「日本原水爆被害者団体協議会」にノーベル平和賞

公開日:2025年01月09日

八十路の挑戦(7)

「日本原水爆被害者団体協議会」にノーベル平和賞

「日本原水爆被害者団体協議会」にノーベル平和賞

核兵器廃絶を訴え続けて68年。

「世界への挨拶」

1956年5月、「核と人類は共存できない」「人類は生きねばならぬ」という理念のもとに、広島県被団協(広島県原爆被害者団体協議会)が発足しました。

その時の森瀧市郎さん(1901-1994)のスピーチは、「世界への挨拶」として知られています。そして同年8月、日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)へと発展結成されました。 

その頃、私はまだ中学生でした。1954年の「第五福龍丸」の被爆事故についてのニュースが毎日ラジオから流れていたのを覚えています。

「世界への挨拶」
峠三吉詩碑  
『原爆詩集』の序(ちちをかえせ ははをかえせ としよりをかえせ…)

森瀧さんは、核実験のたびにそれに抗議して「原爆慰霊碑前の座り込み」を行いました。その回数は500回を超え、まさに「反核の父」だったのです。

雨の降るなかでも、お一人で座り込みをされている姿をテレビのニュースで拝見したことが何度かあります。 

世界へのメッセージ

今回のノーベル賞授賞式での田中煕巳(てるみ)さんのスピーチは、まさしく「世界へのメッセージ」となりました。「被爆後10年間、孤独と病苦と生活苦、偏見と差別に耐え続けざるをえなかった」と田中さんは語りました。

世界へのメッセージ
2023年、G7広島サミットで使用された円卓

私は、今、広島平和記念公園でボランティアガイドをしていますが、その研修期に班を同じくした5人は皆、被爆二世です。彼らの親御さんたちは被爆の話をしたがらなかったそうです。思い出すのも辛い悲惨な経験だったことが容易に推察できます。

その被爆者の平均年齢は85.58歳(2024年3月現在)だそうで、被爆伝承者は年々減少しており、いずれ誰もいなくなってしまうことを広島市は危惧しています。被爆二世や若い世代が伝承を継続していくことが期待されています。

『ヒロシマ・ノート』(大江健三郎著)にも、「広島の人間的悲惨を、アウシュビッツがそうであるように広く確実に周知徹底させる」という言葉があります。

世界へのメッセージ
被爆者が高齢化するなか、話を聞き資料を集め絵画に残そうと、若い世代ががんばっているのです

被団協は被爆20年後の頃から原爆被災体験資料収集にも力を入れ始めたそうで、今回、ノルウェー・オスロのノーベル平和センターで展示するために13点の「原爆の絵」のデータが提供されたそうです。ノルウェーでは約1年間展示されるようです。

人間は忘れっぽいのよ

これは、被爆者の松原美代子さん(1932-2018)がしばしば口にしていた言葉だ、と彼女の生涯を語る「語り部さん」から聞きました。

人間は忘れっぽいのよ
虹の掛かる噴水、その「祈りの泉」と原爆資料館

松原さんは動員学徒として出向く途中で被爆し、顔や手などに大火傷を負い、数回ケロイド治療で植皮手術を受けたといいます。その後、世界中を歩いて被爆伝承を続けられたのです。

「人間は忘れっぽいから何度も言わなきゃ駄目なんよ」と、常々言っておられたとか。

私の夫は生前、大学で教鞭をとっていましたが、松原さんは大学の聴講生として夫の講義に出席されたこともあったようです。夫は帰宅して「今日聴講生として松原さんが来た。若い時はさぞかし大変だったろう」とポツリと言ったことが思い出されます。

これからどうする?

これからどうする?
原爆死没者慰霊碑(広島平和都市記念碑)
(碑文)安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから

世界の核兵器保有数は1万2512発(2023年)と言われています。

そうした現実のなか、日本被団協のノーベル平和賞受賞は、被爆者やその伝承者にとっては本当にうれしい受賞でした。同時に、とても重い受賞です。

今回の受賞が核廃絶へ向けての「最後の追い風」となることを願ってやみません。

■もっと知りたい■

とし古
とし古

祖母は60歳の頃、針仕事や寺参りを日課にしていました。母は70歳の頃不自由な体で家族のために働き趣味の書道教室にも通っていました。そして私はいま八十路を歩いています。体力・知力は衰えを感じますが考える事・感じる事は昔と変わらないと思っています。死ぬまでにやっておきたい事に色々チャレンジしたいです。

みんなの コメント
  1. バーバラちゃん
    バーバラちゃん

    重いテーマです。丁度、ライブでメッセージの放送を見ました。国外への呼びかけも大事ですが、この国は被爆者に対して、余りに酷いと感じています。圧力を掛けられているのか、2度繰り返したメッセージも殆どニュースで取り上げられず、落胆しました。高2の孫2人が広島で見学をしてきました。若い世代に伝わったでしょうか。

  2. どこかの国の顔色を見ながらの我が国。自分の意見も言えず、それもかつて深い傷を負った身でありながら、声をあげられない。現実です。翠

ハルメクが厳選した選りすぐりの商品

暑い夏でも涼しくおしゃれに

大人のための軽やかデニムの決定版 大人のための軽やかデニムの決定版

夏に暑い・冬に寒い部屋は 断熱窓リフォーム!

