背中のかゆみはなぜ起こる?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】
背中のかゆみはなぜ起こる?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】
公開日:2025年12月08日
この記事3行まとめ
✓背中のかゆみは加齢による乾燥が主な原因ですが、病気が隠れていることも。
✓保湿ケアと生活習慣の見直しが基本ですが、かゆみが続く場合は皮膚科へ。
✓正しい知識で適切に対処し、つらいかゆみから解放されましょう。
背中のかゆみはなぜ起こる?
この記事では、見た目に大きな皮膚変化がない背中のかゆみを中心に説明します。背中のかゆみは、医学的には「掻痒(そうよう)」と呼ばれる症状の一つです。特に50代・60代になると、多くの方がこの悩みを抱えやすくなります。単なる肌の不調と思われがちですが、実は私たちの体からの大切なサインであることも少なくありません。
加齢による肌の変化が大きく関係しており、皮膚の乾燥が主な原因であることが多いです。特に、50代以降の女性は、更年期に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少が大きく影響します。
エストロゲンには、肌の潤いを保つコラーゲンやヒアルロン酸の生成を促す働きがあるため、その減少が直接的に肌の乾燥やバリア機能の低下につながってしまうのです。
しかし、中には内臓の病気など、他の原因が隠れている可能性も考えられますので、注意深く自分の体と向き合うことが大切です。
よく見られる身体的症状
50代・60代の女性が経験する背中のかゆみには、以下のような身体的症状が伴うことがあります。ご自身の状態と比べてみてください。
- 背中がカサカサして、白い粉をふいたようになる(鱗屑)
- 無意識のうちに背中を掻いてしまい、線状の掻き傷や赤み、ぶつぶつとした湿疹ができる。
- 下着の縫い目やタグがこすれるだけで、チクチク、ピリピリとしたかゆみを感じる。
- 夜、布団に入って体が温まると、かゆみが強くなってなかなか寝付けない。
- かゆい部分を掻き壊してしまい、じゅくじゅくしたり(浸出液)、ヒリヒリとした痛みに変わる。
- 長期間掻き続けることで、皮膚が厚く硬くなったり(苔癬化)、茶色っぽいシミ(炎症後色素沈着)が残ったりする。
心理的な変化
かゆみは体だけでなく、私たちの心にも静かに影響を及ぼします。
- かゆみが四六時中気になって、仕事や家事、趣味に集中できない。
- 人前で背中を掻くのが恥ずかしく、温泉やプールなど肌を見せる場面を心から楽しめない。
- 睡眠不足が続くことで、日中に強い眠気を感じたり、理由もなくイライラしたり、気分が落ち込んだりする。
- 「何か悪い病気なのでは?」という漠然とした不安が、常に頭の片隅から離れない。
統計データ(厚生労働省調査より)
厚生労働省の調査によると、皮膚のトラブルを抱える高齢者は多く、特に皮膚の乾燥やかゆみを訴える方の割合は年齢とともに増加する傾向にあります。正確な「背中のかゆみ」に限定した統計はありませんが、高齢者の約半数が何らかの皮膚掻痒症に悩んでいるというデータもあり、決して珍しい症状ではありません。
多くの方が抱える悩みであり、生活の質(QOL)を著しく低下させる一因となっていることが指摘されています。
背中のかゆみの原因とメカニズム
主な原因
アトピー性皮膚炎などの背中の皮膚に湿疹などの異常がある場合や、尋麻疹などによるかゆみもありますが、見た目に明らかな変化がないかゆみの場合には、原因は一つではなく複数の要因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。
1. 生理学的要因
加齢に伴い、皮膚の機能は自然と変化します。皮脂の分泌量が減少し、皮膚の水分を保つ天然保湿因子(NMF)やセラミドなどの角質細胞間脂質も減少するため、肌のバリア機能が低下します。
特に50代以降は、更年期による女性ホルモンの急激な減少がこれに拍車をかけ、皮膚が非常に乾燥しやすい状態(老人性乾皮症)になります。バリア機能が低下した肌は、外部からのわずかな刺激にも敏感に反応してしまい、かゆみが生じやすくなるのです。
これが進行すると、強いかゆみを伴う湿疹(皮脂欠乏性湿疹)に至ります。
