医師監修│胃腸が弱っている時に食べていいものは?

下痢時におすすめの食事・調理の工夫!避けたい食品も

石窪 力
監修者
医療法人社団曙光会石くぼ医院理事長
石窪 力

公開日:2022.10.19

下痢の時の食事はどんな食材・メニューを選べばいい?消化にいいおすすめの食品や調理方法の工夫、避けたい食品などについて医師監修のもと詳しく解説します。下痢が続くと水分・電解質、体力を消耗するため症状に合わせた適切な栄養補給が大切です。

下痢とは

下痢とは、水分を多く含む便が大量に排泄される状態のことです。便は健康な状態の場合でも「固形物20〜30%」「水分70〜80%」と、水分が多く含まれています。

これがなんらかの原因によって水分が80%以上になると「泥状便(でいじょうべん)」に、90%以上になると「水様便(すいようべん)」となります。

下痢の種類と原因

下痢の種類と原因

ここからは、下痢の種類と原因をご紹介します。

急性下痢

急性下痢は、急激に症状が現れる下痢で、一過性であることが多く、1〜2週間ほどで治まるのが一般的です。

アルコールの取り過ぎや脂質の多い食事が続くことで便中の水分が増えて、引き起こされる下痢です。

食べ過ぎによる栄養の過剰摂取、暴飲暴食で腸に負担がかかることが浸透圧性下痢の原因です。

慢性下痢

慢性下痢は、下痢が2〜3週間以上続いたり、一度治まってもまた再発を繰り返す下痢のことを指します。

腸では、腸の筋肉が伸び縮みしながら水分を吸収し、内容物を肛門まで送り込んでおり、この運動を「蠕動(ぜんどう)運動」といいます。

蠕動運動が過剰に働き過ぎると、水分が十分に吸収されないうちに便として排出されてしまい、下痢が起こるのです。

過敏性腸症候群やバセドウ病などストレスが原因で起こることもあります。

下痢のときの食事について

下痢のときの食事について

下痢のときは、まず脱水にならないよう充分に水分を摂りましょう。その上で少しだけ栄養と電解質を補う程度で大丈夫です。症状が治まってきたらゆっくり、少しずつ普段の食事に戻していきましょう。

また、「腸の健康のため」と毎日ヨーグルトを食べる習慣はありませんか?日本人の多くは乳製品に含まれている乳糖に耐性がありません。下痢が治まるまでしばらく食べるのを止めてみるだけで症状が改善する場合もあります。

ここからは、下痢のときの食事についてご紹介

下痢の状態によって食事内容を変える

激しい下痢のときは、まず脱水にならないように充分な水分補給をしましょう。一気に早く飲むと下痢するので、「ゆっくり、たくさん」というイメージで水分摂取を心掛けてください。薬局などで市販されている経口補水液もおススメです。冷たい飲み物は体を冷やすため避けてください。

重湯(多めの水分でよく煮た薄いお粥の上澄み液のこと)やくず湯、薄い味付けの具なしみそ汁、野菜スープなど、柔らかく、刺激の少ないものを少しずつ取っていきましょう。

よくなってきたら、お粥やおじや、柔らかく煮込んだうどんや柔らかく煮込んだ人参やじゃがいも、玉ねぎなどの野菜、白身魚、煮魚、豆腐、バナナ、りんごなどを食べて、少しずつ慣らしていきましょう。

