防災のプロに学ぶ地震・風水害への防災対策

地震、豪雨、台風…中高年が命を守る災害への備え23

公開日:2020/06/22

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「地震、豪雨、台風……もしものとき、最も命の危険にさらされるのは60歳以上の方々です」と防災のプロ、地域防災支援協会の三平洵(みひら・じゅん)さんは言います。災害から身を守るために、備えとしてやっておくべき対策をお伝えします。

防災のプロに学ぶ地震・風水害への防災対策

災害時にけがをしないための備えとは?

少子高齢化が進む日本で、災害時に、個人や家庭、地域でどう対応するか。今、それは大きな課題となっています。そして、最も命の危険にさらされるのが60歳以上の世代。東日本大震災の年齢別死亡率(下グラフ)では、60歳以上の死亡率は約65%にも上りました。

三平さんは、「年齢を重ねると自分で思うよりも体が動かず転倒したり、とっさの動きがとれなかったりする可能性が高まります。日頃からするべきことは、けがをしないための備えです」と強調します。

「けがをすれば入院して体が弱まるなど災害関連死にもつながります。すべての部屋を完璧に対策できなくても、最も時間を過ごす寝室や台所など優先順位を決め、家具の固定や物を減らすなど工夫をしましょう」

さらに、若い世代との大きな違いは、気力。「災害時、非日常の状況に対応する気力と、再び生活を立て直す気力が弱まってしまうという声を聞きます。だから若い世代以上に被災後の食事、生活環境など、できる限り維持できる対策を考えることが大切です」

東日本大震災の年齢別死亡率

東日本大震災の年齢別死亡率

東日本大震災で岩手県・宮城県・福島県における死者・行方不明者のおよそ3分の2が60歳以上の人たち。大規模災害での人的被害は、高齢者に集中している事実を受け止め、対策を立てる必要があります(参考:平成23年「防災白書」)

 

風水害の備えは、警戒レベルでどう行動するか決めておくこと

近年、増え続ける風水害。三平さんは、「台風などの風水害は予測可能なことが多いです。今年から取るべき避難行動を示した警戒レベルが出るようになりました。レベル3で高齢者などの避難開始、レベル4は全員避難が原則です。自分と家族がいつどう行動するか決めておくことが、命を守る鍵になります」と言います。

次に紹介する、23の備えを確認しておきましょう。

 

命を守るための防災対策:日頃の備え編

ハザードマップを使って、自分の家の災害リスクを把握する

ハザードマップ

まず、ハザードマップで自分の住む地域の災害リスクを把握しましょう。各市町村の窓口やホームページ、国土交通省のハザードマップポータルサイトで災害種別に情報公開されています。

まず一番は、けがの防止。家具、食器棚、冷蔵庫などの固定を

家具、食器棚、冷蔵庫などの固定

災害時、けがをしないことが高齢者の命を守ります。大きな家具、冷蔵庫などは固定したり、食器が飛び出さないようストッパーを付けたり低い家具にしたり対策を。

電化製品の周りに可燃物を置かないなど地震火災から身を守る

電化製品の周りに可燃物を置かない

地震後の火災の一番の原因は、「暖房器具の転倒」や「通電火災」など電気器具による出火。停電後、電気が復旧した際に破損した電気コードなどから発火することも。電化製品の周りに可燃物を置かないようにし、避難時はブレーカーを落として。

寝室のどこに危険が潜んでいるか、寝転んで想像し、物の配置を考える

寝室

頭上にランプなど倒れる恐れのある物やガラス製の物はないか、眼鏡や携帯など必需品は枕元にあるか、大きな本棚などは置かないなど、寝転がって発生から避難までイメージして物を配置しましょう。

もし被災しても生活できる場所を一部屋は確保する

地震で家は崩れなくても、足の踏み場がなく生活できる部屋がない場合も。家具の少ない部屋など一部屋を被災時の生活スペースとして想定し、余計な物は置かないなど対策を。

食べたい物は、季節によって違う。食べ慣れているものを常備しておく

食べ慣れているものを常備

災害時は買い物が困難になるため備蓄は必須。夏と冬など季節によって食べたいと感じる食事は変わるので見直しを。主食に加え、たんぱく質がとれる缶詰や野菜ジュースなど食べ慣れたものを。

飴などの甘い物、飲み物は、普段から持ち歩く

飴などの甘い物、飲み物は、普段から持ち歩く

食事が取れない状況になっても、水と最低限の糖分があれば、しばらくはしのげます。外出時はペットボトルと、飴やチョコレートなどを、なるべく携帯しましょう。

現金、身分証、薬などすぐ持ち出せるようまとめておく

災害時はクレジットカードなどが使えない場合があるため、最低限の現金と、身分証、常備薬などまとめて持ち出せるようにしておきましょう。

家族との安否確認方法を決め、「災害用伝言ダイヤル」も試してみる

災害時は電話回線が混み合いますが、SNSやショートメールは機能している場合があるため、事前に家族で話し合いを。毎月1日・15日に開局される「災害用伝言ダイヤル171」を試すのも手です。

 

災害発生時に、安全な判断をするための備え

警戒レベルのどの段階でどう行動するか、決めておく

安全な判断をするための備え

風水害では事前に情報を得て避難することが重要。発表される警戒レベルに注目し、レベル3で高齢者などは避難開始、警戒レベル4では全員が避難と覚え、どう行動するか決めておきましょう。