2. 環境的要因
私たちが過ごす環境も大きく影響します。特に空気が乾燥する秋から冬にかけては、肌の水分が奪われやすく、かゆみが悪化しがちです。また、夏でもエアコンの効いた室内で長時間過ごすことで、肌は知らず知らずのうちに乾燥しています。
体を洗う際のナイロンタオルの使用や、熱いお湯での長風呂、洗浄力の強い石鹸やボディソープも、必要な皮脂まで奪い、乾燥を助長させる大きな原因となります。
3. 心理社会的要因
50代・60代は、子どもの独立や親の介護、仕事上の立場の変化など、ライフステージの変化が大きい時期でもあります。こうした変化に伴う精神的なストレスは、自律神経やホルモンバランスを乱し、かゆみを感じる神経を過敏にさせることが知られています。
また、かゆみ自体がさらなるストレスとなり、「かゆい→掻く→さらにかゆくなる→ストレスが増す→掻く→さらにかゆくなる」という負のループに陥ることも少なくありません。
4. 病気や薬の影響
見過ごされがちですが、背中のかゆみが内臓の病気のサインである可能性もあります。
- 内臓疾患:慢性腎不全や透析中の方、肝硬変や原発性胆汁性胆管炎などの肝臓の病気、糖尿病、甲状腺機能亢進症・低下症、鉄欠乏性貧血などがあると、老廃物が溜まったり、皮膚の乾燥が進んだりして、全身にかゆみが出ることがあります。
- 皮膚の病気:アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎(かぶれ)、じんましん、乾癬(かんせん)、疥癬(かいせん)など、かゆみを伴う皮膚疾患は多岐にわたります。
- 薬剤の影響:高血圧の治療薬(カルシウム拮抗薬など)や利尿薬、一部の抗生物質などが原因で、かゆみが引き起こされること(薬剤性掻痒症)もあります。
発症メカニズム
皮膚の最も外側にある角層は、外部の刺激から体を守る「バリア」の役割を担っています。しかし、乾燥や加齢によってこのバリア機能が低下すると、アレルゲンや化学物質、摩擦などの外部刺激が容易に皮膚の内部に侵入します。これが知覚神経の末端を刺激し、かゆみを引き起こす神経伝達物質「ヒスタミン」などが放出されます。
その結果、脳がかゆみとして認識し、「掻く」という行動につながります。しかし、掻くことでさらに皮膚のバリアが物理的に破壊され、炎症が悪化し、さらにかゆみが強くなるという「かゆみの悪循環」に陥ってしまうというのが、一般的なかゆみの原因としていわれておりますが、実はヒスタミン以外にもさまざまな原因があります。
例えば、ドライスキンのかゆみの原因としては神経線維の表皮内侵入と表皮内神経伸長があり、このためかゆみ閾値の低下が生じ、軽度の刺激により容易にかゆみが惹起されます。
この場合には、直接の刺激によるかゆみとなります。また、老人性乾皮症の場合にはバリア機能そのものは異常になっていないこともあります。なので、抗ヒスタミン薬が効きにくいかゆみもあるのです。
リスク要因
- 加齢や更年期による皮膚の乾燥
- アトピー性皮膚炎、乾癬などの皮膚疾患の既往歴
- 糖尿病、慢性腎不全、肝疾患、甲状腺疾患などの内臓疾患
- 鉄欠乏性貧血
- 特定の薬剤(降圧剤、利尿薬など)の服用
- 暖房や冷房による空気の乾燥した環境
- 不適切なスキンケア(洗いすぎ、保湿不足)
- 精神的ストレスや睡眠不足
- ウールや化学繊維など、刺激の強い素材の衣類の着用
診断方法と受診について
いつ受診すべきか
以下のような症状が見られる場合は、セルフケアで様子を見ずに、早めに皮膚科を受診しましょう。
- 保湿などのセルフケアを2週間以上続けても、かゆみが一向に改善しない。
- かゆみが我慢できず、夜も眠れない、仕事に集中できないなど、日常生活に支障が出ている。
- 掻き壊してしまい、じゅくじゅくしたり、血がにじんだり、痛みを伴う。
- かゆみに加えて、明らかな発疹、水ぶくれ、じんましんなどが見られる。
- 全身にだるさや発熱、体重減少、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)など、皮膚以外の症状も伴う。
診断の流れ
1. 問診で確認すること
医師は、診断の手がかりを得るために、以下のような質問をします。これらの情報が的確な診断への近道となります。
- いつから、どのあたりがかゆいですか?
