手描きだからこその一筆入魂

自分好みの“だるまさん”を探しに出かけよう

公開日:2022.10.13

埼玉県越谷市にある、「島田達磨(だるま)総業」へ行ってきました。ひと言で「だるま」と言いますが、実はすごく奥深いことを、55歳を過ぎて初めて知りました。

自分好みの“だるまさん”を探しに出かけよう
乾燥中のだるまさんは、みんな並んで横向き

江戸時代からの継承

越谷だるまは、江戸時代から続く手工芸品です。

かつて、稲刈りを終える9月以降どこの家でも作っていましたが、現在はわずか4軒。「島田達磨総業」の島田和明さんは、農業を辞め年間を通してだるま作りに専念していると言います。

都心から近く、輸送時の破損リスクが少ないため、東京都内に需要が多い島田さんのだるま。私が毎年行くお酉さま(酉の市)にも、島田さんは卸しているそう。確かに、我が家のだるまと同じ顔をしています。

江戸時代からの継承
「恥ずかしいから足だけ」と、道具と一緒に撮影する島田さん

職人の魂

越谷だるまの特徴は、高い鼻と白い肌、曲線の背部、家ごとに違う独自の顔立ち。

すべて手描きのため、微妙に違う、この世に二つとない代物だそうです。

島田さんは、眉頭に寿の文字、眉尻に亀の絵、口髭は鶴、口は飛び立つ鳥、あご髭は富士山を象っています。これは、ご自身のお父様より、お父様はおじい様よりと代々受け継がれたものだそう。

ですが、若い頃は「達磨職人なんて絶対にやりたくない」と思っていたとか。それでも継承している理由を尋ねると「やっぱり跡取りだからね、自分がやらなくちゃ」と、照れ笑いを浮かべていました。

閑散期には、市内小学生の工房見学を受け入れるなど、伝統の継承にもご尽力されています。

職人の魂
描きかけのだるまさん、一筆ごとに島田さんの愛が込められていきます

酉の市にはだるまさん

胡粉と膠(ニカワ)を使うだるま作りの大敵は、湿気と高温。土台に使う動物性の材料はカビや腐敗に、表面の金塗は錆や変色の原因に。そのため、エアコンと大型扇風機を、フル稼働しているそうです。

「人間のためのエアコンじゃないから」と笑いますが、実際厳しい作業に思えました。

島田さんは終始「だるまさん」とおっしゃり、「さん」という敬称に、だるま作りへの情熱と誇りを感じます。2022年のだるま市では、一つ一つの表情を楽しみながら選びたいと思います。

■2022年酉の市

一の酉 11月4日(金)
二の酉 11月16日(水)
三の酉 11月28日(月)

だるまさんを買ったら、目標を掲げ向かって右(だるまの左目)に入魂。

墨は濃いほうが良く、一度にたっぷり墨を付けずに何度も重ね塗りをすると、流れず描くことができるそうです。

酉の市にはだるまさん
工房の片隅に座る大きなだるまさん、注文が入るとお腹に模様と文字が入ります

 

 

■もっと知りたい■

晴間千妣絽

はるまちひろ。老舗旅館を閉館して2023年より電子小説「大人だって友だちが欲しい」を配信中。女性の人生の悲喜交々を小説に綴り暮らしています。ハルトモ倶楽部を通して、日常のあれこれを楽しくほっこりとお伝えできればいいなと思っています。ブログ『普通の主婦のこだわり日記』『私の見ている世界

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