家族に迷惑をかけないために、自分で準備すべきこと

終活とは?やっておかないと大変!7つの家族トラブル

公開日:2020.05.17

更新日:2023.06.05

あなたの死後、その死を悲しむ時間もなく、家族はお葬式の手配をしなければいけません。そしてお葬式を終えたら、役所、年金事務所、法務局、税務署などを回り数々の手続きを行います。家族の手間を減らす、事前の準備「終活」をしておきましょう。

事前の準備「終活」
終活とは?やっておかないと大変!7つの家族トラブル

終活とは?

終活とは

「終活」とは、死後に必要になる手続きや片付けを行い、あらかじめ用意しておくことです。自分のため、家族のために、元気なうちから少しずつ準備を進めるのが、当たり前になっています。

誰でも、今のうちから終活をやっておくといいことがたくさんあります。例えば不要な保険や口座を整理することによって、老後のお金に関する見通しが見えてきます。各種の手続きに必要な書類も、本人が集めて家族に伝えておけば家族も安心です。

今後の人生を、自分も周囲もスッキリ幸せに暮らしていくために、まずは終活で行っておくべきお金の手続きについて知りましょう。

終活で押さえておきたい、死後に必要な手続きとは?

終活で押さえておきたい、死後に必要な手続きとは?

「死は自分だけで完結することはできません。死んだら必ず、遺された人の手を借りて行うことがあります」と相続・終活コンサルタントの明石久美(あかし・ひさみ)さん。

ファイナンシャルプランナーの畠中雅子(はたなか・まさこ)さんは、「『家族に迷惑をかけたくない』と言う人は多いですが、死後何が行われるかを調べて準備している人は少ないです」と言います。

遺された家族は、葬儀を行い、役所の手続きや相続に関する手続きなどを行います。必要書類を集め所定の窓口で行う手続きは、煩雑で家族には初めてのことばかり。「迷惑」とまでは思わないにしても、「手間」「負担」であることには違いありません。

ただし、生前にできることをあなたが準備しておけば、死後の手続きにかかる家族の手間は減らせます。

「『手続き』には大きく2つあります。遺産分割や納税など相続に関する法的な手続きと、公的な年金・健康保険や故人が生前に利用していたものの解約・返却・整理に関する社会的な手続きです」(明石さん)

例えば、財産の確定のために預貯金額を把握するなら、口座の数や通帳の場所がわからないとなりません。本人ならすぐにわかる口座の数や通帳の場所も、家族が探し出すとなると大変です。年金手帳や保険証などの返却や、未払いの税金の支払いなどでもそうです。「ですから、死後に必要な書類や情報は必ず整理しておくこと」と明石さん。2019年7月から改正相続法の一部が施行されているので、それも確認しておきましょう。

葬儀、お墓の準備も忘れてはいけません。「あなたが望む送られ方と、遺された家族が送りたいかたちは違うことがあります」(明石さん)

終活の始めの一歩におすすめなのが、書き出すことです。書くことで自分自身がこれからやるべきことを整理でき、遺された家族にも貴重な情報となります。「家族が行うことは多くあるため、その際に困らないよう、本人しかわからない情報をあえて伝えておくことが大切です」と明石さんは言います。

畠中さんは数か月前、左手に原因不明のしびれを感じました。

「脳に問題があって意思を伝えられなくなったら大変なので、資料をすぐに取り寄せ、一気にお墓を決めました」。畠中さんは気がかりだったお墓の問題がクリアできてよかったと言います。「判断する行為は大変で、気力も体力も必要。元気なうちに行う方がはかどります」(畠中さん)

死後の準備を早めに行うと、家族は助かり、自身の終活に関する心配事も解消されます。

 

死後はどんなことが行われる?

まずは、死後に行われることを、時系列で追って把握していきましょう。「ハルメクはる子さん」を例にしてお伝えします。どんな終活をして準備をしておけば、家族の手間を避けられるのでしょうか。

ハルメクはる子さん

ハルメクはる子さん
享年68。夫を10年前に亡くし、35年前に買った家に未婚の長男ハル男と暮らしていました。しっかり者の長女ハル美は1児の母です。

 

【死後の手続き1】葬儀

【死後の手続き1】葬儀

死後すぐに、葬儀社を決定します。このとき情報を伝えておかないと、死を悼む間もなく、次々と判断を求められることに。

突然訪れた、はる子の死。本人は「縁起でもないから」と葬儀を検討していなかったので、遺された家族はおおわらわ。娘のハル美は、病院から紹介された葬儀社と打ち合わせをします。「お兄ちゃん、菩提寺はどこ? 連絡先わかる?」と言うハル美に、「お母さんのジム仲間も葬儀に呼ぶの?」とハル男。葬儀社からの質問に二人して迷うことばかりです。

 

【死後の手続き2】役所の手続き

【死後の手続き2】役所の手続き

年金手帳や健康保険証の返却と手続きをする必要があります。書類の保管場所や、内容がわかるようにしておかないと、書類がそろわず期限内に手続きできない! ということになりかねません。