- どんな時にかゆみが強くなりますか?(例:夜、入浴後、特定の服を着た時など)
- 皮膚以外に何か気になる症状はありますか?
- 現在治療中の病気や、定期的に飲んでいる薬、サプリメントはありますか?
- 普段どのようなスキンケア(石鹸の種類、保湿の頻度など)をしていますか?
2. 身体検査
医師が背中の皮膚の状態を直接目で見て確認(視診)します。発疹の有無や種類、分布、乾燥の程度、掻き壊した跡(掻破痕)などを詳しく観察します。必要に応じて、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を使って、湿疹の状態を詳しく調べることもあります。
3. 代表的な検査例
問診や視診で原因の特定が難しい場合や、他の病気が疑われる場合には、以下のような検査を行うことがあります。
- 血液検査:皮膚に湿疹などがある場合にはアレルギーの指標となるIgE抗体の値や、特定の物質に対するアレルギー反応を調べることがあります。皮膚に明らかな異常が無い場合には、肝機能、腎機能、甲状腺ホルモン、血糖値、貧血の有無などを確認し、内臓疾患の可能性を探ります。
- 画像検査など:血液検査などで特に異常が見つからず,原因が不明で,頑固な瘙痒が長期間続く場合などは、内臓悪性腫瘍の合併などを疑って便潜血,腫瘍マーカーの測定,胸部X線,造影CTなどを行う可能性もあります。
受診時の準備
- 症状のメモ:いつから、どんな時に、どのくらいかゆいか、試したセルフケアなどを時系列で記録しておくと、医師に正確に状況を伝えられます。
- お薬手帳:現在使用しているすべての薬(塗り薬、飲み薬、市販薬、サプリメント)がわかるものを持参しましょう。
- 服装:背中をスムーズに見せられるよう、着脱しやすい、ゆったりとした服装で行くと診察がスムーズです。
受診すべき診療科
まずは皮膚科を受診するのが第一選択です。皮膚の専門家が、的確な診断と治療を行ってくれます。もし、かかりつけの内科医がいる場合は、まずそちらで相談し、紹介状を書いてもらうのも良いでしょう。適切な診療科がわからない場合は、お住まいの自治体の保健所や相談窓口で情報を得ることもできます。
背中のかゆみの治療法
治療方針の決定
治療は、原因や症状の程度、そして患者一人一人のライフスタイルに合わせて総合的に決定されます。医師は、問診や検査の結果をもとに、どのような治療が最も適しているかを丁寧に説明し、患者の希望も聞きながら、相談の上で治療のゴールを設定し、具体的な方針を立てていきます。
薬物療法
- 保湿剤:治療の基本であり、最も重要な薬です。皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を高めます。「ヘパリン類似物質」は保湿・血行促進作用、「尿素」は硬くなった角質を柔らかくする作用、「セラミド」は角質細胞間のすき間を埋めて水分蒸発を防ぐ作用があります。症状や肌質に合わせて処方されます。
- ステロイド外用薬:アトピー性皮膚炎などの湿疹による痒みの場合や、掻き崩しなどにより二次的に湿疹が出来た場合の中心的な治療薬です。炎症を強力に抑え、症状を速やかに改善します。ステロイドには強さのランクがあり、症状の重症度や部位によって使い分けます。副作用(皮膚が薄くなる、血管が浮き出るなど)を心配される方もいますが、医師の指示通りに適切な強さのものを適切な期間・量で使用すれば、非常に安全で効果的な薬です。抗ヒスタミン外用薬:ヒスタミンを抑える効果のある外用薬です。尋麻疹なども含めてヒスタミンが関係する痒みを改善させます。長く使っても副作用の心配がほとんどありません。
