中山庸子さん流・心地よく暮らすための「終活片付け」

2023年08月08日

愛着ある物を快く手放す方法とは?

中山庸子さん流・心地よく暮らすための「終活片付け」

終活を始めるなら、まずは片付けから! でも思い入れがありすぎて、どれをどうやって処分したらいいのかわからない……。自身も終活片付けを実践している、イラストレーターの中山庸子さんに、物の残し方、手放し方のコツを教えてもらいました。

母を呼び寄せるために始めた「終活片付け」

中山庸子さんが、終活片付けに向き合うことになったのは2016年のこと。

「群馬の実家で一人暮らしをしていた、当時88歳の母を、近所のマンションに呼び寄せることにしたのです。そこは夫と私の仕事場だったので、マンションにある自分たちの荷物を、自宅に移動させることになりました」

20年以上、夫と共同の仕事場にしていたマンションの部屋は、収納が充実していたこともあり、仕事の資料や作品などの他、趣味で集めた骨董品や食器、洋服なども置いていたそうです。

自宅は、かつては中山さん夫婦と子ども2人の4人で暮らしていた3階建ての一軒家です。子どもが独立し、夫婦2人で暮らすには十分な広さですが、仕事場を兼ねるとなると、「とにかく物を減らさないと、とても入りきらない」状況だったと言います。

片付けを決意した当時の自宅には、クローゼットに収まり切らない洋服や本、海外で買った雑貨、子どもたちが置いていった物などがあふれていました。

「物が好きなんですよね。でもこれが終活の第一歩と思って取り組みました」

中山庸子さん流、終活片付けのコツ

中山庸子さん流、終活片付けのコツ

終活片付けをするにあたって、中山さんがまず取り組んだことは、やるべきことのチェックリストを作ることでした。

「何から手を付ければいいか整理するために、週単位、月単位でやるべきことを書き出して、チェックリストにしました。そうすると終わってチェックするのがうれしくなって、はかどりました」

はじめに手を付けたのは、大量の本。仕事の資料として使った本や、もう読み返すことのない思い入れの少ない本は迷いもなくダンボールへ。ただ、好きで何度も読み返す本は、「本棚に収まるだけは取っておくことにしました」と話します。

自分で初めて買ったワンピース
中山さんが厳選し手元に残した、昔購入した洋服

また、若い頃から洋服が好きで、着なくなってからも「いつか娘が着るかも」と、昔の洋服をずっと持っていたという中山さん。ですが、娘は趣味が違うし、自分の生活を省みて、もう着る機会がないと思うと迷いなく処分できたと言います。

「ただ、ずっと憧れていたブランドの、自分で初めて買ったワンピースなど、着られなくても手放したくない物は5着だけ残しました」

シノワズリの雑貨
シノワズリの雑貨が好きで集めていたという中山さん。手放さずに残した物は、いつでも目に入るような場所に置いて愛でています

他にも、シノワズリ(ヨーロッパで流行した中国風の絵柄)の陶器や、テディベアのぬいぐるみを集めていましたが、「ぬいぐるみは大量で洗うこともできないし、孫はどうも興味がなさそうだし」と20体ほど処分。

陶器も「最期まで持っていたい」と思った物だけを残して手放したと言います。

「そうやって残した物だからこそ、しまい込まずにいつでも目に入るところに飾るようにしました」

今の自分に合った物と量で暮らすルール作り

「生活の変化を受け入れて、今の自分に合った物と量で暮らしています」と話す中山さん。終活片付けは、今後の物との付き合い方を考えるきっかけになったようです。

片付けた後に、物を増やさないためのルールも設けました。

■本

中山庸子さんの本

本は本棚に入るだけしか残さないと決め、新たに買った本を残す場合は、本棚から1冊処分する。また、残す用と手放す用の2か所に分けて収納するなど、手放しやすくする工夫も。手放していい本は、まとまったらダンボールに詰めて寄付することに。

■子どもの漫画本

子どもの漫画本

子どもが置いていった大量の漫画本は、子どもたちと相談し、家族が共通して好きなものだけを手元に残し、他は処分することに。残す分もスペースに入るだけと決めたので、それから増えることもないそう。

■洋服

洋服

洋服はしまわず、見て把握できる量だけを持つことに。すべてハンガーにかけて出しっぱなしにし、衣替えの季節にはハンガーラックをクルリと回すだけ。アクセサリーは壁面収納に。

■写真

写真

中山さんの子ども時代から、新婚旅行や娘の結婚式、孫の様子まで、大量にあった写真。これらは、見返したい物だけを厳選し、ひと揃いのアルバムにコンパクトにまとめたそう。

エンディングノートに残った物の処分法を書き残す

エンディングノートに残った物の処分法を書き残す

中山さんは、自分に万一のことがあったときに備えて、美術書はデザイナーの娘に、レシピ本は料理好きの義理の娘に、アート図書は息子になど、思い入れのある物の行き先や、残った物の処分法をエンディングノートに書き記したと言います。

また、人に見られてもいい日記と、絶対見せられない2種類の日記をつけていて、「日記帳は見ないで処分して」と今から娘さんに頼んでいるそうです。

中山庸子さんの日記

現在は、母親の介護の真っ最中だという中山さん。

「朝昼晩と食事を届けたり、病院に付き添ったりと、今は余裕もないので、あのときに身軽にしておいてよかったと思っています。自分で選りすぐった大切な物に囲まれているので、少しぐらい散らかっていてもストレスはありません」

中山さんの片付けの方法と、気持ちの整理のつけ方を参考に、あなたも今日から終活片付けを始めてみませんか。

中山庸子(なかやま・ようこ)さんのプロフィール

1953年(昭和28年)生まれ。女子美術大学、セツ・モードセミナー卒業。美術教師を経てイラストレーターに。自身の経験をもとに書いた「夢ノート」シリーズが人気に。エッセイストとしても活躍。

撮影=栗林成城 ※この記事は、雑誌「ハルメク」2020年9月号を再編集しています。


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■記事協力=三井住友信託銀行


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記事協力:三井住友信託銀行

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