返却する年金手帳や健康保険証を探すハル美。「どこにしまっているのよ!?」。ようやくの思いで見つけても、仕事が忙しくてなかなか手続きができません。窓口に行き、年金手帳を返却すると、未支給年金の申請ができるとのこと。必要書類や印鑑などを持参していかなかったため、「また出直さなければいけないの……!?」とハル美は肩を落とします。

 

【死後の手続き3】埋葬

【死後の手続き3】埋葬

葬儀終、一般的には四十九日や一周忌の法要のタイミングで埋葬が行われます。お墓をどうするのか、事前に親子で話し合っておかないと、遠いお墓に、家族は通い続けることになりかねません。

「お母さんは、テレビで見た『散骨がいい』って言っていたよね」とハル美。「でも僕は、手を合わせられるところがないと嫌だな」と言うハル男。結局、判断がつかずにはる子が管理していた遠い故郷の山の上にある先祖代々のお墓へ埋葬することに。そして二人は、その後何十年もお墓参りで通うことになるのでした。「私がちゃんと伝えておけば、通わなくて済んだのに……」と天から思うはる子でした。

 

【死後の手続き4】相続

【死後の手続き4】相続

相続人と財産の確定、遺産の分割、相続税の申告・納税を行う必要があります。
主に死後3か月以内の相続放棄・限定承認、4か月以内の準確定申告、10か月以内の相続税の申告・納付が発生します。事前に、相続対策を考えておかないと、仲良し家族のはずが“争”族に発展する、なんてことも。

夫の死後、遺産をほぼすべて受け継いだはる子でしたが、子どもたちにどう遺すかを考えていませんでした。未婚のハル男は、今も実家暮らしです。「家はお兄ちゃんのものだから、預貯金は全部もらっていいよね?」とハル美。「マンション買うときに援助を受けていたじゃないか」とハル男。仲良しきょうだいの間に険悪な空気が……。これからきょうだいで行っていく相続手続きが大変になりそうです。

 

【死後の手続き5】名義変更

【死後の手続き5】名義変更

家の土地、預貯金の名義を変更します。不動産相続の場合、登記の内容次第では不動産処分の手続きが3倍になることも!

一人娘だったはる子の実家には山があったことが発覚! 「山林は維持にお金がかかるから処分しよう」とハル美。そこで調べてみると、山の名義人は20年前に亡くなった祖父のハル蔵でした。「処分するには、おじいちゃん→おばあちゃん→お母さんの相続人を確定させてから、お母さんの名義に変更したのちに僕の名義に変更しないといけないんだって」とハル男。売ったら二束三文の山も、手続きだらけです。

 

【死後の手続き6】遺品の整理

【死後の手続き6】遺品の整理

遺された物の整理・処分をする必要があります。親の家の片付けは大変! 自分で整理しておかないと、思い入れのある物だけに家族では、何年も整理が終わらないなんてことも。

はる子の死から2年。ハル男の転勤が決まり、実家を処分することに。手つかずの遺品整理を行います。「せいのっ!」と力を合わせて大きな家具を移動します。ハル美は、「どれもお母さんらしくて遺す写真を選べないね」と整理しながら振り返ると、「片付けられないなあ」と母親を思い出したハル男が涙を流していました。ハル美が何度実家に通っても、片付けの終わりは見えません。

 

【死後の手続き7】お墓の管理

【死後の手続き7】お墓の管理

数十年にわたり、管理料の支払いや法要を行います。遠い場所にお墓がある場合、お墓参りのために遠方まで通う必要もあります。そこで墓を、近場の永代供養墓に移す「墓じまい」を行うという解決方法もありますが、費用を別途考えておかないと「墓じまい」のお金の工面もできない!なんてことも。

はる子の死から30年。「お父さんとお母さんは遠い田舎のお墓に入ったから、お墓参りが大変だね」とハル美。「最近は僕らも足腰が弱って、年に1度来られるかどうか」。「このお墓を子どもに継がせるのは、もう無理だなあ。墓じまいしなきゃ」というハル美に、ハル男は言います。「永代供養の墓に移して、そこで弔ってもらおう。今までの墓所を更地にする費用もかかるし、二人で工面しないとだね」

死後、長い時間にわたって、遺された家族はいろいろなことを行います。今のうちに、できる用意をしておきましょう。

 

教えてくれた人

明石久美さん
あかし・ひさみ 千葉県松戸市在住。明石シニアコンサルティング代表、相続・終活コンサルタント、セミナー講師、行政書士、CFP。身内が葬祭業で自身が相続を行っていることから、葬儀やお墓を含めた生前対策や死後の手続きに詳しい。著書に、『死ぬ前にやっておきたい手続きのすべて』(水王舎刊)など。

畠中雅子さん
はたなか・まさこ ファイナンシャルプランナー(CFP)、FP技能士1級、マネーエッセイスト。新聞、雑誌、インターネットなどに多数の連載を持つ他、セミナー講師、講演、個人相談、金融機関へのアドバイザー業務、金融関連の調査業務、公的機関のアドバイザー業務なども行う。


取材・文=井口桂介、長倉志乃(ともにハルメク編集部) イラストレーション=伊藤ハムスター※この記事は2019年9月号の雑誌「ハルメク」を再編集しています。


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