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夜眠れない・寝付けないのはなぜ?病気の可能性は?
医師監修│更年期の不眠、中途覚醒の原因と対処法
横倉クリニック
横倉恒雄
公開日:2022.07.06
更新日:2023.03.24
更年期に多く見られる症状の一つである「不眠」。布団に入っても寝付けない、中途覚醒してしまう、夜中に起きてしまい眠りたくても眠れないなど、つらい症状の原因や対処法・治療法について医師監修のもと詳しく解説します。
不眠は更年期によくある症状の一つ
更年期になると、女性ホルモンの急激な減少によって、女性の体にはさまざまな症状が現れることがあります。
不眠は、更年期によくある症状の一つです。不眠の現れ方は人によっても異なり、たとえば以下のようなものがあります。
- 夜、ベッドに入ってからもなかなか眠れない
- 夜中に目が覚めてしまう
- 早朝に目が覚めてしまう
- 眠りが浅い
- 熟睡できた感じがせず、すっきり目覚められない
- 昼間眠くなる
- もっと眠りたくても、目が覚めたら寝付けない
- 十分な寝たのに、疲れが取れない など
更年期障害は女性に多いといわれていますが、男性に起こることもあり、男性ホルモンであるテストステロンの減少によって生じる「男性更年期障害」は不眠を引き起こすことがあります。
女性の「睡眠」はライフステージで変化する
女性は、「月経」「妊娠・出産」「閉経」と、ライフステージによって大きなホルモン変化が起こります。この変化の影響で、睡眠も影響を受けやすいといわれています。
生理前に身体的な不調や精神的な不調が起こる「月経前症候群」は多くの女性が経験する症状ですが、睡眠も共通する悩みです。
生理前は日中の眠気が起こりやすく、妊娠中は日中の眠気と不眠、出産後は育児中心の生活になるため睡眠不足になります。そして、更年期を迎えると眠りが浅くなることで不眠につながるのです。
一般的に、加齢に伴って男女ともに不眠の症状が高頻度で見られるようになりますが、中でも閉経後の女性には多く見られます。
睡眠時間よりも「日中に眠くならない」ことが大切
50代を過ぎると「若いときはもっと眠れたのに……」と思うかもしれませんが、年齢とともに睡眠時間が短くなるのは、誰にでも起こる自然な変化です。健康な人でも、年を重ねることで中途覚醒や早朝覚醒が増えていきます。
理想とされる睡眠時間は6〜8時間が目安とはいわれているものの、睡眠時間には個人差があります。短い睡眠時間の方がすっきりと目覚められる人もいれば、10時間くらい眠らないとすっきりしない人もいます。
不眠症は、眠れないことだけではなく、眠れないことで日中に眠くなったり、不調が現れたりすることが問題です。日本人の平均睡眠時間は7時間ほどですが、必ず7時間以上眠らなければいけないわけではなく、自分に合った睡眠時間があります。
平均よりも睡眠時間が短い場合でも、すっきりと目覚められて日中の生活に支障が出なければ問題はないため、目覚める回数や睡眠時間にこだわり過ぎないことも大切です。
不眠の4つのタイプ
不眠症とは、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害などの障害が1か月以上続き、日中にさまざまな不調が現れる病気のことです。
不眠症には、以下の4つのタイプがあります。
- 入眠障害……布団に入ってからもなかなか寝付けない
- 中途覚醒……眠ってから、翌朝起きるまでに何度も目が覚めてしまう
- 早朝覚醒……起床時間よりも2時間以上早く起きてしまい、再度眠ることができない
- 熟眠障害……睡眠時間は十分だが、熟睡できた感じがしない
更年期に不眠が起こる原因
更年期になると、女性ホルモンのエストロゲンが激減しますが、この影響でホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)、イライラ、不安、発汗など身体的な不調や、精神的な不調が起こることがあります。
このような症状が原因になって、不眠につながっていることもあります。ここからは、更年期に不眠が起こる原因をご紹介します。
発汗やホットフラッシュなどの血管運動神経症状
ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)や発汗などの血管運動神経症状は、更年期障害の代表的な症状の一つです。急に汗が止まらなくなったり、顔が熱くなったりします。