- 抗ヒスタミン内服薬:かゆみを引き起こすヒスタミンの働きを抑える飲み薬です。かゆみが強く、夜眠れない場合などに処方されます。最近では、眠気の出にくい第二世代の薬が主流になっています。
- その他の専門的な飲み薬:既存の治療で効果不十分な難治性のかゆみに対しては、脳内でかゆみを感じる経路に作用する「オピオイド作動薬(ナルフラフィン塩酸塩)」などが使われることもあります。
- 注意:ご自身の判断で薬の使用を中止したり、量を加減したり、他人の薬を使用したりすることは絶対にやめてください。必ず医師の診断と指示に従いましょう。
非薬物療法
- 光線療法(紫外線療法):特定の波長の紫外線を患部に照射することで、皮膚の過剰な免疫反応を抑え、かゆみを和らげる治療法です。飲み薬や塗り薬で効果が得られにくい難治性のかゆみに対して行われることがあります。週に1〜2回程度の通院が必要です。
生活習慣による管理
- スキンケア:入浴後はタオルで優しく押さえるように水分を拭き取り、肌が乾ききる前の5分以内に保湿剤をたっぷりと塗りましょう。ゴシゴシこすらず、優しく肌になじませるように塗るのがコツです。
- 食事:皮膚の健康を保つためには、バランスの取れた食事が不可欠です。特に、肌のターンオーバーを助ける亜鉛(牡蠣、レバー、牛肉など)やビタミンB群(豚肉、うなぎ、納豆など)、抗酸化作用のあるビタミンA、C、Eを意識して摂りましょう。アルコールや香辛料などの刺激物は、血行を促進してかゆみを悪化させることがあるため控えめに。
- 睡眠:質の良い睡眠を十分にとり、心身を休ませることが、肌の再生とストレス軽減につながります。
治療期間と予後
原因や重症度によりますが、適切な治療とセルフケアを組み合わせることで、多くの場合、数週間から数か月で症状は大きく改善します。
ただし、加齢による乾燥肌は体質的なものであるため、症状が落ち着いた後も、保湿ケアを毎日の習慣として継続することが、かゆみのない快適な状態を維持し、再発を予防するために非常に重要です。
予防法と日常生活での注意点
一次予防(発症予防)
- 保湿の徹底:お風呂上がりはもちろん、朝の着替えの時や、日中でも乾燥を感じる前に、こまめに保湿剤を塗る習慣をつけましょう。
- 適切な入浴:熱いお湯や長風呂は、肌の潤いを保つ皮脂を奪い去ります。お湯の温度は38〜40度のぬるめに設定し、湯船に浸かるのは10〜15分程度にしましょう。保湿成分の入った入浴剤を使うのも効果的です。
- 洗い方:体を洗う際は、洗浄力のマイルドな石鹸やボディソープをよく泡立て、ナイロンタオルなどでゴシゴシこすらず、手で優しくなでるように洗いましょう。すすぎ残しはかゆみの原因になるので、丁寧に洗い流します。
- 肌に優しい衣類:下着は吸湿性・通気性の良い綿やシルクなどの天然素材を選びましょう。ウールや化学繊維のセーターなどを着る際は、直接肌に触れないよう、下に綿の長袖シャツを着るなどの工夫を。
二次予防(早期発見・早期治療)
かゆみを感じたら放置しない:かゆみは体からのSOSサインです。軽く考えず、早めに保湿ケアなどの対策を始め、それでも改善しない場合は速やかに受診しましょう。
定期的な肌のチェック:普段からお風呂上がりに、自分の背中を鏡で見るなどして、肌の状態を確認する習慣を持つと、小さな変化にも気付きやすくなります。
日常生活の工夫
