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- 阿部絢子さん「家族に頼れないから生前契約をします」
終活では、誰かに何かを託す事柄が必ず出てきます。その際、独身だったり家族に先立たれている場合、どう対策を立てればいいのでしょう。自身もずっと一人暮らしを続けている生活研究家の阿部絢子さんに終活について話を伺いました。
阿部絢子(あべ・あやこ)さんのプロフィール
あべ・あやこ 1945年、新潟県生まれ。共立薬科大学卒業。薬剤師の資格を持ち、洗剤メーカー勤務後、生活研究家・消費生活アドバイザーとして活躍、シニア女性誌などでの生活アドバイスに定評がある。著書に『ひとりサイズで、気ままに暮らす』(大和書房刊)、『おひとりさまの老後を楽しむ処方箋』(主婦の友社刊)などがある。
自分のことは最期まで自分で後始末をつける
生活研究家、消費生活アドバイザーとして、執筆を中心に幅広いメディアで活躍し続けている阿部絢子さん(76歳)。「弟と妹のきょうだい3人が全員ひとり暮らしで、誰一人子どももいません。頼れる親族がいませんから、自分のことは最期まで自分で後始末をつけようと決めて生きています」
『ひとりサイズで、気ままに暮らす』や『おひとりさまの老後を楽しむ処方箋』などの著書を通じて、一人でも老後を楽しく快適に暮らす方法を伝授する阿部さんが、終活を強く意識したのは2004年頃のこと。
「私の友人であり、先輩が、とても元気だったのに旅先で突然、脳幹出血で倒れたんです。その一報を聞いて、ドキ~ッ!として、不安になって。自分がそうなったらどうしようと考え、2006年に“願い書”という形で延命措置など病についての対処、財産の希望などを手書きしました」
頼れる親族がいないからこそ、突然の病気や万一の場合に周囲に気持ちよく対処してもらうためには、「今のうちにできることはやっておく方がいいと考えた」と言います。阿部さんの終活は、伝えたいことや希望を「願い書」という形で書くことから始まったといえるでしょう。
エンディングに向け、伝えたいことを「願い書」に記す
「願い書」は、法的な拘束力を持つ遺言書ではありません。突然の病気や万一の際に備えて、阿部さんが伝えたいことを手書きしたものです。
例えば、病気の治療については、「75歳を過ぎ、後遺症が大きく残る、あるいは回復不可能と判断された時点で、すべての延命治療を拒否します。認知症、がん、リウマチなどでも、主体的には自然体治療に任せることにします」などの希望が書かれています。
最初に「願い書」を書いた4年後に、阿部さんの母親が熱中症で倒れるという事件が起きました。それがきっかけとなり、葬儀の項目を加えて書き直したと言います。
「葬儀については、『公的後継人に任せますが、私は仏教徒なので、仏教式でお願いします』と記入しました」
また、「墓の所在地は◯◯です。連絡をとり、骨を納骨して下さい」などの情報も書かれています。「最期のことを書いたら、なんだか気持ちがすっきりしました」と阿部さん。その後も、時々見直して、更新することもあるそうです。
とはいえ、いざというときに「願い書」を見つけてもらえなければ、意味がありません。
「権利書や契約書などの重要書類をまとめたファイルに『願い書』を入れ、願い書を書いていることや、置き場所を近親者に伝えました。『願い書』をコピーしたものもバッグの中に入れています」
元気なうちに、プロに死後の手続きを任せる契約を結びます
「『願い書』は、最期の時をきちんと受け入れるために作っています。自分の人生を見つめ直す意味でも、一度記入してみることをおすすめします」と阿部さん。
また、「願い書」を書こうと考えた理由の一つに、どんなに周囲に迷惑を掛けたくないと思っても、「死後の手続きだけは自分ではできない」こともあったそうです。
自分に万一のことがあった場合、死亡届けの提出や葬儀の準備と実施、病院代の支払い、社会保険関連の届出事務など、さまざまな、しかも手間のかかる事務手続き(死後事務)が発生します。
「一人暮らしの私は、『誰に託すか』が大きな問題。一番託したいのは、死後の事務手続き。自分で予約してできるならしますが、無理なので(笑)。最初は親戚筋の子に託そうかと思いましたが、彼女も激務の人生で、私のことまで頼めません」
あれこれ情報を集めて検討した阿部さんが出した結論は、死後の事務手続きを、お金を出してプロに任せること。「元気なうちに生前契約を結ぼうと思っています」と話します。
「結論を出したので、もうこの道をいけばいい! 迷うことなくまっしぐらに進むだけです」
撮影=元木みゆき
※この記事は、雑誌「ハルメク」2020年9月号を再編集しています。
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