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- 【医師が解説】落語で認知症予防!笑いの効果とは?
「笑い」には、患者さんや家族を癒すだけでなく、認知症そのものを予防する力もある!? 自ら高座に上がり、“認知症落語”を披露する廣西昌也医師に、「笑いの力」「笑いの意義」について聞きました。
監修者プロフィール:廣西昌也さん
ひろにし・まさや 和歌山県立医科大学附属病院紀北分院分院長、
認知症への負のイメージを笑いで吹き飛ばしたい!
大川亭可流亭(おおかわていかるて)――。和歌山県立医科大学で認知症外来を担当する廣西昌也さんの芸名です。子どもの頃から落語が好きで、大阪の天満天神繁昌亭で落語入門講座を受講したのをきっかけに、最近はアマチュア落語家として、“認知症落語”にもチャレンジしています。
「認知症の講演会のときなどに、認知症をテーマにした創作落語を披露しています。病気の知識や予防法、患者さんや家族の心情などを盛り込んだ内容です。認知症の予防には、病気のことをよく知ること、そして笑うことも大事。よく笑う人は、認知症になりにくいという研究結果もあるんですよ」
認知症の治療にも、笑いのリラックス効果を活用!
廣西さんは「笑いは認知症治療の現場でもとても大切」だと話します。
「認知症の患者さんは、常に“NO”の世界に生きています。『こんなことしたらいかんよ』と周りからはNOばかり。緊張の連続で交感神経が高ぶり、いつも臨戦態勢のような状態です。それをほぐしてくれるのが、笑い。笑うと一気に副交感神経が優位な状態へと切り替わり、リラックスできるんです」
「怖い顔で診察室に入って来た患者さんも、心配顔のご家族も、帰るときには笑顔になっていてほしい。落語で学んだ話術が診療にも役立っています」
交感神経優位で緊張した状態でも、笑うと副交感神経に即スイッチ
笑いはリラックスへの一番の近道です。
闘いモード(交感神経優位)
瞳孔が開く
血圧が上がる
心拍数が増える
消化管の動きが低下する
唾液がネバネバする
↓
笑い
↓
リラックスモード(副交感神経優位)
瞳孔が縮む
血圧が下がる
心拍数が減る
消化管が動く
唾液がサラサラする
落語で認知症をタブー視する社会から受け入れる社会へ
廣西さんが認知症落語を始める際、心配したのは観客の反応でした。
「認知症の人を馬鹿にしているなどと受け取られたら……と最初は心配もしましたが、幸い、そういう反応はなかったですね。実はこのテーマで落語を始めた背景には、認知症をタブー化させたくないという思いもありました」
「例えば“ボケ”という言葉は絶対に使ってはいけないという専門家もいますが、私は文脈次第だと思っています。落語の人情噺として、『誰でもボケるんや、みんな一緒やないか』と言えば、『そやそや』とうなずいてもらえる。落語ならではの言い方、伝え方が効くんですね。落語を通して“スティグマ感”を消していきたい。そんな野望もあるのです」
スティグマとは、否定的なレッテル付けのこと。認知症は怖い病気、不幸だ……といった負のイメージが社会にはまだ根強い、と廣西さん。
「認知症をタブー化すると、スティグマ感はもっと強くなります。だからこそ認知症のことを取り上げて、みんなで笑ったり、しみじみ共感したり、ちょっとほろりとしたり……。落語だからこそ伝えられること、できることがあると思うのです。これからも精進します!(笑)」
研究データで見る「笑い」と「認知症」の関係
笑う頻度が少ないほど認知機能が低下しやすい――。それを示す研究データを紹介します。
福島県立医科大学の大平哲也教授らの研究によると、65歳以上の男女約1000人を対象に、笑う頻度と認知機能との関係を調べたところ、ほとんど笑う機会のない人は毎日笑う人に対し、認知機能低下のリスクが2.15倍高いという結果でした。
さらに、ほとんど笑わない人は1年後に認知機能が低下するリスクも3.6倍高かったといいます(※)。
廣西さんが提唱する認知症介護のコツ5か条と家族の接し方も参考に、ぜひ「笑い」を生活に取り入れて健康に過ごしてくださいね。
※出典:老年精神医学雑誌第22巻第1号2011
取材・文=佐田節子
※この記事は、「ハルメク」2017年1月号に掲載した記事を再編集しています。
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