ドローインとは?効果・トレーニング方法・よくある質問【医師監修】
ドローインとは?効果・トレーニング方法・よくある質問【医師監修】
更新日:2025年10月17日
公開日:2025年10月16日
この記事3行まとめ
✓ ドローインはぽっこりお腹解消や美しい姿勢作りにつながる
✓ 50代・60代女性も呼吸を意識するだけで安全に始められる
✓ トレーニング効果を高めるには食事や休息、日常生活の意識が大切
ドローインとは?
ドローインとは、お腹を「ドローイン(draw in)」、つまり「引っ込める」動きを基本としたトレーニングです。私たちの体幹の最も深い部分にある「腹横筋(ふくおうきん)」というインナーマッスルを主に鍛えます。
腹横筋はお腹まわりをコルセットのようにぐるりと囲んでおり、内臓を正しい位置に保ち、背骨を安定させる重要な役割を担っています。しかし、体幹を支えるインナーマッスルは腹横筋だけではありません。
実は、「横隔膜(おうかくまく)」「多裂筋(たれつきん)」「骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)」と協調して働くことで、腹腔(ふくくう)という空間を囲み、体幹を安定させる「インナーユニット」を形成しています。
- 横隔膜:呼吸に使われるドーム状の筋肉。息を吸うと下がり、吐くと上がります。
- 多裂筋:背骨に沿ってついている小さな筋肉。背骨一つ一つの安定性を高めます。
- 骨盤底筋群:骨盤の底で内臓をハンモックのように支える筋肉群。尿道の開閉にも関わります。
ドローインは、息を吐きながら腹横筋を収縮させることで、このインナーユニット全体の働きを高めるトレーニングなのです。年齢とともにこれらの筋力が低下すると、ユニットの連携が乱れ、ぽっこりお腹や姿勢の崩れ、腰痛の原因になることも。
ドローインは、体に大きな負担をかけることなく、この大切なインナーユニットを効率的に目覚めさせることができるのです。
ドローインのメリット
ドローインを継続することで、50代・60代の女性にとってうれしい、さまざまな美容と健康面のメリットが期待できます。
- ぽっこりお腹の解消:内臓を支える腹横筋と骨盤底筋群が強化され、下腹部がすっきりと引き締まります。
- 美しい姿勢の維持:体幹が安定し、背すじが自然と伸びやかになることで、若々しく美しい立ち姿に繋がります。
- 腰痛の予防・軽減:天然のコルセットである腹横筋と、背骨を支える多裂筋が腰椎を安定させ、腰への負担を減らします。
- 尿漏れの予防・改善:ドローインは骨盤底筋群とも連動しているため、意識して鍛えることで尿漏れの悩みの改善も期待できます。
- 基礎代謝の向上:インナーマッスルが鍛えられることで基礎代謝が上がり、太りにくく痩せやすい体質を目指せます。
- 呼吸が深くなる:横隔膜の動きがスムーズになり、深くゆったりとした呼吸ができるようになります。これはリラックス効果や自律神経を整える効果も期待できます。
統計データ(スポーツ庁の調査より)
スポーツ庁の「令和4年度 スポーツの実施状況等に関する世論調査」によると、日本の20歳以上の成人の週1回以上のスポーツ実施率は52.3%。運動の内容としては「ウォーキング」が最も多く、手軽な運動が好まれる傾向にあります。
ドローインは、特別な器具や場所を必要とせず、日常生活の中で「ながら運動」として取り入れやすいため、運動習慣がない方や、激しい運動が難しいと感じる方でも始めやすいのが特徴です。意識的な呼吸と筋肉の動きに集中することで、ご自身の体と向き合う良い機会にもなるでしょう。
筋力低下が招く心身のトラブル
筋力低下が招く身体的な問題
腹横筋をはじめとするインナーユニットの力が弱まると、私たちの体にはさまざまな変化が現れます。
