公開日:2022/07/29
もしかして更年期が原因?お腹の張りやガスだまり、パンパンで苦しい、ゴロゴロ鳴って気になるなど、胃や腸の不調の原因や考えられる病気ついて、医師監修のもと詳しく解説。すっきりお腹を目指すための、自宅でできるセルフケア・解消法もご紹介します。
お腹が張る、ポコポコする、お腹が苦しい、ガスがたまりやすい症状は、更年期の女性によく見られる症状の一つです。
更年期とは閉経前後の10年間、つまり45~55歳頃を指します。この時期は女性ホルモンのバランスが急激に変化する影響で、お腹が張りやすくなることがあるのです。
お腹が張る「腹部膨満感」は、消化管でのガス産生と、呼吸やおならによる排出のバランスが乱れ、過剰にガスがたまることで起こります。
ガスがたまるとお腹の張りによる不快感で食事をおいしく食べられなくなったり、パンツスタイルやタイトな服でのおしゃれがうまく決まらなかったり、ぽっこりお腹が気になってしまうことも。
また、静かな場所や静かなタイミングで急にお腹が鳴ってしまうこともあり、ストレスにもつながります。
お腹が張る原因は、更年期症状によるものの他にも、いくつか考えられます。
ここからは、お腹の張り・ガスだまり(腹部膨満感)の原因をご紹介します。
更年期になると、これまで分泌されていたエストロゲン(女性ホルモン)の分泌量が急激に減少し、ホルモンバランスが大きく変化します。
これによって自律神経のバランスが乱れると胃腸の働きが低下し、ガスがたまりやすくなります。また、加齢によって腸の働きが衰えることも原因の一つです。
お腹の張りの他にも、暑くもないのにのぼせやほてりがある、汗をかくなどの症状を感じる場合は、更年期が原因かもしれません。
腸内フローラの「フローラ」とは花畑のことで、腸内に棲むおよそ1000種類以上の細菌がまるで花畑のように広がっていることから、腸内フローラという名前で呼ばれています。
悪玉菌の増加などによって腸内フローラのバランスが乱れると、ガスがたまりやすくなり、お腹の張りを感じるようになるのです。
乱れた食生活、栄養バランスの偏った食事、生活習慣の乱れは腸内フローラのバランスの乱れにつながります。
PMS(月経前症候群)とは、生理前の3~10日の間に見られる身体的もしくは精神的な症状のこと。生理前にお腹が張るのは、PMSの症状の一つです。
生理前になるとプロゲステロンが増えますが、プロゲステロンには腸のぜん動運動を抑える働きがあるため、ガスだまりや便秘が起きやすくなります。
PMSの場合、生理が始まると症状が治まることが多いようです。
食べ物は、消化管で栄養素が消化・吸収され、最終的には便となって体外に排出されます。消化された食べ物からはガスが発生しますが、便秘になって腸内に便が留まった状態になると多くのガスがたまり、お腹の張りにつながります。
外出先などで便意やおならを我慢し続けていると、便やガスがお腹の中にたまったままになります。また、腸に負担をかけることにもなるため、動きが悪くなり、ガスが出にくい状態になるのです。
お腹が張る、ガスがたまるなどは更年期によく見られる症状ですが、他の病院が原因になっている可能性も考えられます。
ここからは、お腹が張るときに考えられる病気をご紹介します。
呑気症(どんきしょう)は空気嚥下症とも呼ばれ、食べ物を食べているときに多くの空気を飲み込んだり、緊張によって空気を飲み込んでしまったりする病気のことです。
無意識のうちにたくさん空気を飲み込んでしまうことで、お腹の張りやゲップが止まらない、おならが止まらないなどの症状が起こります。
通常であれば、飲食中などに飲み込んだ空気は、おならやゲップによって排出されますが、飲み込む量が多いと排出が追いつかずに胃や大腸に空気がたまった状態になります。
早食いの人、炭酸飲料をよく飲む人、神経質な人によく見られる疾患です。
過敏性腸症候群とは、ストレスや自律神経失調などの原因によって腸が過敏な状態になり、慢性的な腹部膨張感や腹痛、便秘や下痢などの異常を感じる病気のことです。
通勤など外出中や会話中に突然便意を催すこともあり、QOL(生活の質)の低下につながります。
子宮筋腫や子宮がん、卵巣嚢腫などの病気が進行すると、すぐ近くにある大腸に広がって運動機能を低下させたり圧迫したりすることで、お腹の張りや便秘が引き起こされることがあります。
その他、急性胃炎、腸閉塞、肝臓や胆のうの病気、大腸がんなどが原因となってお腹が張ることがあります。
ここからは、更年期のお腹の張りを解消するセルフケア方法や予防法についてご紹介します。
長い時間同じ姿勢を取り続けると、腸に刺激が加わらないことでぜん動運動が弱くなり、ガスがたまりやすくなります。
デスクワークなどで座り続けることが多い人は、いすに座ったまま腰や背中をねじる、ストレッチで体を動かす、たまに立ち上がって手足を動かすなどをすると、腸に刺激を与えられます。
よく噛まないで食べる人や早食いの人は、食事と一緒に余分な空気を飲み込んでしまいやすく、お腹の張りやガスだまりを感じやすくなります。一口につき30回ほどよく噛むことを意識して、ゆっくり食事をするといいでしょう。