- 掻かない工夫:かゆい時は、掻く代わりに、冷たいタオルや保冷剤を当てて冷やすと、一時的にかゆみが和らぎます。爪は常に短く切り、なめらかに整えておき、就寝中に無意識に掻いてしまう場合は、綿の手袋をして寝るのも一つの方法です。
- 室内の湿度管理:特に空気が乾燥する季節は、加湿器を利用して、室内の湿度を50〜60%に保つように心がけましょう。濡れタオルを室内に干すだけでも効果があります。
- 洗濯:洗剤や柔軟剤が衣類に残っていると、肌への刺激になることがあります。すすぎは十分に行い、香料や着色料などが少ない、肌に優しいタイプの洗剤を選ぶと良いでしょう。
- 運動:適度な運動は血行を促進し、ストレス解消にもなりますが、汗をかいたまま放置すると、汗の成分が刺激になってかゆみを引き起こします。運動後は速やかにシャワーを浴びるか、濡れたタオルで汗を拭き取り、着替えましょう。
- ストレス解消:ゆったりと音楽を聴く、好きな香りのアロマを焚く、親しい友人とおしゃべりするなど、ご自身が心からリラックスできる時間を作り、上手にストレスを発散させましょう。
家族・周囲のサポート
背中のかゆみは、本人にしかわからないつらい症状です。ご家族は、本人がかゆみに悩んでいることを理解し、「背中に薬を塗ってあげる」など、具体的な手助けを申し出てあげると、本人の負担も気持ちも軽くなります。つらさをわかってもらえるという安心感が、何よりの心の支えになります。
よくある質問(FAQ)
Q1: 背中のかゆみは、何か悪い病気の前触れですか?
A: 多くの場合は加齢による乾燥が原因ですが、まれに糖尿病、腎臓や肝臓の病気、甲状腺の異常、あるいは内臓の悪性腫瘍などが隠れていることもあります。かゆみが長引く、急に強くなった、全身の症状を伴うなどの場合は、自己判断せずに皮膚科を受診してください。
Q2: 年齢のせいだと諦めるしかないのでしょうか?
A: 決してそんなことはありません。年齢による肌の変化は誰にでも起こりますが、正しいスキンケアと生活習慣の見直しで、かゆみをコントロールすることは十分に可能です。保湿を徹底するだけでも、症状はかなり改善されます。諦めずにケアを続けてみましょう。
Q3: ストレスがかかると、かゆみがひどくなる気がします。
A: その通りです。ストレスは自律神経のバランスを崩し、かゆみを感じやすくさせることが知られています。また、かゆみ自体がストレスになる悪循環も生まれます。ご自身なりのリラックス法を見つけ、心穏やかに過ごす時間を持つことも、かゆみ対策としてとても大切です。
Q4: 背中に薬を塗るのが難しいのですが、何か良い方法はありますか?
A: 軟膏を塗るための専用の道具(軟膏ぬりちゃん、ぬりぬり棒など)が市販されています。また、100円均一でも購入できるシリコンのヘラなどに薬を付けて塗るという方法も手軽でおすすめです。
ご家族に塗ってもらうのが一番ですが、一人でも工夫次第で上手に塗ることができます。
Q5: どんな保湿剤を選べば良いですか?
A: 肌のバリア機能を助ける「ヘパリン類似物質」「セラミド」「ワセリン」などが配合されたものがおすすめです。尿素配合のものは、硬くなった皮膚を柔らかくする効果がありますが、傷があると刺激を感じることがあります。
クリーム、ローション、軟膏などさまざまなタイプがあるので、ご自身の肌の状態や使い心地の良いものを選びましょう。迷ったら、医師や薬剤師に相談してみてください。
Q6: 民間療法(アロエ、どくだみなど)は効果がありますか?
