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医師監修│閉経後の茶色のおりもの・不正出血は要注意
更年期におりものが茶色い原因は?病気との関係と対策
横倉クリニック
横倉恒雄
公開日:2022.09.09
更新日:2024.04.10
更年期や閉経後におりものが茶色いのは、不正出血が原因です。更年期によるホルモンバランスの乱れ、生理前後、萎縮性腟炎や腫瘍といった病気など、原因はさまざまです。医師監修のもと、考えられる病気や受診の目安、対策やケア方法を解説します。
更年期におりものが茶色いのは不正出血によるもの
おりものは、体調や生理周期、年齢によって状態が変化します。そのため、自分の健康状態をチェックするバロメーターにもなるものです。
更年期に茶色いおりものが出るのは、不正出血が原因です。まずは、おりものと不正出血の概要と、不正出血でおりものが茶色くなる理由を解説します。
おりものとは?
おりものとは、子宮頸部や子宮内膜、膣から分泌される酸性の分泌物のことです。汚れの排出、子宮内にバイ菌が入るのを防ぐ、膣内部の潤いを保つなど、女性の体を守る役割を果たしており、女性にとって大切なものです。
おりものは量やにおいが気になることもありますが、個人差が大きいものです。また、風邪などで体の抵抗力が落ちるとデリケートゾーンに炎症が起きて、おりものの量が一時的に多くなったり少なくなったりすることがあります。
おりものは、生理周期によっても状態が変わります。生理が終わった直後はほとんどおりものが出ず、生理前には量が増えたり、においが強くなったりします。
また、年齢もおりものの変化に影響しています。おりものの量は20〜30代がピークで、40代になると女性ホルモン分泌の減少に伴って量が減り、閉経するとほぼ分泌されなくなります。
不正出血とは?
不正出血は、正しくは「不正性器出血」といい、月経時以外に内性器(卵巣、卵管、子宮、膣)や外性器(膣の一部、外陰部)から出血が起こることを指します。出血量の多い、少ないに関わらず、月経時以外に性器からの出血があれば、不正出血です。
ホルモン分泌の乱れによって起こる不正出血は「機能性出血」といい、病気が原因となって起こる不正出血を「器質性出血」といいます。
不正出血の血の色や出血量を見ただけでは、出血している部位や原因はわからないため、気になる不正出血が見られる場合は婦人科で診察や検査を受け、詳しい原因を調べることが大切です。
不正出血でおりものが茶色になる理由は?
血液は、出血後に時間が経って酸化すると、色が変化して茶色になります。つまり、茶色の血液は古く、新しい血液は赤いということです。
なお、出血量が少ない場合は、黄色っぽくなることもあるようです。
茶色いおりものの原因
更年期の茶色いおりものの原因には、ホルモンバランスの乱れや生理の影響によるもの、病気によるものが考えられます。
ここからは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
更年期や閉経によるもの(ホルモンバランスの乱れ)
更年期とは40代半ば~50代半ばの10年間のことで、閉経に向けて女性ホルモンの分泌量が減少していきます。これまで分泌されていた女性ホルモンが一気に減少するため、ホルモンバランスが崩れ、更年期症状が起こるのです。
不正出血は更年期に見られる症状の一つで、少量の血液が混じることで、茶色いおりものが出ることがあります。
また、更年期は生理の出血がダラダラ長引いたり、いきなり経血量が多くなったり、生理周期が長くなる・短くなるなどの月経異常が見られることもあります。
更年期の他にも、過度のストレスや過労、極端なダイエットによる栄養や摂取カロリー不足は、ホルモンバランスに影響を与えるため、注意が必要です。
生理前後
生理前は経血がおりものに混ざって茶色いおりものが出ることがあります。また生理後は、膣や子宮の中に残っていた血液が酸化して茶色くなり、これがおりものと混ざって茶色くなることがあります。
そのため、生理前後に茶色いおりものが出る場合は、心配ない可能性が高いでしょう。
ただし、茶色い出血がダラダラ長引く場合などは、腫瘍や炎症など病気が原因になっている可能性も考えられるため、早めに婦人科で診察を受けましょう。