また、朝食を取ることで体を覚醒させるスイッチを入れることができるので、毎朝、朝食を食べるようにすることが大切です。消化機能を高めるためにも、冷たいものではなく温かいものを食べるといいでしょう。
以下は、朝食におすすめの食材です。
高脂肪や高タンパクな食事は、ガスだまりを引き起こす悪玉菌のエサになります。
また、食物繊維は適度に取れば便秘予防や整腸効果がありますが、過剰に摂取し過ぎると悪玉菌のエサになるため、取り過ぎには注意しましょう。特に、豆類やいも類に多い不溶性食物繊維は取り過ぎると便のかさが増し、お腹の張りにつながることもあります。
お腹の張りが気になるときは、低脂肪で栄養価の高い食材を取り入れるのがおすすめです。
緊張や精神的なプレッシャー、ストレスがあるとお腹にガスがたまりやすくなります。自分に合ったストレス解消法やリラックス法を見つけて、ストレスをうまく解消していきましょう。
ストレスを感じたときは目を閉じてゆっくり深呼吸をするなど、簡単な方法でも効果があります。
お腹の動きが弱くなると、お腹にガスがたまりやすくなります。運動不足になると腸への刺激が不十分になるため、適度な運動を取り入れましょう。
運動をするとお腹全体の血流が改善され、腸の動きもよくなります。
運動習慣のない人は、手軽にできるウォーキングからはじめてみるのがおすすめです。長い時間歩いたり、長い距離を歩いたりすることよりも、まずは継続することを意識して自分のペースで運動を生活に取り入れましょう。
腸を揉んで刺激することで動きをよくする「腸もみ」も、お腹の張りやガスだまりに効果的です。
大腸の動きが悪いと、便秘によってガスが発生しやすくなります。ここでは「大腸もみ」をご紹介します。なお、腸もみは食後1時間以内と体調が悪いときは避けましょう。
お腹が張っている、ガスがたまっている、便秘気味などお腹の悩みにおすすめなのが、ガス抜きのポーズ(ヨガのポーズ)です。腰痛を緩和する効果も期待でき、長い時間同じ姿勢でいることが多い人にもおすすめです。
お腹の張りが気になるときは、ツボ押しもおすすめです。
おへそから指幅3本分外側、おへその両脇にある天枢(てんすう)というツボは、お腹の張りに加えて消化不良、下痢、慢性胃炎、吐き気、腰痛、倦怠感、婦人科疾患に効果があります。
画像の赤い点が、天枢の場所です。人差し指、中指、薬指で円を描くようにして刺激しましょう。
小林製薬の「ガスピタン」、大幸薬品の「ラッパ整腸薬BF」、第一三共の「第一三共胃腸薬プラス」、太田胃散の「太田胃散整腸錠」など、お腹の張りやガスだまり、消化不良などを改善する市販薬もあります。
また、根本的な体質改善をしたい場合は、漢方薬の服用もおすすめです。漢方薬は、生薬の薬効で心と体のバランスを整え、理想の健康を目指すものです。
お腹の張りやガスだまりには、胃腸の運動機能を回復する漢方薬を選びます。また、血流をよくすることで、栄養を全身に届けたり、体を温める機能を改善したりするなど、さまざまなアプローチで症状を根本から改善していきます。
さらに、自然の恵みを利用する漢方薬は、化学合成した西洋薬とは違い、副作用のリスクも低いのが特徴です。ナチュラルな漢方薬が近年改めて注目されており、世代を問わず愛用されるようになっています。
・大建中湯(だいけんちゅうとう)
お腹の冷えや腹痛を改善する効果があります。
体力が低下している人におすすめで、お腹を温めて胃腸機能を高めることで腹痛や張りを和らげてくれます。
・桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
胃腸が弱く、腹部の膨満感があり、繰り返すお腹の痛みや下痢をしやすい人に向いている漢方薬です。
体を温めたり、腸の痙攣をほぐしたりすることで、お腹の痛みを抑える効果が期待できます。
自宅で実践できる漢方として注目を集めているのが、「あんしん漢方」というオンラインサービスです。あなたの症状や体質に合うパーソナルな漢方をモットーに、お手頃価格で漢方薬を届けてくれます。
お腹が張る感じが悪化したり、痛みが出てくるような場合は「更年期だから……」と決めつけずに、内科や婦人科などを受診して詳しい検査を受け、原因を特定して適切な治療を受けることが大切です。
何かの病気のサインである可能性も考えられるため、急にお腹が張ってパンパンになった場合や、激しい腹痛や息苦しさがある場合はすぐに病院を受診しましょう。
お腹の張りやガスだまりは、更年期によく見られる症状の一つです。食生活の改善や運動、マッサージやツボ押しなどでセルフケアもできるので、まずは簡単にできるものから試してみましょう。
ただし、なかなかよくならないときや、悪化する場合は早めに病院で診てもらうことが大切です。苦しいお腹の張りをすっきりさせて、毎日を快適に過ごしましょう。
よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。
■もっと知りたい■
この記事をマイページに保存