落語で認知症予防
【医師が解説】落語で認知症予防!笑いの効果とは?

更新日:2024年11月05日 公開日:2020年06月15日

認知症と笑いの健康効果・後編

【医師が解説】落語で認知症予防!笑いの効果とは?

【医師が解説】落語で認知症予防!笑いの効果とは?

「笑い」には、患者さんや家族を癒すだけでなく、認知症そのものを予防する力もある!? 自ら高座に上がり、“認知症落語”を披露する廣西昌也医師に、「笑いの力」「笑いの意義」について聞きました。

監修者プロフィール:廣西昌也さん

廣西昌也さん

ひろにし・まさや 和歌山県立医科大学附属病院紀北分院分院長、認知症疾患医療センター長。1964(昭和39)年生まれ。和歌山県立医科大学卒業。専門は神経内科疾患全般、認知症疾患。総合内科専門医、日本神経学会神経内科指導医・専門医、日本認知症学会指導医・専門医、臨床瞑想指導者、笑いヨガリーダー。アマチュア落語家で、芸名は大川亭可流亭。短歌もたしなみ、第5回歌葉新人賞受賞。著書は『歌集神倉』(書肆侃侃房刊)。

認知症への負のイメージを笑いで吹き飛ばしたい!

大川亭可流亭

大川亭可流亭(おおかわていかるて)――。和歌山県立医科大学で認知症外来を担当する廣西昌也さんの芸名です。子どもの頃から落語が好きで、大阪の天満天神繁昌亭で落語入門講座を受講したのをきっかけに、最近はアマチュア落語家として、“認知症落語”にもチャレンジしています。

「認知症の講演会のときなどに、認知症をテーマにした創作落語を披露しています。病気の知識や予防法、患者さんや家族の心情などを盛り込んだ内容です。認知症の予防には、病気のことをよく知ること、そして笑うことも大事。よく笑う人は、認知症になりにくいという研究結果もあるんですよ」

認知症の治療にも、笑いのリラックス効果を活用!

認知症の治療にも、笑いのリラックス効果を活用

廣西さんは「笑いは認知症治療の現場でもとても大切」だと話します。

「認知症の患者さんは、常に“NO”の世界に生きています。『こんなことしたらいかんよ』と周りからはNOばかり。緊張の連続で交感神経が高ぶり、いつも臨戦態勢のような状態です。それをほぐしてくれるのが、笑い。笑うと一気に副交感神経が優位な状態へと切り替わり、リラックスできるんです」

「怖い顔で診察室に入って来た患者さんも、心配顔のご家族も、帰るときには笑顔になっていてほしい。落語で学んだ話術が診療にも役立っています」

交感神経優位で緊張した状態でも、笑うと副交感神経に即スイッチ

笑いはリラックスへの一番の近道です。

闘いモード(交感神経優位)
瞳孔が開く
血圧が上がる
心拍数が増える
消化管の動きが低下する
唾液がネバネバする

笑い

リラックスモード(副交感神経優位)
瞳孔が縮む
血圧が下がる
心拍数が減る
消化管が動く
唾液がサラサラする

落語で認知症をタブー視する社会から受け入れる社会へ

落語で認知症をタブー視する社会から受け入れる社会へ

廣西さんが認知症落語を始める際、心配したのは観客の反応でした。

「認知症の人を馬鹿にしているなどと受け取られたら……と最初は心配もしましたが、幸い、そういう反応はなかったですね。実はこのテーマで落語を始めた背景には、認知症をタブー化させたくないという思いもありました」

「例えば“ボケ”という言葉は絶対に使ってはいけないという専門家もいますが、私は文脈次第だと思っています。落語の人情噺として、『誰でもボケるんや、みんな一緒やないか』と言えば、『そやそや』とうなずいてもらえる。落語ならではの言い方、伝え方が効くんですね。落語を通して“スティグマ感”を消していきたい。そんな野望もあるのです」

スティグマとは、否定的なレッテル付けのこと。認知症は怖い病気、不幸だ……といった負のイメージが社会にはまだ根強い、と廣西さん。

「認知症をタブー化すると、スティグマ感はもっと強くなります。だからこそ認知症のことを取り上げて、みんなで笑ったり、しみじみ共感したり、ちょっとほろりとしたり……。落語だからこそ伝えられること、できることがあると思うのです。これからも精進します!(笑)」
 

研究データで見る「笑い」と「認知症」の関係

笑う頻度が少ない人ほど認知機能が低下しやすい

笑う頻度が少ないほど認知機能が低下しやすい――。それを示す研究データを紹介します。

福島県立医科大学の大平哲也教授らの研究によると、65歳以上の男女約1000人を対象に、笑う頻度と認知機能との関係を調べたところ、ほとんど笑う機会のない人は毎日笑う人に対し、認知機能低下のリスクが2.15倍高いという結果でした。