風水害時、いつ誰が何をするか、時系列で整理するのもおすすめです。

風水害では、水平避難か、垂直避難か、想定しておく

風水害では、水平避難か、垂直避難か、想定しておく

風水害の避難では今いる場所から離れて安全な場所に行く水平避難と、同じ建物内で上層階へ避難する垂直避難があります。場所や状況によって適切に動けるよう想定を。

「誰でもできるわが家の耐震診断」で、自宅の耐震性を把握する

誰でもできるわが家の耐震診断

インターネットでも確認できる日本建築防災協会の「誰でもできるわが家の耐震診断」。「増築したことは?」「大きな吹き抜けの有無」などの質問に答えていくと危険度が確認できます。

(一財)日本建築防災協会

 

被災後、安全・健康に過ごすための備え

脱水症状にならないようにトイレと飲み物の確保をしっかりと

左/凝固剤などの簡易トイレの備蓄があると安心。右/脱水時には塩分が多く糖分の少なめの経口補水液がおすすめ。備蓄に便利なパウダータイプもあります。
左/凝固剤などの簡易トイレの備蓄があると安心。右/脱水時には塩分が多く糖分の少なめの経口補水液がおすすめ。備蓄に便利なパウダータイプもあります。

災害時、水分を控えトイレを我慢し、脱水症状になる高齢者が続出するので、簡易トイレなどの備えは必須です。また、夏場は熱中症の危険にもさらされます。脱水時は体の働きに必要な塩分などの体液濃度が薄くなり、真水摂取は危険なことも。経口補水液なども準備しましょう。

噛む=全身に血を送る行為。「温かい」食事が、命を守る

上/発熱剤がセットになった非常食も便利。下/カセットコンロの備えは必須
上/発熱剤がセットになった非常食も便利。下/カセットコンロの備えは必須

温かい食事は熱による殺菌効果があり、体を温め、心を落ち着けることもできます。よく噛むことで全身の血流もアップ。電気やガスがなくても用意できるよう工夫を。

免疫が弱い高齢者は、タオルは自分専用に、マスクで飛沫感染を防止

マスクで飛沫感染を防止

高齢者の災害関連死を防ぐには感染症対策が重要。タオルの貸し借りは厳禁。使い捨てマスクを着用し飛沫感染を防いで。

少量の水でできる歯磨きで口内環境を整え、肺炎予防

少量の水でできる歯磨き

少量の水で歯磨きはできます。約30mLの水で歯ブラシを湿らせ歯を磨き、ティッシュで歯ブラシの汚れを拭き取るのを繰り返し、水で2~3回口内をすすぎます。

首の後ろ、わきの下、尾てい骨上を、温めたり、冷やしたり、体温調節を

体温調節

暑さ、寒さは体調に直結。太い血管がある首の後ろ、わきの下、尾てい骨上にマフラーやカイロ、冷却シートなどを当てて体温調節を。

エコノミークラス症候群予防に、足首を回すなどひと工夫

足首を回す

熊本地震で高齢者や40~50代女性の発症も多く見られたエコノミークラス症候群。足の指を動かし、足首を回すなど予防しましょう。

 

持病がある、介護中の場合の災害への備え

持病、アレルギーなどがある人は、薬を多めに準備しておく

薬

持病やアレルギーなど命にも関わる薬は、7日分以上など多めに携帯を。災害時は薬が不足し、いつ手に入るかもわからない可能性があります。

極度なストレス下におかれる可能性のある被災生活。少しでも安心できる備えを。

災害時は、「介護食」も入手困難に。軟らかい食事も準備

軟らかい食事

今はおかゆやおじやなど、おいしくて種類豊富な非常食が手に入るので要チェック。
飲み込みが悪くなったり食欲が減ったりする場合、おかゆなど軟らかい食事や介護食、栄養補給ゼリーなどが活躍します。被災時、介護食が入手困難になることもあるので、高齢者がいる場合は備蓄を。

ヘルパーさんが来なくなって困ることを想定する

日常でも介護現場は人手不足。災害時は介護スタッフも被災し、スタッフ数は激減します。避難方法を決めておいたり、入手困難になる薬や介護用品の備蓄をしたりなど、できる限り備えましょう。

 

ペットがいる場合の災害への備え

ペット

ペットと離れ離れにならないよう、ゲージを用意。迷子札も付ける

ゲージを用意

災害時は犬や猫などのペットも被災します。思い通りに行動してくれないことを想定し、ゲージやリュックなどで連れて避難できる用意を。迷子札を付けていれば、離れても再会できる場合があります。

ペットは避難所に入れない場合を想定し、ペット用品の備蓄をする

動物愛護法が改正され、ペットと同行避難するのが可能になりました。でも優先されるのはペットよりも人命。ペットフードや水、トイレの備蓄を。犬は躾ができていると被災時のストレスにも強くなります。
 

■教えてくれた人

三平洵さん

三平洵さん
みひら・じゅん 一般社団法人地域防災支援協会代表理事。株式会社イオタ(イオタ防災総合研究所)代表取締役。東京都総務局総合防災部主催の講習会で講師を務めるなど、防災対策や地域活動に精通。『シニアのための防災手帖』(産業編集センター刊)を監修。


取材・文=野田有香(ハルメク編集部)、撮影=中川まり子、イラストレーション=Yuzuko 
※この記事は、雑誌「ハルメク」2019年10月号に掲載した記事を再編集しています。

 

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