脳を元気に!もの忘れ&認知症を予防する新習慣#2

【診断テスト】認知症になりやすいかチェック!

公開日:2022.09.14

更新日:2024.09.27

もの忘れや認知症予防について各専門家に聞く全7回の企画。今回は、認知症の発症を抑えるために脳機能の低下を防ぐ大切さを2人の専門家に伺います。認知症になりやすい12の条件をセルフチェックしてみましょう。

教えてくれた2人の専門家

■浦上克哉(うらかみ・かつや)さん

鳥取大学医学部教授。日本認知症予防学会理事長。鳥取県と共同で「とっとり方式認知症予防プログラム」を開発するなど、認知症予防に努めている。近著『科学的に正しい認知症予防講義』(翔泳社刊)が話題。

■辻 一郎(つじ・いちろう)さん

東北大学医学部教授。認知症を含む老化予防等、健康寿命を延ばすための公衆衛生学が専門。科学的なエビデンスに基づいた性格と病気の関係にも詳しく、著書に『病気になりやすい「性格」』(朝日新書)がある。

脳に刺激のない生活&ストレスが認知症の原因に

2-01_脳に刺激のない生活&ストレスが認知症の原因に

2020年のコロナ禍以降、私たちの生活様式はずいぶん変わってしまいました。

「外出や人との交流が減って、体も脳も活動が少ない状態が続くと、認知症予備軍になる人が増える可能性が高いのです」と指摘するのは、鳥取大学医学部教授で認知症専門医の浦上克哉さん。

「加齢とともに認知機能が少しずつ衰えるのは自然なことですが、人との交流が少なく、外出をあまりしない生活が続くと、脳機能の衰えはますます進んでしまいます」と浦上さんは不安をもらします。

一方、コロナ禍によるストレスも認知症リスクを上げる可能性がある、と言うのは、東北大学医学部教授で医師、認知症研究者の辻 一郎さん。

「ストレスを受け続けると、記憶を司る『海馬』という部位が萎縮します。コロナ禍でストレスがたまり、これから認知症の発症が増えるのではという危機感があります」と辻さん。

脳を元気に保てば、認知症は避けられる

2-02_脳を元気に保てば、認知症は避けられる

高齢社会で認知症が増えるのは仕方がないと思われがちですが、「実はそうとは言えません」と辻さんは指摘します。なんと、欧米ではこの30年ほどで認知症の発生率がどんどん減っているのだとか。

「ボストン大学の研究によると、アメリカでは1980年頃に比べて、2010年頃の発生率は4割以上少なくなっているという報告があります。しかも発症年齢は年々上がって、発症から亡くなるまでの年数は短くなっています。スウェーデンやオランダの研究でも同様です」

米国ボストン大学で調べた認知症発生率の変化
※100人あたりの人数

2-03_米国ボストン大学で調べた認知症発生率の変化
Claudia L Satizabal, et al.: New England Journal of Medicine 2016;523-532

「かつて認知症は、高齢になれば避けられず、発症したら長患いになるイメージでしたが、欧米ではその考えは過去のものになりつつあります」と辻さん。

その理由は、喫煙率の減少など生活スタイルの変化や、高血圧の治療などの医療対策が功を奏したと考えられるそうです。

2-04_脳を元気に保てば、認知症は避けられる

「放っておくと認知症になる人のうち、少なくとも4割はきちんと対策すれば発症を免れます。残る6割を救う方法も、研究が進んでいます。コロナ禍で脳がなまりがちな今こそ、できるだけ早く対策を始めてほしいと思います」と浦上さんは話します。

認知症の発症は「習慣」で4割が予防できる!

2-05_認知症の発症は「習慣」で4割が予防できる!

認知症の原因は、脳神経がダメージを受けること。例えばアルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβなどのたんぱく質がたまり、それが神経を壊すことは知られています。

ところが不思議なことに、神経がダメージを受けても、全員が認知症になるわけではないのです。

では、発症した人としなかった人の違いはどこにあるのでしょうか。イギリスの医学誌「ランセット」が世界中の調査研究を分析したところ、発症した人に共通する12の条件が浮かび上がりました。

その条件を取り除ければ、発症を4割予防できると言います。浦上さんも「正しい知識に基づいて生活習慣を変えることは、脳の健康を保つのに大切。何歳からでも遅過ぎません」と予防をすすめます。

認知症になりやすい12の条件をセルフチェック!

2-06_認知症になりやすい12の条件をセルフチェック!