- 姿勢の悪化:体を支える中心軸が不安定になり、猫背や反り腰といった不良姿勢に繋がります。これは見た目の印象だけでなく、肩こりや首の痛みの原因にもなります。
- ぽっこりお腹:内臓を支える力が弱まり、本来の位置から下垂してしまうことで、下腹部がぽっこりと出てしまいます。
- 腰痛のリスク増加:腰椎を安定させる機能が低下し、ぎっくり腰や慢性的な腰痛を引き起こしやすくなります。
- バランス能力の低下:体幹がぐらつくことで、つまずきやすくなったり、転倒のリスクが高まったりします。
身体の変化が心に与える影響
身体の不調は、知らず知らずのうちに心にも影響を与えます。「好きな洋服が似合わなくなった」「疲れやすくて外出が億劫」「いつもどこかが痛い」といった悩みは、気分を落ち込ませ、自信を失わせる原因になりかねません。
体が思うように動かないことへの不安や、見た目の変化に対するストレスは、決して小さな問題ではないのです。
関連する他の不調やトラブル
腹横筋の衰えは、他の筋肉や関節にも連鎖的に影響を及ぼします。例えば、体幹が不安定な状態で歩くと、膝や股関節に余計な負担がかかり、痛みの原因になることがあります。
また、呼吸が浅くなることで自律神経が乱れ、全身の血行不良や冷え、便秘といった不調に繋がる可能性も指摘されています。
トレーニングを始める前の注意点と専門家への相談
安全にトレーニングを始めるために
ドローインは比較的安全なトレーニングですが、体に何らかの不調や持病がある場合は、自己判断で始める前に、かかりつけ医に相談することが大切です。特に、以下のような方は注意が必要です。
- 高血圧、心臓に持病のある方
- 現在、腰や背中に強い痛みがある方
- 腹部の手術後間もない方
- 妊娠中またはその可能性がある方
医師の許可を得た上で、無理のない範囲から少しずつ始めましょう。
専門家(パーソナルトレーナーなど)に相談するメリット
「やり方が合っているか不安」「効果が感じられない」そんな時は、専門家の力を借りるのがおすすめです。理学療法士や信頼できるパーソナルトレーナーの指導を受けることには、多くのメリットがあります。
- 正しいフォームの習得:自分では気づきにくい癖を修正し、最も効果的で安全なフォームを教えてもらえます。
- 個別最適化されたプログラム:一人一人の体力や目標、体の状態に合わせた最適なトレーニング計画を立ててくれます。
- モチベーションの維持:専門家による励ましや的確なアドバイスは、トレーニングを継続する上で大きな支えとなります。
良い専門家の見つけ方
信頼できる専門家を見つけるためには、資格の有無(理学療法士、アスレティックトレーナー、NSCA-CPTなど)を確認するだけでなく、体験セッションなどを利用して、その人柄や指導方法が自分に合うかを見極めることが重要です。説明が丁寧で、こちらの悩みや質問に親身に耳を傾けてくれる専門家を選びましょう。
ハルメクが開催する講座やイベントでも、体づくりの専門家によるレッスンを体験できます。ぜひチェックしてみてください。
ドローインの具体的なトレーニング方法
トレーニング方針の決定
まずはご自身の目的を明確にしましょう。「ぽっこりお腹を解消したい」「腰痛を予防したい」「ウォーキングの姿勢を良くしたい」など、目的によって意識するポイントや組み合わせる運動も変わってきます。最初は専門家の指導のもとで基本を学び、ご自身のペースで続けられる計画を立てることを推奨します。
1. 自重トレーニング
まずは基本のドローインをマスターしましょう。器具は必要ありません。
【仰向けでの基本のドローイン】(初心者におすすめ)
- 仰向けになり、両膝を軽く立てます。足は腰幅程度に開き、腕は体の横にリラックスさせておきましょう。
