮影=中川まり子

※この記事は、「ハルメク」2016年9月号に掲載されたものです。


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