おひとりさまの終活!今家族が居る人も他人事ではない

誰にどう頼む?おひとりさまが準備すべき死後手続き

勝猛一
監修者
司法書士、「勝司法書士法人」代表
勝猛一

公開日:2021.09.27

更新日:2023.08.04

自分の死後には、相続を含め数多くの手続きが待ち受けています。残された人にのために、おひとりさまが今からできること「6つ」を始めてみませんか? また「死後事務委任契約」など、おひとりさまが終活ですべき備えについて見ていきましょう。

「相続する人がいない」から大丈夫、は勘違い!

「相続する人がいないから」は勘違い!しっかり準備を

誰しも死後には何らかの財産がのこります。財産がのこれば、相続が発生します。相続をスムーズに行うためには、遺言書を用意しておくのが終活の鉄則です。特に配偶者・子どもがいないおひとりさまの場合は、正式な遺言書を作成しておくのが賢明でしょう。遺言書があれば、故人の意思を尊重した遺産相続ができるからです。

ただし注意しておきたいのが、故人の配偶者や子、親が存在するケースでは、「遺留分(民法で認められた最低限の相続財産の取得分)」があるため、遺言書に記した分け方が認められるわけではないということ。

わかりやすくいうと、「配偶者や子、親へ相続財産はのこさず、自分のお世話になった人に全て渡す」と遺言書に記載しても、遺留分を主張されれば、それは叶わないということです。面倒事をのこさないためには、その点を配慮して遺言書を作成するようにしましょう。

民法で決められた法定相続人が存在しない(存在しても何らかの事情で相続しない)ケースでは、遺言書で指定されている人や債権者がいないときには、内縁関係にあった妻、事実上の養親子、報酬以上に献身的に尽くした付添看護師といった「特別な縁故」があった人が財産をもらえる可能性があります。

遺言書がなかったり、債権者や特別な縁故者が財産分与の申し立てをしない場合などは、最終的におひとりさまの財産は国庫に帰属することになります。

「遺言書を書いておけば大丈夫」では認識が甘い!?

「遺言書を書いておけば大丈夫」では認識が甘い!?

民法で定められた正式な遺言書には、(1)自筆証書遺言、(2)公正証書遺言、(3)秘密証書遺言の3種類があります。

(1)自筆証書遺言

遺言者が全文、日付、氏名を手書きして、押印することが原則となっていますが、専門家が立ち会わなくても作成できることから、書式や内容などに関して遺言書としての法的な効力が認められないケースが出てきます。

(2)公正証書遺言

作成時には公証人という専門家が関与するので、遺言書の効力が認められないことはまず考えられませんが、手続きに手間や費用もかかるのが難点です。

(3)秘密証書遺言

その名の通りで、遺言の存在はしってもらいつつ、内容は秘密にできるのがメリットですが、専門家がその内容をチェックしないことや、公証役場がその原本を保管してくれないことが不安材料です。

さらに注意しておくべきは、正式な遺言書で法的に効力を発揮するのは「財産の相続(分割)」に関する部分に限定されることです。つまり、葬儀やお墓に関する希望、死後のさまざまな手続き(死後事務)に対する自分の意向については、遺言書とは別に準備しておく必要があります。死後事務は、エンディングノートにできるだけ詳しく書き込んでおくのが望ましいでしょう。

ただし、エンディングノートも法的に効力を発揮するものではありませんから、できるだけ早いうちに死後事務手続きを代行する第三者を選定し、しっかりと「死後事務委任契約」を結んでおくことがより万全な備えといえるでしょう。

おひとりさまが終活で手配しておくべき6つのこと 

おひとりさまが終活で手配しておくべき6つのこと 

相続だけでなく、自分の死後には数多くの手続きが待ち受けています。のこされた人に迷惑をかけたくない、という気持ちがあるなら、以下の6つのポイントに関して今のうちにきちんと手を打っておきましょう。

1.    死亡届など役所への提出
2.    葬儀の手配・執行
3.    納骨・埋葬
4.    電気・ガス・水道・電話、クレジットカードなどの精算・解約、デジタル遺品の処分
5.    家財の片付け・形見分け
6.    遺産の承継

1.死亡届など役所への提出

死亡届の提出や、戸籍関係の手続き、健康保険や年金の資格抹消申請など、役所への事務手続きはいろいろあります。これらは自分ではできない手続きですから、誰に届け出を頼むのか、事前に決めておきましょう。

