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- 混乱する私――何が親切で何が残酷なのか
地震・津波・原発…2011年3月11日牡鹿半島沖を震源とする大地震はまさに「東日本大震災」の始まりでした。地震・津波によって物が壊され、命が奪われ、生活が成り立たなくされ、まだ足らぬとばかりにフクシマの原発は、人の心をも壊しました。
これが3権分立の民主主義国家の判決?
2022年7月7日の朝日新聞『天声人語』を読んでいて(そんなことがあり得るの?)と、私は思わずつぶやいてしまいました。
2022年6月17日、最高裁は、福島の原発事故について避難住民らが国に損害賠償を求めた集団訴訟に対し、複数の高裁で国の賠償責任を認める判決が出ていたのを覆して、「当時の知見からすれば防波堤の設置はできたかもしれないが、それでも事故は起きていただろう。だから規制当局である国の責任を問うことはできない」と、国を免罪しました。
「当事の知見からすれば防波堤の設置はできたかもしれない、それでも事故は起きていただろう」「かもしれない~だろう」という憶測に基づくような判決が最高裁ともあろうところで下されたことに、私は唖然とすると同時に、10万年という気の遠くなる期間隔離しなければならないと言われる「放射性廃棄物」についてもだれも責任を取れないのがこの国、日本なのだと肝に銘じました。
犬だって立派な原発犠牲者
3・11以前から、心優しい東北女性の青田さんは、危うく保健所に連れて行かれようとする犬を引き取り、ファンであった市川雷蔵からもらった「ライゾウ」と名付けて、一緒に暮していました。
家族のように暮していた犬や猫の多くは人間が去った後も家を離れなかったといいます。家畜として人間の生活を支えてくれていた牛も、あの時、放射能で汚染され続けるフクシマに置き去りにされ、放射能に汚染され続ける草を食べ続けてその命をつなぎ、やがては殺処分されました。
懺悔の旅と松ぼっくり
滋賀県大津市の古い農家を借りて住む青田さんのお宅には、この時にフクシマから持ってきたのでないかと思われる東北の文化を感じる品々や、古い作業着や布団の切れ端を段ボール箱を切った台紙に貼って作った布絵の原画がたくさん置かれています。そうした作業をしながら、怒りの矛先を見極め、ご自身のResilience(回復力)を取り戻しておられるように、私には思えるのです。
そして私は、何が親切なことで何が残酷なことなのか混乱してしまい、「東北支援」という言葉を使えなくなってしまうのです。
青田 惠子 作 『森の匂いは消えていった』は共感された方々が協力し合って出版された本です。
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