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阪神・淡路大震災の時も、東日本大震災の時も、何も行動を起こさなかった私。2022年になって出合った一冊の本、『森の匂いは消えていった』に大きな衝撃を受け、「フクシマ」の苦しみと怒りを朗読せずにはいられない気持ちになりました。
懺悔
1995年1月17日午前5時46分淡路島北部沖の明石海峡を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生しました。「阪神・淡路大震災」です。
その夜、隣で寝ていた息子が鼻血を出したので手当てをし、「さあ寝ようね」と声をかけたその時、ゴーと地鳴りのような音がしたと思うと激しくドンと突き上げられ、続いて大きな横揺れが始まりました。すぐにテレビをつけると「地震発生、地震発生、落ち着いて行動してください」というアナウンスが流れていました。「今のところ被害は報告されていません。火災は発生していません」とも。
揺れも収まったので再び床に着き、朝はテレビをつける間もなく慌ただしく朝食を済ませると、いつものように保育園と高校へ送る息子と娘を車に乗せて職場に向かいました。
異変を感じたのはその時です。幹線道路へ出るといつになく大渋滞。ようやく職場に着くとテレビがつけっぱなしにされていて、被害の大きさが刻々と報道されていました。実家に帰省する時いつも通る高速道路が崩れ落ちている画面が映し出されたとき、信じられないことが起こったのだと実感しました。
2011年3月11日14時46分牡鹿半島の東南東沖を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生しました。「東日本大震災」の始まりです。
それは私の定年退職の年で、私は年度末の仕事に追われていました。夕方になって「東京もひどいことになっているらしい。早く娘さんに電話してあげて」と上司から知らされるまで何も知らずにいました。当時次女は、夫が仕事のためアメリカにいたため、2人の幼子を抱えて東京で1人働いていたのでした。
夜になってテレビをつけると、目を覆いたくなるような津波による被害の様子が次々に映し出されていました。
翌日、勤務先に娘から電話が入り、「福島の原発が大変なことになっているらしい。アメリカ軍関係の人は既にヨウ素を飲み始め、家族はアメリカに帰すらしい。せめて京都に避難させて」と。「退職前の仕事で手一杯なんだけど……」と私。それでも娘は3歳と1歳の子どもを連れ、山のような仕事を抱えて我家に帰ってきました。
そんな大きな2回の災害を見聞きしながらも、私は1回も被災地に行きませんでした。何のボランティア活動にも参加しませんでした。
衝撃
2022年5月、「終の棲家」で友達になったAさんから1冊の本が入った袋を手渡されました。「福島から滋賀に避難してきた女性の布絵と詩の本」とのことでした。
ログハウスでゆったりと過ごす時間を持てた日の昼下がり、初めて袋からその本を取り出しました。私の中に衝撃が走りました。まず表紙の布絵と「森の匂いは消えていった」という題字の美しさに息を飲みました。
次に夫君が「妻のこと」~まえがきにかえて~ に書いておられた「事故前まで専業主婦として過ごし、詩を書いたことも絵を描いたこともなかった」妻の「六十の開花?爆発?」という言葉に強い共感を覚えました。
私自身66歳の時、何の前触れもなく脳出血に襲われ半年の入・通院、約2年間の自分が自分でないような感覚を経て、「文章を書くこと」「朗読」を通して自分を取り戻せた、正に「開花、爆発」とも言えるような経験をしていたからでした。
書かずには、朗読せずにはいられない!
布絵を見、詩を読みながら涙があふれました。災害が起こった当時何もできなかった私だけれど、今「フクシマ」を伝えずにはいられない、「六十の開花、爆発」で手に入れた「文章を書くこと」「朗読」2つのスキルを駆使して。
青田 惠子 作『森の匂いは消えていった』は共感された方々が協力し合って出版された本です。
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