- まずはゆっくりと息を吐き切ります。
- 鼻からゆっくりと息を吸い込み、お腹を風船のように大きく膨らませます。
- 次に、口から「ふーっ」と細く長く息を吐きながら、おへそを背骨に近づけるように、お腹をゆっくりと薄くへこませていきます。
- お腹をへこませたまま、浅い呼吸を続けます。この状態を10〜30秒キープします。
- ゆっくりと元の状態に戻します。これを5回ほど繰り返しましょう。
【座って行うドローイン】
- 椅子に浅めに腰掛け、背すじをまっすぐ伸ばします。足裏全体が床につくように座りましょう。
- 両手をお腹に当て、息を吸いながらお腹を膨らませます。
- 息を吐きながら、お腹をへこませていきます。このとき、背中が丸まったり、肩に力が入ったりしないように注意します。
- へこませた状態を10〜30秒キープし、元に戻します。デスクワークの合間にもおすすめです。
【立ったまま行うドローイン】
- 足を肩幅に開き、背すじを伸ばして立ちます。少し膝を緩めると安定しやすくなります。
- 座った姿勢と同様に、呼吸に合わせてお腹を膨らませたり、へこませたりします。
- 慣れてきたら、歩きながらでもドローインを意識してみましょう。信号待ちや家事の合間など、いつでも実践できます。
よくある間違いと正しいフォーム
×間違い:息を止めてしまう。
〇正しいフォーム:お腹をへこませた状態でも、浅く自然な呼吸を続けます。呼吸を止めると血圧が上がりやすくなるため注意しましょう。
×間違い:肩や胸に力が入ってしまう。
〇正しいフォーム:リラックスして、お腹の奥の筋肉(腹横筋)だけを使う意識を持ちます。
×間違い:腰を反らせてしまう。
〇正しいフォーム:おへそを「背骨に近づける」意識を持つと、腰が安定します。特に立った姿勢では腰が反りやすいので注意しましょう。
2. 器具を使ったトレーニング
ドローインに慣れてきたら、バランスボールやトレーニングチューブを使うことで、さらに効果を高めることができます。
【バランスボールを使ったドローイン】
- バランスボールの上に、背すじを伸ばして座ります。足は床にしっかりとつけ、安定させます。
- 不安定なボールの上でバランスを取りながら、基本のドローインを行います。
- ぐらつく体を安定させようとすることで、腹横筋だけでなく、さらに多くの体幹の筋肉が刺激されます。
【トレーニングチューブを使ったドローイン】
- 柱などにトレーニングチューブを巻きつけ、両端を持ちます。
- チューブに軽く張力がかかる位置に立ち、ドローインを行います。
- チューブの張力に負けないように姿勢を保つことで、腹横筋への負荷を高めることができます。
よくある間違いと正しいフォーム
×間違い:いきなり不安定な状態や強い負荷で行う。
〇正しいフォーム:最初は安定した状態から始め、徐々に負荷を上げていきましょう。安全第一です。
×間違い:ドローインの動きがおろそかになる。
〇正しいフォーム:器具を使っても、まずは呼吸とドローインの丁寧な動きを優先しましょう。
トレーニングの頻度と期間の目安
ドローインは負荷の低いトレーニングなので、毎日行っても問題ありません。まずは「1日5回」など、無理のない回数から始め、習慣にすることが大切です。
効果を実感できるまでの期間には個人差がありますが、多くの方が2週間〜1か月ほどで「姿勢が良くなった気がする」「お腹まわりが引き締まってきた」といった変化を感じ始めます。焦らず、ご自身のペースで継続しましょう。
トレーニング効果を高める生活習慣
1. 食事のポイント(タンパク質など)
筋肉はタンパク質から作られています。トレーニングの効果を最大限に引き出すためにも、食事の内容を見直してみましょう。
