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- 人としての在り方を伝える婦人運動家・市川房枝さん
「ハルメク」でエッセイ講座などを担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、婦人運動家で政治家の市川房枝さんです。昭和初期に女性参政権運動で活躍した市川さんの、現代に通じる思いについて語ります。
好きな先輩「市川房枝(いちかわ・ふさえ)」さん
1893−1981年 婦人運動家・政治家
1919年に平塚らいてうと「新婦人協会」設立、24年「婦人参政権獲得期成同盟会」を結成。女性の参政権獲得に奔走し、45年12月に男女普通選挙が実現。53年に参議院に当選後、通算25年間政治家として活動。
市川さんからの教え「選挙権がいかに大切か」ということ
「山本さん、三人のお子さんたちに望むことは何ですか?」
と、ときどき尋ねられます。
「選挙に行くこと。ごみの捨て方に神経をつかうこと」
わたしは娘たちに何かをおしえこもうとしたことも、細かな指示を出すこともなかった。けれど、選挙とごみのことだけは、びしっとゆきました。
まず、選挙のことを聞いていただきましょう。ごみのはなしは、またいつかするとして。
わたしに選挙権がいかに大事なものであるかということをわからせてくれたのが市川房枝さんです。二十歳(はたち)のとき、学校の先輩にドキュメンタリー映画の上映会に誘われ、そこで観たのが市川房枝の女性参政権運動の記録でした。
調べてみますと、当時(1978年)、市川房枝は85歳でした。
子どものころ、父と母が選挙に出かけるときにはついて行き、投票場の入口あたりで待つのがならいでした。投票風景をあたりまえに眺めていたわたしは、このドキュメンタリー映画を観て驚きました。
男性女性の枠組みを超えた人としての在り方
日本で初めて男子普通選挙が実施されたのが1928(昭和3)年。それまでは、税金を15円以上、つまり高額の国税を納める25歳以上の男子に選挙権は与えられたのです。
女性参政権に至っては、皮肉にも戦争に負けることによって、1945(昭和20)年の年の瀬に認められました。女性が参政権を手にしてから、まだ70年ほどしかたっていないというわけです。
女性参政権獲得ののちも、市川房枝は女性の地位向上や平和運動のために働きました。
さて、選挙権が18歳から得られることになりました。市川房枝はどう見るでしょう。
「18歳はもう大人。選挙権を得ることで社会に目を向け、自分にも責任があることを実感できるといいね」
そんなふうに云(い)われるのじゃないかしら。
そうそう、市川房枝の子どもたちへのメッセージにこんなものがあります。第一に、なるべく自分のことを自分ですること。第二に、家の手伝い、田畑の手伝いをすること。第三に、自ら勉強すること(親が押しつけるのでなく)。
これは、現代を生き抜くわたしたちへのメッセージでもありますね。
いま市川房枝から受け継ぐものが、女性男性という枠組みを超えたひととしての在り方に変化しているのではないかと、わたしは考えるようになっています。
随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。
※この記事は雑誌「ハルメク」2016年7月号を再編集し、掲載しています。
>>「市川房枝」さんのエッセイ作成時の裏話を音声で聞くにはコチラから
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※ハルメク365では、雑誌「ハルメク」の電子版アーカイブを12か月分見ることができます。詳しくは電子版ハルメクのサイトをご確認ください。
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