発症につながる条件は、年齢によって異なります。過去の自分を振り返ってチェックしてください。★の合計数が多いほどリスクが高くなります。

■認知症になりやすい12の条件

<~45歳>
★★ 新しいことを勉強するのは嫌い

<45~65歳>
★★★ 耳が聞こえにくい(※)
★★★ 頭部にケガをした
★★ 高血圧
★★ 肥満
★ お酒を飲み過ぎる 
※45~65歳で耳が聞こえにくいと、聴覚による脳への刺激が減ること、コミュニケーションがとりにくく社会的なつながりが減りやすくなることから、認知症発症リスクが上がると考えられます。補聴器を適切に使うことが大切です。

<66歳~>
★★★ 気分が落ち込みがち
★★ タバコを吸う
★★ 社会的な役割がない
★★ 運動不足
★★ 糖尿病がある
★ 大気汚染のあるところに住んでいる

※認知症になりやすい12の条件:Livingston G, et al.:Lancet.2020; 396:413-446より引用・改変

■認知症になりやすい性格ってある?

「性格が認知症の直接の原因になるわけではありません。ただ、上の12の条件に結び付きやすい性格の傾向は確かにあります」と辻さん。

例えば、内向的なタイプは対人関係が不足して社会的な役割がなくなりやすい、物事を悲観的にとらえる人は気分が落ち込みやすい、などだそう。

「とはいえ、性格はなかなか変えられませんし、無理に変える必要もありません。大切なのは、内向的なら一人でできる脳トレを積極的にやる、悲観的なタイプならストレス解消法を探すなど、性格に合う対策法を見つけることです」と辻さんは助言します。

認知症研究は日進月歩!認知症予防の常識をアップデート

運動」「食事」「生活習慣」「脳トレ」。この4つは、心身を健康に保ち、「認知症になりやすい12の条件」のリスクを下げるためにも大切な要素です。

ただし、浦上さんによると、「運動や生活習慣に気を使う方は昔よりずっと増えています。でも10年以上前に脳にいいと言われていたことを今も続けていても、必ずしも最善とは言えなくなっているので、注意が必要です」とのこと。

例えば、少し前までは“有酸素運動がベスト”と言われていたけれど、今は“それだけでなく筋力を維持する運動も必要だ”と変わってきています。

「認知症予防研究は急速に進歩しているので、科学的に正しい最新の対策を取り入れることが大切です」と浦上さん。

■新!認知症予防法1:運動

2-07_新!認知症予防法1:運動

「有酸素運動が大切、とウォーキング一辺倒だと、筋肉が落ちがち。転倒して認知症リスクに直結することも」と浦上さん。筋力を保つ運動と組み合わせてバランスよく行うことが大切です。

■新!認知症予防法2:食事

2-08_新!認知症予防法2:食事

“野菜・魚多めでバランスよく”は、もはや当たり前。食事によって、認知症の原因になるアミロイドβがたまるのを防げます。おすすめの食品や食べ方もわかってきています。

■新!認知症予防法3:生活習慣

2-09_新!認知症予防法3:生活習慣

コミュニケーションは大切ですが、いつもの仲良しとおしゃべりしても、あまり脳を使うことにならないそう。

「家族や友人以外の人と話す方が、脳がフル回転して認知症予防に有効です」と浦上さん。

新!認知症予防法4:脳トレ

2-10_新!認知症予防法4:脳トレ

「いわゆる脳トレは有効ですが、同じことの繰り返しではあまり効果は出ません」と浦上さん。いろいろな種類の脳トレやパズルに挑戦するのが、脳のあらゆる部位の刺激になります。

とはいえ「認知症予防のためだからといって、やりたくないことを修行のようにする必要はありません」と辻さんは話します。

「ストレスは認知症予防にかえってマイナスです。いわゆる“脳トレ”でなくても、本を読んだり手紙を書いたり、編み物などの手仕事も脳の活性化になります。ご自身が楽しいと思うことで脳を使っていけば、ご褒美のように健康長寿が後からついてきますよ」と辻さん。

特集では、「運動」「食事」「生活習慣」ごとに、最新の認知症予防法をご紹介します。まずは好きなこと、興味があることから始めてみましょう。

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次回は、まず「運動」について、東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員の谷口優さんが提唱する「大股歩き」と、伊賀瀬道也さんがおすすめする「片足立ち運動」を教えてもらいます。

取材・文=松尾肇子、原田浩二(ともにハルメク編集部) イラストレーション=曽根 愛
※この記事は雑誌「ハルメク」2021年10月号を再編集、掲載しています。

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