タンポンの抜き忘れ
茶色い不正出血が起こるケースで意外に多いといわれているのが、タンポンの抜き忘れによるものです。その後、茶色の出血や悪臭によって、タンポンの抜き忘れに気づきます。
タンポンを抜き忘れると細菌が繁殖して危険なため、タンポンは正しい方法で使用することが大切です。
タンポンのヒモまで膣内に一緒に押し込んでしまうと、入れていることを忘れてしまいやすいため、注意しましょう。
膣内が傷ついている
膣内が傷ついており、傷から出血した場合も、血液と混ざった茶色いおりものが出ることがあります。
膣内が十分に濡れていない状態での性行為は、膣内の粘膜を摩擦によって傷つけてしまうことがあるため、注意が必要です。さらに、婦人科で膣を検査する際に使用する器具によって膣内が傷ついて出血するケースもあります。
加えて、更年期になると女性ホルモンが減少する影響で粘膜を保護する分泌液が減少し、膣が乾燥しやすくなるため、陰部にヒリヒリした痛みや不快感を覚えることがあります。
萎縮性膣炎
茶色いおりものが出ている場合、萎縮性膣炎の可能性も考えられます。萎縮性膣炎とは、女性ホルモンの分泌量の低下によって膣が乾燥したり、膣や外陰部に炎症が起きたりする疾患です。閉経を迎えた女性であれば誰でも発症する可能性があります。
女性ホルモンの分泌量が低下すると、膣内を正常に保つ常在菌が減少し、病原菌が繁殖しやすくなります。また、膣の粘膜が弱くなって乾燥しがちになり、傷がつきやすくなります。膀胱炎にもなりやすくなるため、デリケートゾーンのケアをしっかり行うことが大切です。
萎縮性膣炎は、膣の状態によっても現れる症状はさまざまあります。主に、以下のような症状が見られます。
- 茶色いおりもの、黄色いおりものが出る
- 褐色の膿のようなおりものが出る
- おりものから悪臭がする
- 排尿時に痛みを感じる
- 乾燥によるかゆみ
- 下着がこすれて痛む
- 婦人科で器具を挿入して検査する際に入りにくい、痛みがある
- 性交痛
- 膣や外陰部の灼熱感
- 不正出血 など
萎縮性膣炎の治療は、どこにもがんがないことを確認した上で行われます。中には子宮がんなどが原因となって萎縮性膣炎のような症状が現れているケースもあるため、自覚症状がある場合は早めに病院を受診しましょう。
感染症やがんなど病気の影響
感染症による炎症やがんなどが原因となって不正出血が起き、茶色いおりものが出ている可能性もあります。
病気だからといって必ずしも大量に出血するとは限らないため、心配な不正出血がある場合は病院で検査を受けてみましょう。
茶色のおりもので疑われる病気
ここからは、茶色いおりものが出る際に疑われる病気について解説します。
クラミジア感染症
クラミジア感染症は、日本で最も多いとされる性感染症(STD)で、クラミジア・トラコマチスという菌が原因です。感染すると、クラミジア性子宮頚管炎や咽頭クラミジアを引き起こします。
クラミジア感染症は女性の約8割は無症状といわれているものの、放置すると子宮頸管炎や子宮内膜症、骨盤腹膜炎などを引き起こす原因になります。
子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮の筋層にできる良性の腫瘍のことです。大きさやできる部位、数によっても症状が異なり、茶色のおりものがダラダラ出る過長月経、月経量の増加、月経痛、生理不順などの症状が見られます。
子宮筋腫は悪性腫瘍とは異なり、転移の恐れなどはほぼないものの、子宮筋腫が大きくなると他の臓器や神経を圧迫し、腰痛や便秘、頻尿を引き起こすことがあります。
子宮頚管ポリープ
子宮頸管ポリープとは、子宮の入口にできるキノコのように突き出た良性の腫瘍のことです。子宮頸部の組織が増殖してでき、ちょっとした刺激でも出血しやすいため、激しい運動や性交の後に不正出血をすることがあります。
子宮がん(子宮体がん・子宮頸がん)
子宮がんは「子宮頸がん」と「子宮体がん」の2つに分けられます。
子宮頸がんは子宮頸部(子宮の入り口)にできるがんです。ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって起こるとされ、30~40代に多く見られます。
一方、子宮体がんは子宮内膜(子宮内部を覆っている組織)から発生するがんです。女性ホルモンのエストロゲンとの関連が深く、閉経後の50〜60歳の女性に多く見られます。