- タンパク質を十分に:50代・60代の女性におすすめなのは、脂質の少ない良質なタンパク質です。鶏むね肉やささみ、アジやサバなどの青魚、卵、豆腐や納豆などの大豆製品、ヨーグルトなどを毎食取り入れることを意識しましょう。例えば、いつものお味噌汁に納豆や溶き卵を加えたり、サラダに蒸し鶏をプラスしたりするだけでも手軽に摂取できます。
- バランスの良い食事:タンパク質だけでなく、ビタミンやミネラルも筋肉の働きを助けます。特に、筋肉の合成を助けるビタミンB群や、骨の健康に欠かせないカルシウム、ビタミンDも重要です。野菜や果物、海藻類、きのこ類なども含め、彩り豊かな食事を心がけましょう。
2. 休息と回復の重要性
トレーニングで刺激された筋肉は、休息中に修復され、以前よりも少しだけ強くなります。これを「超回復」と呼びます。筋肉の成長のためには、トレーニングと同じくらい休息が重要です。
- 質の良い睡眠:筋肉の修復や成長を促すホルモンは、睡眠中に最も多く分泌されます。寝る前のスマートフォン操作を控える、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かるなど、リラックスできる環境を整え、質の良い睡眠を確保する工夫をしましょう。
- 休息日を設ける:毎日ドローインを行う場合でも、体に疲れを感じる日は無理せず休みましょう。筋肉の張りを感じる時は、軽いストレッチなどで血行を促すのもおすすめです。
3. 日常生活で意識するべきこと
ドローインは、日常生活のさまざまな場面で実践できます。「ながらドローイン」を習慣にして、24時間トレーニングを意識してみましょう。
- 信号待ちの時間に:立っている姿勢で、息を吐きながらお腹をへこませる。
- 料理をしながら:シンクに寄りかからず、良い姿勢を保ちながらドローイン。
- テレビを見ながら:CMの間に、座ったままドローイン。
- デスクワーク中に:1時間に1回、椅子に座ったまま背すじを伸ばし、ドローインを3回行う。
- 電車やバスでの移動中に:吊り革に捕まりながら、揺れに合わせて体幹を安定させるようにドローインを意識する。
常に軽くお腹をへこませておく意識を持つだけでも、腹横筋は使われています。この意識が、美しい姿勢と引き締まったお腹への近道です。
よくある質問(FAQ)
Q1: ドローインは本当にぽっこりお腹に効くのですか?
A: はい、効果が期待できます。ぽっこりお腹の原因の一つは、内臓を支えるインナーマッスル「腹横筋」の衰えです。ドローインはこの腹横筋を直接鍛えるため、内臓が正しい位置に戻り、お腹まわりがスッキリと引き締まる効果が科学的にも認められています。
ベルトのように働く筋肉を、内側から引き締めるイメージです。
Q2: 効果はどのくらいの期間で現れますか?
A: 個人差はありますが、毎日続けることで、早い方では2週間ほどで「姿勢が良くなった」、1か月ほどで「お腹が引き締まってきた」といった感覚的な変化を感じ始めることが多いです。
見た目に明らかな変化が現れるには3か月程度が目安ですが、焦らず継続することが最も重要です。
Q3: 1日にどのくらいの時間や回数を行えば良いですか?
A: まずは「30秒キープを1セット」とし、1日に3〜5セット行うことから始めてみましょう。慣れてきたら、キープする時間を延ばしたり、セット数を増やしたりしてみてください。
大切なのは時間や回数よりも、正しいフォームで腹横筋に効いている感覚を掴むことです。
Q4: 年齢や体力に自信がなくても安全にできますか?
A: はい、ドローインは呼吸が中心の穏やかな運動なので、年齢や体力に関わらず安全に始められます。仰向けに寝て行う基本のドローインは、体への負担が最も少ないため、体力に自信のない方や運動初心者の方に特におすすめです。
Q5: 腰痛持ちなのですが、行っても大丈夫ですか?