これは、自律神経の調節がうまくできないことで血管の収縮・拡張のコントロールができなくなることで生じる症状です。夜にホットフラッシュや発汗が起こることで、睡眠が妨げられることがあります。
不安や抑うつ、うつ病
更年期の症状として、不安や抑うつが見られることもあります。また、近年はうつ病にかかる人が増えているといわれており、うつ病など、こころの病気では不眠が多く見られます。
早期覚醒(睡眠障害の一つで、早い時間に起きてしまい再度寝付けない状態のこと)や、日内変動(午前中は調子が悪いものの、午後から夜にかけて元気が出てくる症状のこと)の両方が見られる場合は、単なる不眠ではない可能性もあるため、早めに病院に相談しましょう。
もともと真面目な人や神経質な人はストレスを感じやすいため、不眠症になりやすい傾向にあるようです。
睡眠呼吸障害
睡眠時無呼吸症候群によって、眠りが妨げられている可能性もあります。睡眠時無呼吸症候群とは、眠っているときに呼吸が止まったり、再開したりを繰り返す病気のことです。
無呼吸の状態があるため、酸素が不足し、体に負担がかかることでさまざまな病気を引き起こす原因となります。閉経後は、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まります。
呼吸が止まる、いびき、昼間の眠気などの症状があり、この他にも、眠れない、疲れが取れない、不安やイライラ、抑うつ、悪夢を見る、頭痛、動悸などさまざまな悩みにつながります。
うつ病や不眠症、貧血と間違えられることもあるため、専門医に診てもらう必要がある疾患です。
むずむず脚症候群
むずむず脚症候群はレストレスレッグズ症候群とも呼ばれ、座ったり横になったりしているときに、主に脚にむずむず、かゆい、痛い、などの不快な感覚が生じます。
主に夕方から夜間にかけて症状が現れ、脚の不快感によってじっとしていられなくなくなるため、不眠の原因になります。
薬や刺激物
薬の中には、不眠に影響を及ぼすものもあります。甲状腺製剤、降圧剤、抗がん剤などは、睡眠の妨げになることがあります。
また、カフェインやニコチンにも覚醒作用があるため、コーヒー、紅茶、タバコは睡眠の質を低下させ、安眠を妨げる原因になります。カフェインには利尿作用もあるため、夜中トイレに起きてしまうことにもつながります。
加齢
加齢自体が、不眠の原因になっている可能性もあるでしょう。高齢になると、体力の低下に伴って睡眠時間が減少し、睡眠の質が落ちることで不眠になることがあります。
このような症状は病気ではなく、健康でも睡眠が浅くなることがあります。
疲労
仕事などで疲れを感じるとよく眠れると思われがちですが、実は不眠の原因の一つに過度の疲労感があります。これは脳のスイッチがうまく切り替えられずに、常に仕事モードとなっているためです。
更年期の不眠の対処法・治療法
更年期の不眠の対処法や治療法はさまざまです。まずはすぐに取り入れられる簡単な対処法を実践してみるといいでしょう。
しかし、それでもどうしても不眠がよくならない場合や、治らないでつらさを感じている場合、「まったく眠れない」「眠れないことで日常生活に支障が出ている」などの場合は、早めに専門医に相談することが大切です。
規則正しい生活
夜眠れない、不眠の症状を感じているという場合は、規則正しい生活を心掛けることが大切です。規則正しい生活リズムに整えるために、寝る時間と起きる時間を同じにしましょう。
なかなか寝付けない場合、寝る時間にはこだわらなくてもいいですが、起きるのは同じ時間にしましょう。午前中に起きて太陽の光を浴びることで、体内時計がリセットされ、睡眠の質の改善や向上につながります。
寝付きがよくない人は、寝室の明かりや温度、音などの環境を整えるといった工夫をすると、寝付きやすくなるでしょう。
刺激物を避ける
寝る前は、カフェイン類やアルコール類、タバコなどの刺激物を避けることも睡眠の質を高めることにつながります。これらの刺激物は避けて、リラックスを心掛けましょう。
昼寝はしないか、30分以内に留める
更年期の不眠を感じている人の中には、夜眠れないため昼寝をする人も多く見られます。しかし、長時間の昼寝や、夕方の昼寝をすると、夜眠れなくなってしまうこともあります。
