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- 希望の詩「開き直って、もう一度、生きてみるすか」
3月11日に起きた「東日本大震災」から13年。被災者の心の叫びを書き留めた詩集『いのちの詩』には、被災された方々の心に寄り添い、励まし続けた詩や言葉がたくさんあります。いのちの尊さに思いを馳せる詩集をご紹介します。
震災直後から、被災した方の言葉を書き留めた詩集
※この記事は2021年1~3月の取材をもとに構成しています。
東日本大震災の翌々日以降、盛岡で「和のギャラリーなかむら」を営む中村博興さんは、故郷の釜石市や大槌町、宮古市、久慈市、陸前高田市と100回以上足を運び、ボランティア活動などを通し、被災した方の言葉を書き留めてきました。
それを見た友人たちに「いつか風化してしまうからその前に詩集に」と勧められ、2011年末に詩集『いのちの詩』にまとめました。
「震災の直後は言葉も出ない状況で、避難所では家族の安否が確認できないなどの声があちこちから聞こえてきました。上の詩の、村の人に逃げろ!と叫んで消防車を走らせて帰ってこなかったのは、僕の親友です。本当に家族や友人にとってこんなにつらいことはない。そんな心の叫びを書き留めるしかできませんでした」
人には、最悪の状態から立ち上がって生きる力がある
『いのちの詩』は、震災直後から時系列で心の声を綴っています。
「上の写真の背中に花を背負ったおじいさんは、震災の年の初盆の頃、宮古市の道路で出会いました。話を聞こうと思ったら姿が見えなくなってしまい、でもその姿に何だか心を打たれてね。『何があっても生きるしかないのす』と言われているようで、その言葉を書き添えました」
自分の人生と重ね合わせて、負けてたまるか!と感じる詩
時間がたつと、詩の中の言葉にも心境の変化が現れてきます。
「この『心のもちようでさ 雲の下は嵐 雲の上は晴れ 同じ悩みでも境涯なんだよなぁ』は、陸前高田で、一本松の写真を撮っていたとき、あるご婦人がつぶやいた言葉です。
『開き直って もう一度 生きてみるすか』は、釜石で、店や自宅を津波で流された男性の一言。仮設住宅で、"器も何でも他人様からいただいた物だよ"と笑って話してくれました」
今こそあなたが大切な命を守る人になってほしい
この詩集には600通以上の感想が寄せられ、中村さんは毎年、小学校で講演会もしています。
「自分の人生と重ね合わせ、『私の悩みなど小さなもの。負けてたまるかと思えた』とか、『いつか消防士になって人の役に立ちたい』という子どもがいたり。今こそあなたが大切な命を守る人になってほしい。願いを込めて伝え続けていきます」
取材・文=野田有香(ハルメク編集部) 写真=hana、中西裕人
※この記事は、雑誌「ハルメク」2021年4月号を再掲載しています。
「苦難を受け入れ今を生きる」気付きがここに
東日本大震災から12年。忘れてほしくない、編集部員が取材してきた「人」と「希望」の記録。
2011年:釜石:自分の今いる場所で、前に進む力を取り戻したい
2011年:親を失った被災地の子どもたちに届け!絵本と想う心
2011年:写真の力:があっても大丈夫。いつか、そう思える時がくるから
2012年:旅館再開。海鮮漬け復活。奥さんパワーで地元を元気に(3下旬公開予定)
2013年:福島から今、伝えたいこと――原発事故後も暮らし続けて
2018年:7年経っても消えない思い、新たに生まれた出会い(3月下旬公開予定)
2019年:8年越しの夢。人と夢と故郷をつなぐ、三陸・喜びの一本道
2021年:希望の詩「開き直って、もう一度、生きてみるすか」
東日本大震災体験談と役立つ防災情報まとめ
大地震や、台風による水害といった災害が起きたとき、自分と大切な人の命を守るために――。地震や豪雨に被災した女性たちが考える、本当に必要だった災害への備えと防災の知恵を集めました。
雑誌「ハルメク」
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