50代女性のセックスレス、性交痛を解消するには?

閉経・更年期のセックス事情!疑問や悩み&治療と工夫

三橋裕一
監修者
ひなたクリニック
三橋裕一

公開日:2024.03.06

閉経前後(更年期)は女性の体に大きな変化が起こる時期。セックスにおける性交痛やパートナーとのコミュニケーション不足、膣萎縮・乾燥に悩む人は少なくないようです。50代女性の性生活事情や悩み解消のための治療・工夫について詳しく解説します。

閉経とは:平均年齢は約50歳〜51歳

閉経とは、「月経が永久に停止した状態」のことです。1年以上月経が来ない状態が続いたときに、閉経と判断できます。

いつ閉経になるかは個人差があり、日本人の閉経平均年齢は約50歳〜51歳です。

閉経前の5年間と閉経後の5年間を合計した10年間の期間を更年期といい、この時期には閉経に向けて女性の体にさまざまな変化が起こります。

変化に対応するためにも、自分の体について知っておくことが大切です。

閉経後のセックスについて

閉経後のセックスについて

女性ホルモンが変動する閉経前後には、女性の体に大きな変化が起こります。その影響もあり、夫婦間の関係やコミュニケーション、セックスに悩む女性は少なくないようです。

ここからは、閉経後のセックスについて解説します。

50代女性のセックス頻度は?

気になりはするものの、セックスの話題はデリケート。なかなか友人や知人に尋ねることができないという人も多いです。

そこでここでは、Japan Sex Surveyが公表した『日本人のセックス経験・頻度・目的の現状 【2020年】』の調査結果を見てみましょう。

調査データによれば、50代女性の1年間のセックス頻度は「1年以上なし」と回答した人が65.8%と最多。次いで「年数回(13.7%)」、「月2〜3回(8.2%)」、「月1回(8.1%)」という結果が出ています。

閉経後でもセックスは可能?何歳までできる?

閉経前後は子宮や膣(腟)の萎縮によって性交痛が起こる人も多いものの、セックスが不可能になるということはありません。

何歳までセックスができるかは一概には言えないものの、中には70代を過ぎてもセックスを継続中というデータもあります。

閉経後に性欲は強くなる?弱くなる?

閉経後に「性欲が強くなった」という人もいれば、逆に「性欲が弱くなった」という人もいるようです。

閉経後に性欲が強くなる人の場合、女性ホルモンの減少によって相対的に男性ホルモンが増加し、性欲向上につながっているのではないかと考えられています。

また、閉経によって「避妊に失敗してしまうかも」といった不安がなくなることも、性欲が高まる理由と考えられています。

反対に、閉経後に性欲が弱くなる人は、エストロゲン減少による膣の乾燥・萎縮によって性交痛が起こり、それがセックスへの意欲低下につながっている可能性が考えられるでしょう。

閉経後のセックスで避妊はいつまで必要?

完全に閉経していれば、避妊をしなくても妊娠することはありません。しかし、実は生理不順が起こっていただけで、閉経していなかったという可能性も考えられます。

厚生労働省が公表したデータによれば、令和3年度の50歳以上の人工妊娠中絶件数は19件となっており、完全に閉経したと判断できるまでは、コンドームや子宮内避妊器具(ミレーナ)などによる避妊が必要です。

閉経後のセックスで感度の変化はある?

閉経前後では、骨盤底筋が衰えることで膣の感度が低下することも考えられます。

しかし、セックスの感度はもともと個人差があるもの。セックスに慣れてリラックスしたり、快感を得られるポイントを理解したりと、身体面・心理面が影響します。

閉経前後・更年期に起こる膣周辺の変化

閉経前後・更年期に起こる膣周辺の変化

更年期(閉経前後)というと、ホットフラッシュやのぼせ、疲れやすさ、イライラや不安感といった症状が知られていますが、膣にも変化が起こります。

45歳以降に問題となることの多い女性の膣周辺のトラブルは、主に以下の症状の3つです。

  • 性器症状
  • 性交症状
  • 尿路症状

これらの症状は総称して「閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)」と呼ばれます。ここからは、閉経前後・更年期に起こる膣の変化について詳しく見ていきましょう。