どちらのがんにも不正出血が見られ、茶色のおりものが出ることがあります。
茶色いおりもので病院に行くべき?受診の目安
以下のような場合は、婦人科を受診して詳しい検査を受けましょう。
- 閉経したにもかかわらず、茶色いおりものや不正出血がある
- 茶色いおりものが続く
- 鮮血が出る、出血量が増えた
- 腹痛・腰痛がある
- 排尿痛・性交痛がある
- その他、気になる症状がある
生理前後の不正出血であれば、心配はない可能性が高いとされていますが、更年期は子宮体がんが発症しやすい年代であるため、不正出血が起きたら婦人科で詳しく調べておくと安心です。
子宮体がんは初期に見つかれば完治する可能性も高く、早期発見が重要となります。
茶色のおりものへの対策やケア方法
病気によるものではなく、更年期症状の一つとして茶色のおりもの(不正出血)が見られる場合、以下のような対策やケア方法を行ってみましょう。
- しっかり睡眠を取る
- バランスのいい食事を心掛ける
- 大豆製品を積極的に摂取する
- 適度な運動を取り入れ、血行をよくする
- ストレスをためない
不規則な生活や食生活の乱れ、ストレスは更年期症状を悪化させる原因になります。なるべく心身に負担をかけないよう、健康的な生活を意識することが大切です。
漢方薬を取り入れる
茶色いおりものなどに薬で対応したいという方には、副作用のリスクも低い漢方薬がおすすめです。世代を問わず愛用されるようになった漢方薬は、根本的な体質改善を目指したい場合によいでしょう。
漢方薬は、個々の症状や体質に合わせて処方することで、根本的な改善を目指しています。特に更年期で起きるいくつもの症状を得意としていて、産婦人科学会でも推奨されています。
茶色のおりものがあるときにおすすめの漢方薬
茶色いおりものには、不正出血の場合は止血作用やホルモンバランスを整える漢方薬を選び、膣の乾燥によるものであれば潤いを増やすような漢方薬を選ぶなど、さまざまなアプローチで症状を根本から改善していきます。
血液を補ったり、血流を改善したりすることで栄養を全身に届けるほか、免疫力を上げたり、自律神経を整えたりすることで、心と体を正常に戻していきます。
- 六味丸(ろくみがん):口や皮膚の乾燥がある人や膣の潤い不足など、体の潤い不足があるタイプに用いられます。むくみやほてり、頻尿にも有効です。
- 芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう):不正出血に用いられます。艾葉(がいよう)というよもぎの葉が止血作用を持ち、月経の出血が止まらない場合や、ダラダラ続くような場合によく用いられます。
- 温経湯(うんけいとう):体を温め、ホルモンバランスを整えます。唇や皮膚の乾燥などの潤い不足を解消する、麦門冬(ばくもんどう)が含まれるため、膣の潤い不足にも応用されます。
漢方薬を選ぶときに重要なのは、その人の状態や体質に合っているか、ということです。うまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。
自分に合う漢方薬を探すなら、プロに相談するのがおすすめです。自宅にいながら漢方相談ができる「あんしん漢方」などのオンラインサービスなら、あなたの症状や体質に合うパーソナルな漢方を処方し、自宅まで届けてくれます。
茶色のおりものは原因を突き止めることが大切
不正出血でおりものに血液が混ざると、おりものが茶色くなることがあります。茶色のおりものは、生理前後に少し見られる程度であれば、心配ないことがほとんどです。
しかし、更年期、特に閉経後に茶色のおりものが見られる場合は、なんらかの病気が隠れている可能性も考えられます。「大丈夫かな?」と不安な気持ちを抱えて過ごすよりも、なるべく早く婦人科などで詳しい検査を受けることが大切です。
監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)
よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。
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