更新日:2023年02月24日 公開日:2023年01月23日

産婦人科医が教える正しいケア

デリケートゾーンの「ムズムズ&臭い」は乾燥が原因!

「最近デリケートゾーンのムズムズや臭いが気になるけれど、これって私だけ?」人に聞きにくい悩みですが、50代以降女性のアンケート では、実は多くの方が悩みを抱えていることが判明!不快を感じる理由、ケアの方法について、専門医に聞きました。

「ムズムズ&臭い」が気になるメカニズム

デリケートゾーンの悩みとして特に多く聞かれるのが、「ムズムズ」と「臭い」。その理由は「乾燥が原因かもしれません」と言うのは産婦人科医の石山尚子さん。

デリケートゾーンも乾燥する!?これまで思いもしませんでしたが……。

「自覚しにくい部位ですがデリケートゾーンも乾燥するのです。乾燥すると皮膚のバリア機能が衰え、そこに排せつや汗、下着のこすれなどが刺激となり、ムズムズしやすくなるのです」

では臭いについては、どうなのでしょうか?

「一つは、膣内の菌のバランスが崩れてしまうことです。通常、膣の中にはいい菌がいて湿った状態が保たれていますが、エストロゲンの分泌が少なくなると粘膜も弱くなって、いい菌が減ってしまうんです。そうするといろいろな雑菌が増えて、臭いの原因になります」(石山さん)

「二つめの理由として、臭いには乾燥も大きく関係しています。皮膚が乾燥して弱った状態だと、汚れは余計につきやすくなります。トイレットペーパーでゴシゴシ拭く人もけっこう多くて、紙がちぎれて残ってしまう人も多いです。そういった汚れが、臭いの原因になることもあります」

そうなんですね。では、どうしてデリケートゾーンが乾燥してしまうのでしょうか?

デリケートゾーン乾燥の原因は、卵巣機能の低下による女性ホルモンの乱れ

「閉経が近づき、女性ホルモン・エストロゲンの分泌が少なくなってくると、エストロゲンが司るさまざまな機能が働かなくなってきます」と石山さん。
    
「エストロゲンは皮膚や粘膜の水分保持力、皮脂の分泌などに作用するもの。閉経が近づくとエストロゲンの分泌は乱れ、それに伴い乾燥も感じやすくなります。閉経後はほとんど分泌がなくなってしまうので、全身が顕著に乾燥していきますが、デリケートゾーンも同じです。

大陰唇は若いときはふっくらしていますが、萎縮と乾燥により次第にたるんできます。小陰唇も、だんだん小さくなっていきます」

なるほど……。デリケートゾーンの乾燥は、閉経後を迎えた女性ならば誰もが抱えてしまう問題なのかもしれません。

それでも毎日元気に過ごすために、気がかりは払拭したいもの。今からできるケアはあるのでしょうか?

まずは正しく洗う。さらに「保湿」で潤い+保護!

「まずは“洗う”ことがケアの第一歩です。『お湯で流すだけでいい』という人もいますが、できれば洗浄料を使いましょう。お湯だけでは垢まで流せません。洗浄料も刺激の強いものだとピリピリしてしまうこともあるので、デリケートゾーン専用のものなど肌にやさしいものがいいですね」

「そしてもう一つ大切なことは、保湿です」と石山さん。

デリケートゾーンを保湿!それはかなり意外な情報です。

「みなさんよく『湿っぽいから保湿しなくていいんじゃないですか』とおっしゃるのですが、保湿はもちろん、保護するという意味も大きいんです。50代以降、乾燥によってデリケートゾーンのバリア機能も衰えてくるからです。保護すれば、汗、下着、おしっこなどの刺激から守ることができます。実際、保湿をするだけで、ムズムズや臭いの悩みがだいぶ軽くなりますよ」

デリケートゾーンを保湿……。なかなかイメージがつきにくいものです。さらに先生におすすめのケア方法を伺いました。

「保湿」にはオイルケアがおすすめ

「私がおすすめしているのは“オイルケア”。保湿し、さらに刺激から守る“保護”の役割もありますし、伸びがいいので複雑な形の外陰部も塗りやすいのもいいですね。

毎日の入浴後、膣のまわりをオイルでやさしくマッサージし、最後にお尻まわりまで塗ってあげましょう。慣れてきたら入浴前にも塗ると、オイルで皮脂汚れを落とすこともでき一石二鳥です」と石山さん。

オイルはどういったものがいいのでしょうか?

「繊細な部位なので、安心できる成分のものがいいですね。植物由来の成分で作られたボディ用のアロマオイルなど。今はデリケートゾーン用のオイルもたくさん売っているので、それらを選ぶと安心です。べたつく印象もありますが、専用のものは、さらっとした肌ざわりに作られていることが多いですよ」

先生いわく、保湿をするだけで劇的に変化が訪れるそうです。お話を伺って、今日からでもやらなければと思いました!

オトナ世代こそ“フェムテック”に注目してほしい

「実は50代以降のオトナ世代の方は、デリケートゾーンに触ったこともないし、膣の中に指を入れたこともない、どこが大陰唇で小陰唇か、わからないという方も多いんです。それは日本には長年、外陰部をケアした方がいいという習慣がなかったから。でも今は“フェムテック”という言葉があるくらい、そういったお悩みは“口に出していいのよ”という時代になっています」

フェムテック(Femtech)とは、Female(女性)とTechnology(技術)をかけ合わせた造語で、女性の健康にまつわるさまざまな悩みをテクノロジーで解決する製品やサービスのこと。女性がより元気に活躍できる世の中を目指して、近年広まりを見せています。

「ただし日本は遅れていて、デリケートゾーンにまつわるケア用品も最近ようやく増えてきたところ。悩みを放っておくと、日常生活を送るのが困難になるほど悪化してしまうこともあるんです。気になったら、産婦人科へ気軽に相談してほしいです。その際は女性の体の悩みについて積極的に診療している産婦人科を選ぶのがおすすめです」(石山さん)

今回は閉経後の女性へ向けてお話をいただきましたが、本当は保湿は、何歳からでも始めてほしいケアだとのこと。
「まだいいわ」と思わず、将来の快適な毎日のためにも、ぜひデリケートゾーンの保湿を始めてみてくださいね。

【医学監修】産婦人科医・石山尚子さんのプロフィール

いしやま・なおこ。日本産婦人科学会専門医。富山大学附属病院および関連病院勤務を経て2007年より女性医師・スタッフによる女性のためのクリニック、対馬ルリ子 女性ライフクリニック 銀座に勤務。21年より院長に。

取材・文=水野 愛(ハルメク 健康と暮らし編集部)

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水野 愛
水野 愛

2019年12月より「ハルメク 健康と暮らし」食品記事編集に携わる。好きなものは漫画・歴史・音楽・一人旅。特技は赤ちゃんをあやすこと。今の夢は、習い始めた三線で、沖縄のおばあ・おじいたちとセッションすること!

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