A: ドローインは腰痛の予防・改善に効果的ですが、現在強い痛みがある場合や、ヘルニアなどの診断を受けている場合は、必ず事前にかかりつけ医や理学療法士に相談してください。
自己判断で行うと、症状を悪化させる可能性があります。専門家の指導のもと、痛みのない範囲で行いましょう。
Q6: トレーニング中にお腹や腰が痛くなります。
A: ドローインで使うのはお腹の深層部なので、表面の腹筋が筋肉痛になることは少ないです。もし腹直筋(お腹の表面の筋肉)が痛む場合、力みすぎている可能性があります。
腰が痛む場合は、腰を反らせてしまっているかもしれません。フォームを見直すか、一度専門家に相談することをおすすめします。
Q7: 自重トレーニングと器具を使ったトレーニング、どちらが良いですか?
A: まずは自重での基本のドローインをマスターすることをおすすめします。正しいフォームで腹横筋を意識できるようになってから、バランスボールなどの器具を使うと、より効果的に体幹全体を鍛えることができます。ご自身のレベルに合わせてステップアップしていきましょう。
Q8: ドローインだけでお腹の脂肪は落ちますか?
A: ドローインは腹横筋を引き締め、お腹まわりをスッキリ見せる効果がありますが、体脂肪を直接燃焼させる効果は限定的です。
お腹の脂肪を落とすためには、ドローインに加え、ウォーキングなどの有酸素運動や、食事の見直しを組み合わせることが最も効果的です。
Q9: 食事に関して、特に気を付けることはありますか?
A: 筋肉の材料となるタンパク質をしっかり摂ることが大切です。毎食、肉・魚・卵・大豆製品などを片方の手のひら分くらいを目安に取り入れましょう。
また、筋肉を動かすエネルギー源となる炭水化物も適度に必要です。バランスの良い食事を心がけてください。
Q10: なかなか続けることができません。モチベーションを保つコツは?
A: 最初から高い目標を立てず、「まずは2週間続けてみる」など、小さな目標を設定するのがおすすめです。また、カレンダーに印をつけたり、ご自身の体の変化をメモしたりと、がんばりを「見える化」するのも効果的です。
信号待ちや歯磨き中など、日常生活の動作とセットにすると習慣化しやすくなります。
Q11: 他の人と比べて効果が出るのが遅い気がします…
A: 効果の現れ方には、体質や今までの運動習慣などにより個人差があります。他人と比べる必要は全くありません。
大切なのは、ご自身のペースで、ご自身の体の変化と向き合うことです。昨日より少しでも長くできたり、フォームがきれいになったり、小さな進歩を自分で褒めてあげましょう。
Q12: プロテインなどのサプリメントは摂った方が良いですか?
A: 基本的には、バランスの良い食事からタンパク質を摂取できていれば、必ずしもサプリメントは必要ありません。
ただ、食が細くて十分な量を食べられない場合や、手軽に栄養補給をしたい場合には、補助的に利用するのも一つの方法です。利用する際は、添加物の少ない、ご自身に合ったものを選びましょう。
Q13: 毎日やらないと効果はありませんか?
A: 毎日行うのが理想ですが、疲れている日や時間がない日に無理をする必要はありません。週に数回でも、継続することが何よりも大切です。
お休みしたとしても、また次の日から再開すれば大丈夫。「できる時にやる」というくらいの気持ちで、気長に取り組みましょう。
Q14: ウォーキングと組み合わせると効果的ですか?
A: はい、非常に効果的です。ドローインで体幹を安定させた状態でウォーキングを行うと、姿勢が良くなり、歩行が安定するだけでなく、消費エネルギーもアップします。
歩きながら軽くお腹をへこませる意識を持つだけでも、トレーニング効果が高まります。
Q15: 家事をしながらできる「ながらドローイン」のコツはありますか?
A: 例えば、洗濯物を干す時に、腕を伸ばす動きに合わせて息を吐きながらお腹をへこませる。掃除機をかける時に、前かがみにならず背すじを伸ばし、ドローインを意識する。
椅子に座る時間を、ドローインで体幹を鍛える時間に変えるなど、工夫次第で日常生活がすべてトレーニングになります。
Q16: このトレーニングを続けると、将来どんな良いことがありますか?
