健康な肌に変わる!正しい「皮膚ケア」 #1

ほくろ・シミは危険信号?皮膚科医が警告する「怖い病気」

ほくろ・シミは危険信号?皮膚科医が警告する「怖い病気」

更新日:2025年10月26日

公開日:2025年09月17日

ほくろ・シミは危険信号?皮膚科医が警告する「怖い病気」

ほくろやシミ、かゆみや発疹を“たいしたことない”と放置していませんか? 実は皮膚がんや内臓の病気が隠れていることも。30万人以上を診てきた皮膚科医が、見逃しやすいサインと注意すべき皮膚トラブルをわかりやすく解説します。

教えてくれるのは、皮膚科医・生垣 英之(いけがき・ひでゆき)さん

信州大学医学部附属病院皮膚科などを経て、2017年より茨城県古河市「こだま皮膚科」の院長に就任。2019年に「いけがき皮膚科」として継承開院。一般皮膚科から美容・小児・アレルギー科まで幅広く診療。著書に『皮膚トラブルの治し方大全』(KADOKAWA刊)

※本記事は、書籍『専門医が教える健康な肌に変わる対処法 皮膚トラブルの治し方大全』より一部抜粋して構成しています。

誰もが経験する“皮膚トラブル”を放っておくと……

教えてくれるのは、生垣 英之(いけがき・ひでゆき)さん
polkadot / PIXTA

今、日本人が亡くなる原因となっている主な病気は、がん・心臓病・脳血管疾患の3つです。これらは日本人の「国民病」といわれています。

しかし、皮膚科医の私に言わせれば、皮膚トラブルこそまさに国民病です。というのも、一生のうちに日本人の2人に1人は何らかのがんになるといわれていますが、皮膚のトラブルに関しては日本人の「10割」が経験するからです。

皮膚のトラブルは、その多くが、早期に適切な処置をすればきれいに治ります。最近は、薬局などで売っている市販薬の種類も多く、さまざまな皮膚トラブルに対応できるので、手軽に対処できるようになりました。

しかし、「このくらい放っておけば治る」と思って、買いに行くのを面倒くさがって薬を塗らずに放置したり、病院に行かなかったり、正しい対処法を知らずに症状を悪化させてしまったりするケースが大変多いのです。

皮膚炎の原因は?自己流ケアで悪化リスク増も

皮膚炎とは、皮膚の表面に炎症が起こり、赤くなったり、腫れたり、かゆみを感じたり、ぶつぶつ(発疹)ができたりすることです。

皮膚炎がやっかいなのは、原因がとても多岐にわたることです。原因が特定できなければ適切な治療が行えません。

皮膚炎の原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

一つは外的要因です。例えば化学薬品、強い洗剤、石けんなどの刺激物、アレルゲンとなっている物質です。季節の変わり目など、急激な温度差や気象の変化が原因になることもあります。

内的要因としては、アレルギー体質やストレス、妊娠や月経周期、更年期などによるホルモンバランスの変化が挙げられます。

感染症が原因になることもあります。黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などが、かき壊した傷から感染したり、ヘルペスウイルスなどのウイルス、水虫やカンジダなどのカビが皮膚に感染したりして皮膚の炎症を引き起こすこともあります。

その他、遺伝的要因や薬剤の副作用など、さまざまな原因が考えられます。原因が1つではなくて複数の要因が関与している場合もあります。

ですから、自己判断するのはとても難しく、誤ったケアで悪化させてしまう人は少なくありません。専門医に診てもらって原因を特定できれば正しい治療ができますし、それだけ回復も早くなります。

かゆい“ぼつぼつ”を放置したら胃がんだった(実際の症例)

かゆい“ぼつぼつ”を放置したら胃がんだった(実際の症例)
Luce / PIXTA

以前、ある高齢の患者さんが「背中に5mmくらいのほくろのようなぼつぼつが、急にたくさんできてきた」と訪ねて来られました。老人性のいぼ(良性の脂漏性角化症)と考えられましたが、急にたくさんできてきて、かゆみもあるということから、レーザー・トレラ徴候を疑いました。

レーザー・トレラ徴候とは、かゆみを伴う脂漏性角化症が急速に増えることで、内臓に悪性腫瘍がある場合に現れる症状の一つです。特に高齢者によく見られ、胃がんや大腸がんなどの消化器系がん、乳がん、肺がんが関与していることが多いと言われています。

そこで、この患者さんには内科で精密検査を受けていただきました。その結果、胃がんを発症していることがわかりました。幸いごく初期のがんで転移もなく、手術によってがんを取り除くことができました。

決して、「たかが皮膚トラブル」と思わず、気になることがあれば気軽に医師に相談してほしいと思います。

かゆい“ぼつぼつ”を放置したら胃がんだった(実際の症例)
AomOra / PIXTA

ほくろのがんの正式名称は、「メラノーマ(悪性黒色腫)」。メラノサイトという色素細胞ががん化(腫瘍化)して増殖する、悪性のがんです。

かかりやすいのは60歳以上の方で、日本での発症率は人口10万人あたり年に1~2人程度ですから、それほど心配しなくてもいいと思います。

テレビで、「足の裏にできるほくろは危ない」といった特集が組まれると、心配して来院される患者さんが増えるのですが、たいていは良性のことが多いです。

ほくろのがんだと思ったら、老人性のいぼなど良性のいぼだったとか、変わった事例ではマダニがくっついていた、ということもあります。

日焼けをし続けると発がんリスクが高まる理由

かゆい“ぼつぼつ”を放置したら胃がんだった(実際の症例)
sasaki106 / PIXTA

短時間でも強い紫外線を浴びると皮膚細胞が損傷を受け、皮膚が赤くなったり、ひりひりしたり腫れたりすることがあります。ひどい場合には水ぶくれになることもあります。

次に考えられるトラブルは、日焼けによる色素沈着。いわゆるシミ・そばかすです。色素沈着は紫外線によって皮膚のメラノサイトが活性化し、メラニンが生成されることによって起こります。一度できてしまったシミはなかなか治りません。

おそろしいのは「光老化」です。長年にわたって紫外線を浴びる生活をしていると、皮膚の弾力を保つコラーゲンやエラスチンが破壊され、しわ、たるみ、色素沈着など、肌の老化が加速します。

さらに忘れてはいけないのは、日焼けは皮膚がんのリスクを高めることです。皮膚がんは、紫外線によってDNAが傷つけられ、それが長期的に蓄積することで正常な細胞ががん化してしまうために発症します。

次回の記事では、皮膚トラブルを悪化させる「やってはいけない習慣」5つを紹介していきます。

※本記事は、書籍『専門医が教える健康な肌に変わる対処法 皮膚トラブルの治し方大全』より一部抜粋して構成しています。気になる症状はかかりつけ医に相談してください。
※HALMEK upの人気記事を再編集したものです。

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#1:放置はNG!ほおっておくと怖い皮膚の病気
#2:皮膚トラブルが悪化「やってはいけない習慣」5つ
#3:知らずに悪化する皮膚の「やりがち習慣」5選

もっと詳しく知りたい人は、生垣さんの書籍をチェック!

帯状疱疹や乾燥肌、湿疹やアレルギーなど、全32症例を網羅。30万人もの体を診てきた皮膚科医・生垣英之さんが解決する健やかな肌を維持するためのかゆみ、痛みの対処法を紹介。薬局などで対処できるセルフケアをはじめ、クリニックにかかったほうがいいタイミング、予防方など広く掲載。長く愛用できる皮膚トラブルの書籍です。

HALMEK up編集部
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