さらに、ほとんど笑わない人は1年後に認知機能が低下するリスクも3.6倍高かったといいます(※)。

廣西さんが提唱する認知症介護のコツ5か条と家族の接し方も参考に、ぜひ「笑い」を生活に取り入れて健康に過ごしてくださいね。

※出典:老年精神医学雑誌第22巻第1号2011

取材・文=佐田節子

※この記事は、「ハルメク」2017年1月号に掲載した記事を再編集しています。

■もっと知りたい■

雑誌「ハルメク」
雑誌「ハルメク」

女性誌売り上げNo.1の生活実用情報誌。前向きに明るく生きるために、本当に価値ある情報をお届けします。健康、料理、おしゃれ、お金、著名人のインタビューなど幅広い情報が満載。人気連載の「きくち体操」「きものリフォーム」も。年間定期購読誌で、自宅に直接配送します。雑誌ハルメクサイトはこちら

みんなの コメント
ハルメクが厳選した選りすぐりの商品

驚きの軽さ&使いやすさ!

1本で7つの効果
薬用美肌ヴェール
1本で7つの効果
薬用美肌ヴェール

【PR】自分の尿モレタイプはどれ? 簡易診断でチェック!

自分の尿モレタイプはどれ?

たまに尿モレがあっても、だましだまし過ごされている方も多いのでは? けれど一口に尿モレと言っても症状によってタイプはさまざま。そこで自身の尿モレのタイプがわかる簡易診断チャートをご紹介!

2025.06.10
知らないと損する!?30秒でわかるコンビニおトク術

1個買うと、1個もらえる!

「アレ」を活用するだけで商品がタダでもらえるキャンペーンをご存知ですか?その名も「1個買うと、1個もらえる」キャンペーン。コンビニでおトクに買物する絶好の機会をハルトモさんに体験してもらいました!

2025.06.02
「ほったらかしの投資」~手軽に投資を始める・続ける方法

「投資は難しそう…」と思っている人は必見

興味があるけど自信がない人におすすめな、長期的に資金を積み立てていく「ほったらかしの投資」。家計をラクにする資産運用の方法が知りたい人はぜひチェック!

2025.06.02
夏の眼鏡が暑くて不快…汗ばむ季節にぴったりのフレームで涼しく快適に!

汗ばむ季節にぴったりのフレームとは?

汗ばむ夏の眼鏡…この顔面環境の不快度どうしたらいい?そんな方は夏にぴったりなフレームをチェックしてみて。

2025.06.02
サングラスのレンズカラーの違いって?美肌・おしゃれ見えする色の選び方

サングラスのレンズカラーの違い

色によっては美肌効果も期待できるカラーレンズ。お気に入りを見つけて、夏のお出掛けを楽しみましょう!

2025.06.02
認知症のご本人の財産や権利をどう守るか?

認知症のご本人の財産や権利をどう守る?

認知機能が低下した場合、財産管理はどうするべきか?法律面からの支援をご紹介!

2025.05.13
ご家族の認知症介護の進め方、向き合い方

ご家族が認知症になったら……

ご家族が認知症で介護が必要な状況になったらどうする?進め方・向き合い方を解説していきます

2025.05.13
【PR】飽き症でも、ゼロから英語が話せるようになったワケ

ゼロから英語が話せる!

飽き症さんでもOK!たった60日で英語が苦手な人でも英会話ができるようになると話題の「インド式英会話」をご存知ですか?無料体験セミナー実施中です!

2025.02.05
【PR】鼻への重量感・違和感のストレスから解放!

「ふわっ」と軽いメガネ♥

メガネがずり落ちる・鼻の頭が重いなど、メガネのプチストレスにサヨナラ!あっと驚く程つけ心地抜群のメガネをぜひお試しください

2024.12.17
50代のための「お金の相談ガイド」〜まず何をすればいい?

50代のための「お金の相談ガイド」

50代に入ると現実味を帯びてくる老後への不安。家族や健康、仕事の悩みに加えてお金の問題についても漠然と不安を感じているものの、何から始めたらよいのかわからない人も多いのではないでしょうか。お金の悩みを解決したい人はぜひチェック!

2025.06.13
物価高の今こそ考えたい!インフレ時代に「資産運用」ってどうして必要なの?

本当に必要な「お金の準備」

物価が急激に上昇している今こそ、将来に向けて「お金の準備」が必要です!年金や退職金に頼らない、資産形成を進めるには?

2025.04.18
おひとりさま女性のソロライフに備えよう!「おひとりさま老後」の資産運用

老後資金、こんなに要るの?

未婚に限らず、離婚・死別などで誰しも「おひとり様」になる可能性が。一人で生きていくための「お金の準備」は出来ていますか?

2025.03.18

ハルメクが厳選した選りすぐりの商品

「奇跡の60代!木村友泉 大人のリンパケアLesson」横隔膜をゆるめる動き