A: ドローインを続けることで、生涯にわたって自分の足でしっかりと歩き、活動的な毎日を送るための「貯筋」ができます。
美しい姿勢を保ち、腰や膝の痛みに悩まされることなく、旅行や趣味を存分に楽しめる。そんな、心も体もすこやかで、自信に満ちた未来へと繋がっていきます。
Q17: ドローインと「ブレーシング」はどう違うのですか?
A: 良い質問ですね。どちらも体幹を鍛える方法ですが、意識する点が異なります。ドローインは「お腹をへこませる」のに対し、ブレーシングは「お腹を固める」動きです。
ブレーシングは、お腹まわり全体の筋肉を同時に収縮させ、腹圧を高めます。スポーツのパフォーマンス向上など、より強い力を発揮したい場合に有効です。
まずはドローインで腹横筋を意識することから始め、慣れてきたら目的応じて使い分けるのが良いでしょう。
Q18: 産後の体型戻しにも効果はありますか?
A: はい、産後の体型戻しにも非常に効果的です。妊娠・出産で緩んだ腹横筋や骨盤底筋群を回復させるのに役立ちます。ただし、産後は体がデリケートな時期ですので、必ず医師や助産師に相談し、許可を得てから、無理のない範囲で始めてください。通常、産後1か月検診で問題がなければ開始できることが多いです。
Q19: 効果が感じられないのですが、何が原因でしょうか?
A: いくつか原因が考えられます。一番多いのは、腹横筋をうまく使えていないケースです。お腹をへこませる時に、表面の腹直筋に力が入っていませんか? また、呼吸が浅かったり、腰が反ってしまったりするのも効果が半減する原因です。
一度、仰向けの基本の姿勢に戻り、お腹の奥がじわっと硬くなるのを確認しながら、ゆっくり行ってみてください。専門家に見てもらうのも有効です。
Q20: ドローインをするときの呼吸のコツを教えてください。
A: 呼吸は最も大切なポイントです。息を吐くときは、口をすぼめて「ふーっ」と細く長く、ろうそくの火を消すように、お腹の底から全ての空気を絞り出すイメージで行いましょう。
息を吸うときは、鼻からゆっくりと、お腹だけでなく背中や脇腹にも空気が入るように意識すると、横隔膜がしっかり動きます。焦らず、ご自身の呼吸のペースを大切にしてください。
まとめ
大切なポイント
- ドローインは、体幹の深層筋「腹横筋」を鍛え、ぽっこりお腹や姿勢の崩れ、腰痛を予防・改善します。
- 呼吸と連動させた穏やかな動きが中心で、50代・60代からでも安全に始められ、効果を実感できます。
- トレーニング効果を高めるには、筋肉の材料となるタンパク質中心の食事と、質の良い休息が不可欠です。
- やり方が分からなかったり、体に痛みがあったりする場合は、無理せず医師や理学療法士などの専門家に相談しましょう。
私たちの体は、手をかければ必ず応えてくれます。ドローインは、そんな体の声を聞きながら、自分自身を大切に慈しむ時間です。焦らず、比べず、ご自身のペースで続けてみてください。引き締まったお腹と美しい姿勢は、これからの人生をさらに輝かせる、最高の贈り物になるはずです。
健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ
この記事の健康情報は一般的な内容です。効果には個人差があります。体調の変化に注意しながら取り組んでください。また、運動中に痛みや違和感を感じた場合は、すぐに中止し、必要に応じて医師にご相談ください。
監修者プロフィール:菊池大和 先生

きくち総合診療クリニック(神奈川県綾瀬市)院長。医療法人ONE理事長。日本慢性期医療協会総合診療認定医。日本医師会認定健康スポーツ医。認知症サポート医。身体障害者福祉法指定医(呼吸器)。「病気を診て、人を診て、一人でも多くの命をやさしく包み込む医療を提供する」を理念に診療にあたる。著書に『「総合診療かかりつけ医」が患者を救う』(2021年)、『「総合診療かかりつけ医」がこれからの日本の医療に必要だと私は考えます。』(2024年)