下痢のときの食事のポイント・工夫

下痢のときは、胃腸に負担がかかる食べ物は避ける必要があります。以下のポイントを意識して、食事や食品を選んでみてください。

消化にいい食品を選ぶ

下痢をしているときや胃腸の調子がよくないときは、胃腸に負担をかけないように消化に良い食品や調理法を選ぶことが大切です。

食物繊維を多く含む食材や脂質の多い食事は避けましょう。

刺激の強い食べ物や嗜好品は避ける

スパイス(香辛料)や辛い物、塩味や酸味が強いものは胃酸の分泌を過剰にし、胃腸の負担になるため、避けましょう。

また、アルコールやコーヒー、紅茶、炭酸飲料なども控える必要があります。

脂質や糖分を多く含む油っこい食べ物やお菓子も胃腸に負担をかけてしまうため、下痢の症状が改善されるまでは食べないようにしましょう。

生野菜は避ける

生の野菜はビタミンが豊富で、栄養バランスを考えた食事に積極的に取り入れたい食べ物ではあるものの、下痢のときは避けたい食材です。

生野菜は食物繊維を多く含んでいるため腸の運動が活発になり、下痢を悪化させてしまう可能性があります。また、体を冷やすため加熱して食べるようにしましょう。

調理方法を工夫する

下痢のときは、調理方法を工夫することで消化をよくすることも大切です。

まず、食物繊維の少ない新鮮な食材を選びます。油脂をなるべく使わないようにして、柔らかく煮込むなどの調理方法で消化がよくなるように工夫しましょう。

  • 新鮮な食材を使う
  • よく煮込んで十分に火を通し、柔らかくする
  • 油脂を控えた調理法を選ぶ
  • 肉は脂肪や皮、筋を取り除く(ベーコンやソーセージなど加工肉は避ける)
  • 食材を細かく切る
  • 薄味にする

上記の調理のポイントを押さえつつ、胃腸に優しい食事にしましょう。

下痢のときにおすすめの消化にいい食事・避けたい食事

下痢のときにおすすめの消化にいい食事・避けたい食事

ここからは、下痢のときにおすすめの消化にいい食事・避けたい食事を食品の種類ごとに分けてご紹介します。外食やコンビニで食事を買うときや、メニューを考えるときの参考にしてみてください。

主食(穀類)

まずは、体のエネルギー源となる主食です。

【消化にいい食事・食品】

  • 柔らかいご飯
  • うどん
  • じゃがいも
  • 里芋など

肉や魚・卵・大豆

傷ついた粘膜を修復するため、卵や豆腐、脂身の少ない肉などでタンパク質を摂取しましょう。

【消化にいい食事・食品】

  • 油不使用の炒り卵、卵豆腐、茶碗蒸し、
  • 湯豆腐
  • 白身魚
  • 鶏のささみなど脂身の少ない肉
  •  など

【避けたい食品】

  • 生卵
  • 秋刀魚やうなぎ、サバなど脂の多い魚
  • 脂肪の多い肉
  • 油揚げ、がんもどき
  • 枝豆、大豆 など

野菜・海藻類

下痢をしているときは、繊維の多い野菜や海藻類は控えるようにしましょう。

【消化にいい食事・食品】よく煮たもの

  • 大根
  • にんじん
  • かぶ
  • 白菜
  • かぼちゃ
  • ナス
  • レタス
  • キャベツ
  • 玉ねぎ
  • 小松菜
  • ほうれん草
  • ブロッコリー
  • カリフラワー
  • トマト(皮は剥く)
  • 生わかめ(柔らかい部分) など

【避けたい食品】煮崩れしにくいもの

  • ごぼう
  • とうもろこし
  • たけのこ
  • ニラ
  • ふき
  • ぜんまい
  • きのこ
  • こんにゃく、しらたき
  • ひじき、茎わかめ
  • 漬物類 など

果物

果物は、バナナやりんごなど消化にいいものがおすすめです。お腹にガスが溜まるため、食べ過ぎには注意しましょう。

【消化にいい食事・食品】

  • バナナ
  • りんご
  • メロンなど

【避けたい食品】

  • ドライフルーツ類 など

その他

その他、胃腸の刺激となる食材は避けることが大切です。

【消化にいい食事・食品】

  • 白湯
  • 重湯
  • くず湯
  • 薄い味付けの具なしみそ汁
  • 麦茶
  • 番茶

【避けたい食品】

  • アルコール
  • 炭酸飲料
  • コーヒー、紅茶、緑茶などのカフェインを含む飲み物
  • 緑茶
  • チョコレートなどの甘いお菓子や脂肪分の多い洋菓子など
  • スパイス(香辛料)
  • カレーやシチュー

下痢になりにくい腸をつくる食事のポイント

下痢になりにくい腸をつくる食事のポイント

下痢になりにくい腸をつくる食事のポイントは、暴飲暴食を避け、食生活を整えることです。

普段の食生活が原因となり、下痢につながっている可能性もあります。まず全体的に食べる量を減らしてみましょう。アルコールを減らすのも良い方法です。「薄味、あっさり、よく噛んで」を守り、腹八分を意識してみましょう。

また、腸の粘膜を保護する食材を普段の食事に取り入れるのもおすすめです。

下痢のときの対処法・注意点

下痢のときの対処法・注意点

ここからは下痢のときの対処法や注意点をご紹介します。

水分と電解質を摂取する

下痢のときは、脱水症状や電解質異常を引き起こすことがあります。激しい下痢で体内の水分が不足している場合は、食事よりも経口補水液や具なし味噌汁などで水分と電解質の摂取を優先しましょう。