膣の潤いや分泌液の減少による乾燥・かゆみ

女性ホルモンのエストロゲンには、粘膜や皮膚のコラーゲンを増加させ潤いを与える作用があります。

更年期にエストロゲンの分泌量が低下すると、膣の粘膜を保護する分泌液が減り、膣が乾燥しがちに。また、膣が萎縮しハリも失われてしまいます。

おりものの変化

閉経前後は、おりものにも変化が起こります。

女性ホルモンのエストロゲンは更年期に分泌が急激に低下し、 閉経後はわずかに分泌されるのみになりますが、これに伴いおりものの量も減少します。

おりものは自浄作用・膣内の潤いを保つといった役割を担っており、減少すると膣内で菌が繁殖しやすくなり、黄色いおりものが出ることも。

  • 水っぽくなった
  • 臭うようになった、臭いがうすくなった
  • 色が白くなった
  • 色が黄色くなった
  • 茶色いおりものが出る

また、上記のような変化が起こることもあります。

不正出血を伴うとおりものが茶色くなることもあり、なんらかの病気が原因でおりものが変化している可能性も。閉経前後に気になるおりものの変化があった場合は、婦人科で相談してみましょう。

膣の形状変化(膣壁の弾力低下・小さくなる)

膣は筋肉組織で構成されているため、しばらくセックスや膣への挿入を伴うマスターベーションをしていないと、膣の筋肉が萎縮して硬くなってしまうことがあります。

また、久しぶりにセックスをする場合、心理的な理由から膣が萎縮してしまうこともあります。

膣が炎症を起こしやすくなる

潤いや弾力が減り、膣の乾燥や萎縮が起こると、かゆみやヒリヒリ感、炎症、感染リスクが高まります。潤いが失われると膣の粘膜が傷つきやすくなるため、そこから感染が起こり、萎縮性腟炎になることも。

膣の違和感や性交痛、排尿時の痛み、膣や外陰部に熱感がある場合は炎症を起こしている可能性があるため、早めに病院を受診しましょう。

大陰唇の萎縮やたるみが起こる

大陰唇とは、膣のまわりに左右対称についた厚い皮膚のひだのことです。脂肪でふっくらとしており、生殖器や尿道の保護、セックスの時の衝撃から守る働きがあります。

閉経後は大陰唇に萎縮やたるみが起こり「大陰唇から小陰唇がはみ出して見える」といった女性器の見た目の変化を感じる人もいます。

セックス中に出血が起こりやすくなる

弾力や潤いが低下し、乾燥して傷つきやすくなった膣は、セックス中にも痛みや出血が起こりやすいです。

痛みや出血があるとセックスを楽しむことが困難になってしまうため、潤滑ゼリーの使用やホルモン補充療法(HRT)などの治療を検討するといいでしょう。

尿路症状が増える

エストロゲンの減少は、尿路機能にも影響を与えます。頻尿、排尿障害、尿失禁、膀胱炎を繰り返しやすいなどの症状が起こることもあります。

閉経前後・更年期の女性に多いセックスに関する悩み

閉経前後・更年期の女性に多いセックスに関する悩み

ここでは、閉経前後・更年期の女性に多いセックスに関する悩みについて解説します。

性交痛

閉経前後の女性に多く見られるのが、膣の潤い低下による性交痛です。痛みが起こることで快感や安らぎを得ることが難しくなり、セックスそのものが苦痛になってしまうことも。

しかし実は、セックスのときに痛みを感じているのは50代前後の女性ばかりではありません。

Japan Sex Surveyのデータによれば、20代が74.1%、30代が63.5%、40代が63.9%と、若い女性もセックスに痛みを感じていることがわかります。(50代女性は59.2%)