ハルメク読者がショールームで体験!

環境省「先進的窓リノベ2025事業」で、窓やドアのリフォームに最大200万円の補助金が!お得にリフォームできる断熱窓の重要性が分かるショールームを、読者が体験しました。さらに、実際にリフォームしたご自宅にも潜入します!

2025.07.10
あれっおまたが擦れる……?40代からのおしもの悩みチェックリスト

あれっおまたが擦れる……?

40代、最近デリケートゾーンが気になったり、尿モレが気になったりということはありませんか。実はそれ、単に年齢のせいではなく、更年期に向かい始めている1つのサインかもしれません。今回は早めに知っておきたい閉経前後の症状「GSM」を解説します。

2025.07.10
今、レンズを薄いカラーにするのがおしゃれ♪

今、レンズを薄いカラーにするのがおしゃれ

50代女性の紫外線対策は、メガネのレンズを「カラーレンズ」にするのがおすすめ!おしゃれ&機能的に、カラーレンズを選ぶコツを紹介します。

2025.06.24
【PR】自分の尿モレタイプはどれ? 簡易診断でチェック!

自分の尿モレタイプはどれ?

たまに尿モレがあっても、だましだまし過ごされている方も多いのでは? けれど一口に尿モレと言っても症状によってタイプはさまざま。そこで自身の尿モレのタイプがわかる簡易診断チャートをご紹介!

2025.06.10
【PR】巻き爪や外反母趾などの足悩み解消を目指せる「正しい歩き方」

巻き爪解消を目指せる「正しい歩き方」

間違った歩き方は足トラブルを招き、健康寿命に影響があることを知ってましたか?正しい歩き方と足トラブル対策を専門家が解説!

2025.05.12
皮脂・メイク汚れに要注意!夏こそ眼鏡をメンテナンスしよう

眼鏡の皮脂汚れ気になる…

夏は汗や皮脂、メイク崩れなどで、いつもより眼鏡が汚れやすい季節。レンズやフレームの汚れを放っておくと、眼鏡の寿命が縮むことにもつながります!

2025.07.01
眼鏡愛好家の紫外線対策に!度付きサングラス・調光レンズを活用しよう

紫外線の量でレンズの色が変わる眼鏡!?

紫外線に反応して色の濃さが変わる調光レンズはこの季節にぴったり。屋外などではレンズカラーが濃くなり、紫外線が弱い屋内などではクリアに近くなります。

2025.07.01
更年期は気象病になりやすい?つらい症状を遠ざけるおすすめ対策3つ

更年期は気象病になりやすい?

雨が降ると頭痛やめまい、だるさなどの不調が起こる「気象病」。天気の変化によって起こる気象病は、実は更年期とも関わりがあると言われます。気象病のメカニズムや更年期との関係、つらい症状を和らげる対策について、医師の石原新菜さんに伺います。

2025.06.22
「ほったらかしの投資」~手軽に投資を始める・続ける方法

「投資は難しそう…」と思っている人は必見

興味があるけど自信がない人におすすめな、長期的に資金を積み立てていく「ほったらかしの投資」。家計をラクにする資産運用の方法が知りたい人はぜひチェック!

2025.06.02
【PR】始めるなら相談できる「対面証券」がおすすめ

お金のこと、なんでも無料相談

資産運用、相続、ローンまで!お金の「よくわからない」をプロに気軽に相談できる♪

2024.12.17
物価高の今こそ考えたい!インフレ時代に「資産運用」ってどうして必要なの?

本当に必要な「お金の準備」

物価が急激に上昇している今こそ、将来に向けて「お金の準備」が必要です!年金や退職金に頼らない、資産形成を進めるには?

2025.04.18
50代のための「お金の相談ガイド」〜まず何をすればいい?

50代のための「お金の相談ガイド」

50代に入ると現実味を帯びてくる老後への不安。家族や健康、仕事の悩みに加えてお金の問題についても漠然と不安を感じているものの、何から始めたらよいのかわからない人も多いのではないでしょうか。お金の悩みを解決したい人はぜひチェック!

2025.06.13