牛乳やヨーグルト、チーズは脂肪分が多く、また、乳糖不耐症(ラクターゼの欠乏により乳糖が消化できない状態)の人もいるため、下痢のときは避けましょう。は(甘味料が含まれていますので下痢が悪化する場合があります。)

下痢止めの服用に注意

下痢をしたとき、市販薬の下痢止めを飲んで対処するという人もいるかもしれません。

しかし、食中毒や食あたりが原因の感染性の下痢の場合、自己判断で下痢止めを飲むのはNG。下痢止めを飲むことで菌が排出されず腸内に留まり、逆に悪化してしまう恐れがあります。

感染性の下痢の可能性がある場合は我慢せず、すぐに病院を受診しましょう。

こんな下痢はすぐ病院へ!緊急性の高い症状

こんな下痢はすぐ病院へ!緊急性の高い症状

下痢を起こしたとしても、ほとんどの場合は少し安静にしたり、市販薬を飲むなどすれば数日で症状が治まることが多いです。しかし、中には緊急性の高い症状やケースもあります。

以下のような場合は、よくなるのを待たず、すぐに病院を受診しましょう。

  • これまでに経験したことがないほどの激しい下痢をしている
  • 下痢だけでなく、吐き気や嘔吐、発熱がみられる、水分も充分に摂れない
  • 急激な体重減少
  • 便に血液が混ざっている
  • 排便後も我慢できないほどの腹痛が続く
  • 症状がよくならずに悪化していく
  • 脱水症状が起きている(口が異常に渇く、尿が少ない、水を飲んでも吐いてしまう) など

上記のような下痢の場合、食中毒や他の病気が隠れている可能性があります。症状がよくなるのを待つ間に悪化する可能性もあるため、なるべく早めに病院に行きましょう。

下痢を引き起こす病気としては、以下のようなものがあります。

  • 感染性胃腸炎(大半はウイルス性胃腸炎、急性胃腸炎)
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
  • 虚血性腸炎
  • 過敏性腸症候群(IBS)
  • 慢性膵炎
  • 大腸がん など

また、下痢は新型コロナウイルス感染症の症状の一つとしても確認されています。

この他にも、日常的に下痢をしている、下痢が続くなどで「いつ下痢が起こるかわからず、電車に乗るのが不安」「生活や仕事に支障をきたしている」という場合も、早めに消化器内科を受診して詳しい検査をするといいでしょう。

なお、更年期症状の一つとして、下痢が見られることもあります。他の疾患の疑いで検査をしても異常が見られない場合、更年期による症状の可能性もあるため婦人科を受診することも検討しましょう。

下痢で病院を受診する際のチェックポイント

下痢で病院を受診する際は、以下の点をチェックしておくと、医師に症状が伝わりやすいでしょう。

  • 下痢が始まったのはいつ頃か
  • 腹痛の有無。腹痛がある場合は、痛みの程度や痛み方
  • 便の状態
  • 排便の頻度、回数
  • 下痢の他にも症状が出ているか。特に体重減少や下血
  • 便秘と下痢を繰り返す
  • 発熱を伴う
  • ストレスを感じると下痢になりやすい

下痢のときは胃腸に負担をかけない食事・食品選びが大切

下痢のときの食事については、食べていいものと避けたいものがあります。

下痢なのに食べたいというときは、まず「控え目の食事量と多めの水分補給」という原則を思い出しつつ胃腸に負担のかからない食品を、柔らかく煮込むなどの調理法で消化がよくなるようにして少しずつ摂取しましょう。

下痢のほとんどは数日で治まるウイルス性の胃腸炎です。しかし、激しい症状があり、水分も摂れない場合や長く続く場合、便に血が混ざる場合は他の病気の可能性も考えられるため早めに病院を受診しましょう。

監修者プロフィール:石窪 力さん

石窪 力さん

医療法人社団曙光会石くぼ医院理事長。自治医科大学医学部卒業。埼玉県立がんセンター消化器内科医長を経て伊奈町に開院。日本消化器内視鏡学会専門医、総合内科専門医。当院では安心して胃・大腸内視鏡検査を受けていただけるよう、検査時の苦痛の軽減と安全な内視鏡検査を心がけています。お気軽にご相談ください。

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