一方、「セックス(性交痛)の痛みを和らげるために、潤滑ゼリーを使用したことがありますか?」という質問では20代が31.8%と高く、若い世代ほど潤滑ゼリーを使用している傾向があります。

50代女性は10.1%で、20〜60代で最も少ない割合でした。

疲れ・体力の低下

50代になると、自分の仕事のことや家のこと、親の介護のことなど、忙しさや疲れから「セックスどころではない」という状況になってしまっていることも少なくないでしょう。

年齢を重ねると体力も低下するため、セックスすること自体が疲れると感じる人もいます。

セックスのきっかけづくり

「セックスレスを解消したい」とは思っても、「家族」としての時間が長くなったことによる恥ずかしさや夫婦間のコミュニケーション不足など、セックスのきっかけづくりに悩んでいる人も少なくありません。

閉経後のセックスを楽しむためには?治療・工夫

閉経後のセックスを楽しむためには?治療・工夫

ここでは、閉経後のセックスを楽しむための治療や工夫について解説します。

病院での治療

膣の萎縮や乾燥といった不快感は、病院で治療できます。さまざまな選択肢があるため、信頼できる医師に相談して、自分に合った方法を見つけてみましょう。

  • ホルモン補充療法(HRT)
  • 腟坐剤(エストリオール腟錠など)
  • エストロゲンクリーム
  • 婦人科形成
  • レーザー治療(モナリザタッチ、インティマレーザー、ヴィーナスHIFUなど)

潤滑ゼリーや膣用保湿剤

根本的な治療法ではないものの、性交痛の改善には潤滑ゼリーが効果的です。

また、デリケートゾーンの乾燥は臭いやムズムズ感、かゆみにつながるため、乾燥が進む閉経前後からは、デリケートゾーンもしっかり保湿するのがおすすめ。

今はデリケートゾーン専用ケアオイルなど、さまざまな商品が登場しています。日常的にケアすることで、不快感や悩みを軽減できるかもしれません。

骨盤底筋体操(ケーゲル体操)

定期的な骨盤底筋体操(ケーゲル体操)は、膣への血流を増加させて弾力を高め、膣萎縮のリスクを減らせます。

骨盤底筋を鍛えると、女性に多く見られる腹圧性尿失禁(尿漏れ)予防・改善にもなるため、ぜひ取り組んでみましょう。

セックスの工夫

セックスを楽しむためには、夫婦間のコミュニケーションが非常に重要です。

セックスについての悩みや不安があればパートナーに自分の気持ちや状況を伝え、解決策について話し合い、お互いが満足できる方法を考えてみましょう。

挿入にこだわらない、「自分たちなりのセックス」を試してみるのもおすすめです。

セルフプレジャー

近年のフェムテックのトレンドとともに、セルフプレジャー(マスターベーション・オナニー)について、女性誌などで特集されることも多くなってきました。

セルフプレジャーはセルフケアの一つと考えられるようになってきており、膣に適度な刺激を与えることで血流を促し、膣粘膜の潤い維持につながる効果が期待できます。

閉経後の体の変化に合わせた対策を

閉経前後はエストロゲンの減少によって膣の乾燥・萎縮が起こるため、性交痛のような不快感に悩む女性も少なくありません。しかし、潤滑ゼリーといった自分で簡単にできる工夫や、クリニックでの治療法も数多く存在します。

痛みや不快感を我慢しているとセックスそのものが苦痛になってしまうため、自分の体の変化に合わせて工夫や治療を行ってみてはいかがでしょうか。

※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。

監修者プロフィール:三橋裕一さん

三橋裕一さん

1964年生まれ。福島県会津若松市出身で2007年に札幌でひなたクリニックを開業。産婦人科医の傍ら、総合格闘技のリングドクターとしても活動。趣味はお酒とバイクジムカーナ。利き酒師やフードマイスターの資格も保有。新事業の『内診台を使用したVIO脱毛』に日々奮闘中。

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