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- 生前整理実践編1|樋口恵子さんの合理的な終活片付け
「片づけは人生最期の身だしなみ」と話す評論家の樋口恵子さん(取材当時・87歳)。「どう片付けるかは人それぞれ。“自分らしく”でいい」生前整理の心得や、片付けられない物の対処法など、自ら実践する整理術を教わりました。
樋口恵子さんのプロフィール
樋口恵子さん
ひぐち・けいこ 1932(昭和7)年、東京生まれ。56年東京大学文学部美術史学科卒業。評論家。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長。現在も講演、執筆活動を精力的に行う。『その介護離職、おまちなさい』(潮出版社刊)『老ーい、どん! あなたにも「ヨタヘロ期」がやってくる』(婦人之友社)など著書多数。
どう片付けるかは人それぞれ。“自分らしく”
亡き夫と建てた築40年の家を、樋口恵子さんは2017年の85歳のときに建て替えました。
「引っ越しを機に、山ほどある蔵書を片付けましたが、これが大変。一冊ずつに過去を思い出すのです。無名だった私に依頼が来て、喜び勇んで資料を集め、がんばっていたあの頃、子どもは5歳……なんて思っていると、胸が怪しくも騒ぎ、涙がこぼれそうに。その涙を3重のマスクでぬぐい、本と決別をしました。結局減らせたのは4分の1ほど。片付けきれなかった本は処分費用を遺産に上乗せして、後は娘に任せることにしました」
人は誰でも、死後は誰かの世話になるものです。「ただ、今は家族の人数が少なくなり、遺族が一人ということも。自分が長生きすれば遺される家族も年を取りますから、数少ない老いた遺族に負担をかけ過ぎないようにするのが死んでいく者の最期の身だしなみだと思うのです。どう片付けるかは人それぞれ。“自分らしく”でいい。ただし最低限、お金の始末などは、遺された人が困らないように方針を明記しておくつもりです」
また、スカーフやアクセサリーは、お世話になった人へ形見分けしたいと語ります。「一人娘に任せるには負担が大きいので、日頃から親しくし、私より10歳ほど若い親戚や仕事仲間3人に声をかけて“形見配布委員会”を発足しました。部活動みたいで楽しいですよ。慰労金も一緒に残すので、集まるたびに食事でもして。こうして縁をつないでもらえたらうれしいですね」
樋口恵子さんの生前整理の心得
優先順位は片付けより食べること。より楽しい今と健康を大事にしています。83歳を過ぎた頃、料理をすることが突然嫌になり、食欲もわかず、栄養失調になった樋口さん。「終活で大事なのは今をしっかり生きること。片付けより食べることを優先し、健康維持を」
また「理想の終(しま)い支度をした人を目標に持つことが大切」と話します。晩年、小作人の一人に至るまで形見を名指しで遺したというイタリアの音楽家、ジュゼッペ・ヴェルディが、樋口さんの人生の終い方のお手本。「私もお世話になった人へスカーフなどでお礼を伝えたいです」
樋口恵子流、片付けられない物の対処法
自分で片付けきれない物は、処分費用もしっかり遺す
引っ越しを機に蔵書の4分の1を減らしたが、後は家族に委ねる予定。「娘には処分費用を遺産に上乗せして遺すからそれで捨てて」と伝えています。
雑貨・アクセサリー
家族の趣味や気持ちは変わるから、相続する気があるか、ときどき点検した方がいいです。かつては“おばさんと若者”だった母子関係も今では“おばさん同士”に。「年とともに趣味や気持ちは変わるので、1年おきに形見分けの話をし、娘の相続意欲を確認しています」
家
人も老いれば家も老いる。毎月1万円ずつでも修繕費の積み立てをしておくべきです。人の寿命が家の寿命を追い抜き、住宅の修繕や建て替えを迫られるのが築40年以上のとき。古い家は住み続けるにせよ子どもに引き継ぐにせよ、思わぬ出費が予想されるので少しずつでも積み立てておくべき。
人に希望を伝えるときのポイント
形見分けは複数人にお願いし、一人の負担を減らすように樋口さんは考えています。長生きすれば家族も年を取り、形見分けをする側も一人では心細く、二人では意見が割れるので、3人に依頼。「“形見配布委員会”と名付け、慰労金も出す約束をしています」
次回は、生前整理実践編2|手紙、写真、車、着物の手放し方を紹介します。
取材・文=大門恵子、野田有香(ともにハルメク編集部)、撮影=門間新弥
※この記事は「ハルメク」2019年9月号に掲載した記事を再編集しています。
■もっと知りたい■
- 生前整理のために、物を片付ける5つのポイント
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- 生前整理実践編2|手紙、写真、車、着物の手放し方
- 生前整理実践編3|ごんおばちゃまの1日30分片付け
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