昼寝はしないか、する場合でも16時より前の時間にし、昼寝の時間も30分以内にするといいでしょう。
昼の生活を快適に
昼の日常生活をストレスから解放して、快適な生活を心掛けて過ごすと、脳のスイッチが切り替えられやすくなり、夜は眠れるようになります。
更年期障害・更年期症状の治療
不眠にもいくつかの種類があり、不眠が引き起こされている原因によっても対策は異なります。
もしも更年期が原因になっている不眠の場合は、更年期障害・更年期症状に対しての治療を行うことで、症状の緩和が期待できます。
更年期障害・更年期症状の治療法や対処法としては、以下のようなものがあります。
- ホルモン補充療法(HRT)
- 漢方薬
- 向精神薬
- サプリメント
更年期症状の改善に使われる自然由来の漢方薬は、精神を落ち着かせる鎮静作用や抗ストレス作用を持つ生薬を含む漢方薬の中から選びます。
また、血流改善によって自律神経を整えるなどの効果も期待できます。病院で処方される漢方薬の他にも、「命の母」、「ルビーナ」など、ドラッグストアなどで購入できるものもあります。また数日分からの小包装も市販されています。
更年期の不眠に用いる漢方薬なら次のものがおすすめできます。
- 加味帰脾湯(かみきひとう):食欲不振や貧血を伴い、不安や動悸、熟眠感がない方、夜中に何度も起きてしまうような方に向いています。更年期の不眠によく用いられます。
- 加味逍遙散(かみしょうようさん):イライラやのぼせ、肩こりなどがあり、眠りが浅い方におすすめです。
- 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ):イライラして怒りっぽく、寝付きが悪い人におすすめです。
その他にも使用される漢方薬があります。自分では何を選べばいいのか不安な方には、体質や症状をオンラインで無料相談の上、選んでくれる「あんしん漢方」などのサービスもあるので、利用してはいかがでしょうか。
睡眠薬を使った薬物療法
現在の不眠治療は、睡眠薬(睡眠導入剤)を使った薬物療法が中心です。
睡眠薬というと「飲み始めると睡眠薬なしでは眠れなくなったり、薬を飲む量が増えたりするのでは?」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、近年の睡眠薬ではこのような心配はありません。
昔使われていた睡眠薬は効果が強く、副作用の心配もありましたが、近年の睡眠薬は緊張・興奮・不安を和らげることで眠りに導くもので、副作用が少なく、自然な眠りに近い睡眠を得やすいことが特徴です。
ただし、睡眠薬は医師の指導のもと、正しく使用しなければなりません。ドラッグストアでは「睡眠改善薬」が販売されていますが、不眠症の場合はこれらを服用してはいけないとされています。
ドラッグストアで販売されている睡眠改善薬に含まれている成分は、アレルギーの症状を抑える効果のある抗ヒスタミン剤の「塩酸ジフェンヒドラミン」です。塩酸ジフェンヒドラミンには眠気を引き起こす副作用があり、この副作用を利用したものが睡眠改善薬です。
塩酸ジフェンヒドラミンは本来、不眠症に効く成分ではありません。一時的に眠れない場合などは睡眠改善薬を使ってみてもいいかもしれませんが、症状が改善されない場合や不眠が長く続く場合は病院を受診する必要があります。
不眠治療は心療内科や精神科が行っていますが、足を運びにくければ、まずはかかりつけ医に相談してみるのもいいでしょう。病院を受診して、不眠であることを医師に相談するだけでも、不眠に対する恐怖が和らぐかもしれません。
更年期に起こりやすい不眠、気になる場合は早めに病院へ
不眠は、更年期の女性に多く見られる症状です。加齢に伴い睡眠時間が減少するため、高齢になると健康な人でも不眠の症状が見られることがあります。
しかし、睡眠不足が続くと、心身に悪影響が起こります。「夜まったく眠れない」「一睡もできない」「日中に眠くて仕方がない」など、日常生活に支障が出ている場合や、症状がつらい場合は早めに専門医に相談することが大切です。
監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)
よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。
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