A: アロエやどくだみなどが、かゆみに効くと言われることがありますが、科学的な根拠が十分に証明されているわけではありません。かえって肌に合わず、かぶれ(接触皮膚炎)を起こしてしまう可能性もあります。試す場合は、まず腕の内側などで試してからにするなど注意が必要です。
基本的には、皮膚科で処方された薬や、信頼できるメーカーの製品を使用することをおすすめします。
Q7: かゆくて掻いていたら、シミのようになってしまいました。
A: 掻き壊しが続くと、皮膚が刺激から身を守ろうとしてメラニン色素をたくさん作り出し、色素沈着(シミ)になることがあります。また、皮膚が厚く硬くなってしまうこともあります。まずはかゆみを抑える治療をしっかり行い、掻かないようにすることが大切です。
シミが気になる場合は、かゆみが治まった後に美白ケアなどを検討するのも良いでしょう。
Q8: 温泉に行くと、かゆみが悪化する気がします。
A: 温泉の泉質によっては、肌への刺激となる場合があります。また、長湯や熱いお湯は皮脂を奪い、乾燥を助長します。温泉を楽しむ際は、長湯を避け、お風呂上がりにはすぐに、いつも以上に念入りに保湿ケアをすることを忘れないでください。
Q9: どのくらいで病院に行くべきか迷います。
A: 市販の保湿剤などでケアをしても1〜2週間改善しない、かゆみがどんどん強くなる、眠れないほどつらい、といった場合は受診の目安です。また、皮膚に赤みやブツブツ、じゅくじゅくした部分がある場合も早めに皮膚科医に相談しましょう。
Q10: このかゆみと、ずっと付き合っていかないといけないのでしょうか?
A: 加齢による肌質そのものを変えることは難しいかもしれませんが、症状を上手にコントロールし、かゆみを感じずに快適に過ごすことは可能です。そのためには、日々の保湿ケアを根気強く続けることが何より大切です。
つらい時は一人で悩まず、かかりつけ医に相談しながら、ご自身に合ったケアを見つけていきましょう。希望を持って、一緒に取り組んでいきましょう。
Q11: 背中のニキビもかゆいのですが、同じケアで良いですか?
A: 良い質問ですね。背中のニキビ(ざ瘡)とかゆみは、乾燥によるかゆみとは原因が異なります。ニキビは、皮脂の過剰な分泌と毛穴の詰まりが原因で起こります。そのため、乾燥肌に使うような油分の多い保湿剤を塗ると、かえってニキビを悪化させてしまうことがあります。
ニキビによるかゆみがある場合は、ノンコメドジェニック(ニキビができにくい)と表示された製品を選び、背中を清潔に保つことが大切です。両方の症状がある場合は、ケアの方法を医師に相談することをおすすめします。
Q12: 季節の変わり目になると特にかゆくなります。なぜですか?
A: 季節の変わり目は、気温や湿度が大きく変動するため、私たちの肌がその変化に対応しきれず、バリア機能が不安定になりがちです。また、春や秋には花粉や黄砂などのアレルゲン(アレルギーの原因物質)の飛散量が増えることも、肌への刺激となり、かゆみを引き起こす一因と考えられます。
日頃からの保湿ケアで肌のバリア機能を安定させることが、季節の変わり目の肌トラブルを乗り切る鍵となります。
まとめ
大切なポイント
- 背中のかゆみの多くは加齢による乾燥が原因。まずは保湿ケアが基本です。
- かゆみが強い、長引く場合は、他の病気の可能性も考え、皮膚科を受診しましょう。
- 掻き壊しは症状を悪化させる悪循環のもと。掻かない工夫が大切です。
- 日々の生活習慣を見直し、ストレスを溜めないことも、健やかな肌を保つ秘訣です。
つらい背中のかゆみは、決して特別なことではありません。正しい知識を持ち、ご自身の肌と上手に付き合っていくことで、この悩みはきっと乗り越えられます。希望を持って、今日からできるケアを始めてみませんか。
健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ
この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。
適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。
監修者プロフィール:中野 貴光さん

よしクリニック(東京都練馬区) 院長。日本形成外科学会形成外科専門医。日本熱傷学会熱傷専門医。日本レーザー医学会レーザー専門医。日本手外科学会手外科専門医。日本形成外科学会小児形成外科分野指導医。医学博士。形成外科・皮膚科・美容皮膚科・美容外科の医療を提供する「よしクリニック」にて、4種類の専門医をもつマルチな形成外科医として、幅広い知識と高い技術をもって診察にあたっている。




