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- 自分の死後のペットはどうなる?今すぐできる対策も
「終活」は家や貯金だけでなく、家族同様に過ごしてきたペットのことも考えることが大切。特におひとりさまの場合、のこされたペットが悲しい思いをしないように今できることとは? その方法について「行政書士かおる法務事務所」の磨田薫さんに聞きました。
飼い主が亡くなると、大切なペットはどうなる?
飼い主が亡くなった場合、法律上ペットは相続財産とみなされます。つまり、ペットを誰が引き取るかについては、すべての相続人が参加する遺産分割協議で話し合われることになるのですが、これが簡単にはいかないと磨田さんは指摘します。
「実際には、遺産分割協議は不動産や金銭などの話に終始し、ペットのことは後回しになる傾向が多いようです。話し合いもすぐにまとまるものではなく、その間にペットのお世話を誰がするのかも問題になります」
磨田さんによれば、相続人たちが遠方にいたため、被相続人(亡くなった人)がペットを飼っていることすら知らず、自宅でペットが放置されていたというケースもあるそうです。また、協議が行われても、ペットの引き取りを巡って話がこじれることも少なくないとか。
「相続人が誰もペットを引き取らず、保健所に連れて行くというのは少なからず聞く話です。猫の場合は外に放されることもあります。孤独死したおひとりさまの家を遺品整理業者が訪問したら、押し入れから猫が出てきたり、亡骸を見つけたりすることも実際にあります」
飼い主なら誰しも、共に暮らしてきたペットにかわいそうな思いをさせたくはないでしょう。自分にもしものことがあった場合に備えて、ペットの行く末についてもきちんと考えておくことが大切です。
ペットの飼育を委ねる人をあらかじめ決めておこう
最初に考えたいのは、自分の死後、飼育を誰に委ねるかです。その候補としては、(1)相続人、(2)相続人に該当しない親族や友人・知人、(3)愛犬ホーム・愛猫ホームなどが挙げられます。
「まずは、信頼してペットを託せる人が身近にいるか、考えてみましょう。いるのであれば、事前にきちんと飼育を委ねる旨をお願いし、本人から了承を得ておくことが大切です。また、『書面で契約を交わす』ことをおすすめします。そして、遺言書で自分の意思を伝え、飼育費分の遺産相続についても明記しておくことが賢明です」と磨田さん。
ペットを委ねる人が相続人以外の第三者である場合は、公正証書遺言などを作成しておくことが特に重要です
なぜなら、その人にペットを託したいという自分の意思を相続人たちにきちんと伝えるとともに、ペットの飼育費を飼育者に遺贈する旨を遺言書に記載することで、後々のトラブルを避けられるからです。さらに「公的証書」にすることで、法的不備などで無効となるなどの不要な家族の負担を防ぐことができます。
プロに委ねる場合は見学を
一方、ペットの飼育を専門とする人たちに委ねる方法もあります。
「愛犬ホーム・愛猫ホーム」は、飼い主に何らかの事情が生じて世話が続けられなくなった場合に、ペットを引き取って代わりに面倒を見てくれるという施設です。
「全国にたくさんの施設がありますが、実際に見学した上で、大切なペットを託せるかどうかを見極めてほしいです。ホームページの内容と実際では異なることもあります。費用も施設によって違いがあり、入所金が必要なところもあれば、利用料を年間払いにしているところもあります」(磨田さん)
飼育費を確保して、ペットの将来に備えることもできる
「ペット信託」という仕組みを知っておこう
生前からペットの飼育費を確保できる「ペット信託」というサービスもあります。
「ペット信託」とは、飼い主(委託者)が、信頼する第三者(受託者)と信託契約を結び、自分が亡くなった後(もしくは病気などで飼えなくなった場合)のペットの飼育費を管理してもらう仕組みです。
「委託者が病気や入院、施設入所、亡くなるなど、ペットのお世話ができなくなると、受託者があらかじめ専用口座に入れていたお金(飼育費)を、飼育してくれる人(施設)に支払い、ペットも飼育者のもとに速やかに預けられます。私が運営している行政書士事務所でも対応しており、信託契約の作成は10万円で行っています。その他は、公正証書を作成する費用が数万円ほどかかります」(磨田さん)
また、飼育費の確保については、三井住友信託銀行の「遺言信託(ペット安心特約付)」を活用する方法もあります。ペットのことを考えた遺言書の保管・執行が任せられ、万が一の時に飼育してくれる人への連絡やペットの搬送の手配を行う一般社団法人安心サポートを紹介してもらえます。
飼育費用の目安はいくらくらい?
ところで、ペットを託す人に渡す飼育費は、どのくらいを考えておけばいいのでしょうか。磨田さんは以下のようにアドバイスしてくれました。
「現在ペットのために使っている費用の年間合計を計算し、加齢とともに必要となってきそうな医療費の年間予想額を加算します。そして、その合計額に『平均寿命(およそ16歳)−現在のペットの年齢』を掛ければ、大まかな費用を予想できます」
自分の死後、速やかにペットが引き渡されるかが大事
ペットを引き取ってもらう相手が決まったとしても、自分の死後、速やかに引き渡してもらえるかを確認することはできません。もしそれが滞れば、ペットの健康に害が及ぶことも。大事なのは、ペットを確実に引き渡してもらうための死後事務手続きです。
三井住友信託銀行の「おひとりさま信託」なら、一般社団法人安心サポートが生前に決めておいたペットの託し先へ連絡、搬送の手配をしてくれます。
また、自分が亡くなるというだけでなく、病気や事故で突然家に帰れなくなり、ペットが自宅に取り残されるということも十分に考えられます。
「財布などに『自宅にペットがいるので、私に何かあったら、こちらに連絡してください』というペットレスキューカードのようなものを入れておくことをおすすめします。玄関外にペットがいることを伝えるステッカーを貼っておくのもいいですね」と磨田さん。
かわいいペットはかけがえのないパートナー。だからこそ、ペットの行く末のことをしっかりと考えた終活を進めていくことが大切です。
磨田薫(とぎた・かおる)さんのプロフィール
日本の犬猫殺処分に疑問を持ち、動物病院での看護師勤務から転身。飼い主とペットのための仕組みづくりを行う「行政書士かおる法務事務所」を開業。どうぶつ系行政書士として、飼い主さんの万が一に備えるための信託契約書や遺言書などの作成サポートを行っている。
里親募集型の保護猫カフェ「CafeGatto」も運営し、飼い主に万が一のことがあった場合の引き受けや、野良猫に不妊手術をして飼い主を見つける「PNH活動」を行っている。著書に『知って安心!可愛いペットと暮らすための知識』(梓書院刊)
※この記事は2021年11月の記事を再編集して掲載しています。
■もっと知りたい■
■記事協力=三井住友信託銀行
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