2.葬儀の手配・執行

火葬の手配や、葬儀をするならばどのような葬儀にしてほしいかなどの希望もエンディングノートにできるだけ具体的に書き残しておくことが大事です。どの程度の予算で行い、誰に参列してほしいのかも、はっきり記しておきましょう。

3.納骨・埋葬

葬儀の手配・執行と同様です。どのように埋葬してほしいのかなど、生前にきちんと自分の意思を記しておくことで、のこされた人の負担を軽くすることができます。

4.電気・ガス・水道・電話、クレジットカードなどの精算・解約、デジタル遺品の処分

単なる事務的な処理と思いがちですが、多岐にわたる上、精算をめぐって金銭も絡んでくるので、誰にどのように対応してもらうのかをきちんと決めておきましょう。また、ツイッター(Twitter)やフェイスブック(Facebook)、インスタグラム(Instagram)などのSNSも、死後に削除作業を代行してもらえる人を確保しておくと安心です。

5.家財の片付け・形見分け・処分

これは想像以上に重労働で時間も要します。まずは元気なうちに自分自身で終活片付けを進めておくことが大事です。自分の死後、誰にどのような形で頼むのかを明確にしておきましょう。

6.遺産の承継・処分

複数の法定相続人が存在する場合は、遺産の規模を問わず、法的に認められる正式な遺言書を作成しておくのが理想的でしょう。前述の通り、遺言書が全面的に認められるとは限りませんが、自分の意思を明らかにしておくことで、のこされた人も無駄な争いをせずに済むかもしれません。

さらに、ペットを飼っている人は、自分の死後、誰に引き取ってもらうのかについて、あらかじめ決めておくことが重要です。可能なら、生前からペットの引き渡しを行うなど、安心して託せる環境を作ることも大切です。

おひとりさまは「死後事務委任契約」という選択肢も

おひとりさまは「死後事務委任契約」という選択肢も

自分の身の回りの死後手続きは、できるだけ気心の知れた人に託したいと思うのが自然な感情でしょう。しかし、うかつに家族や友人を代行者に選んでしまうと、大きな負担をかけてしまうことにもなりかねません。

大切な家族や友人だからこそ、迷惑をかけず円滑に手続きを進めたいと考えるなら、中立的な第三者に依頼し、生前にきちんと死後事務委任契約を結んでおくのが賢明でしょう。この契約は、委任者が亡くなった後のさまざまな手続き(死後事務)を特定の第三者(個人もしくは法人)に代行してもらうという取り決めです。

死後事務委任は、遺言と異なり、死後のさまざまなことを取り決めることができます(ただし財産以外のことに限る)。葬儀はどこで行いたい、埋葬はどうする、自分のペットはこの人に引き取ってほしいなど、事前に決めておくことができます。そして自分の死後、受任者が速やかに死後事務を開始します。個人間で委任する場合は、しっかりと希望を書き留めた上で伝えておきましょう。

死後事務委任契約の相談先は?

死後事務委任契約を結ぶ際に、委任先として税理士や司法書士と契約することもできますが、専門としている事務所が少なく相談しづらいことや、委任先によって料金が大きく異なるため、十分に検討する必要があります。

また葬儀会社など、死後事務業務を取り扱っている業者と契約することもできます。しかし、専門分野が各事業者で異なるため、複数の事業者に依頼する必要があるデメリットもあるでしょう。

一部の金融機関では、死後に発生する事務手続きをトータルでサポートするサービスを提供しているところもあります。例えば、三井住友信託銀行の「おひとりさま信託」であれば、死後事務を包括的に代行する一般社団法人を紹介してもらえます。

頼る相手がいない、また家族に迷惑をかけたくないと思っているおひとりさまは、自分の死後手続きのことを生前からしっかり考える必要があります。「死後事務委任契約」を結ぶ、という選択肢もあることを知り、早いうちに手を打っておけば、もしものことを考えてやみくもに不安を抱くこともないでしょう。

 

■記事監修:勝猛一さん
かつ たけひと 司法書士 「勝司法書士法人」代表。相続・遺言サポートオフィス「ゆずりは」運営他。遺言、相続など終活のプロフェッショナル。YouTubeチャンネル「勝 司法書士法人勝猛一」で終活情報を発信しています。著書に『事例でわかる 任意後見の実務』(日本加除出版)

※この記事は2021年9月の記事を再編集をして掲載しています。

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