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- あらためて思う話すことの大切さ
母が亡くなって、早2年。不思議な感覚なのですが、未だに遠く離れた大分の地にいるような気がします。話し聞いてもらいたくなると、現実に戻ります。
母との関わり
物心ついた頃から両親は共働きで、私たち子ども、年子3人は、保育園のお世話になりました。二人の働く姿は強烈に記憶に焼き付いていて、いつしか「辛抱」を自然に受け入れていました。現在身についている節約志向もこのときに育まれたものでしょう。
学校の夏休みなどは少しでも母を楽にしてあげたくて、自分のできる範囲で手伝っていました。
外出先でよく食べたソフトクリームは思い出の味です。生き生きとした母がまぶしく、素敵な女性に思えました。働くことの素晴しさはこのときに感じ取っていたと思います。
母の言葉に救われた結婚生活
私が23歳で結婚をしたのを機に母と話すことが多くなりました。というのも、地元の大分を離れ、友達も親戚もほとんどいない東京に引っ越し、しかも夫の両親と同居だったからです。
もともと生活スタイルや考え方が違う者同士が一緒になるのですから、トラブルはつきもの。ましてや家族が多ければ、家風に慣れるのに時間がかかります。
「姉ちゃん、つらいことがあったら、お母さんに全部吐き出しなさい」と、母は言いました。
この言葉を頼りに、手紙のやり取りはすぐに始まりました。当時は現代のように手軽に携帯電話で話せませんでしたから……。
腹立ちやいらだちも文字にすることによって、一時的に気持ちは落ち着きました。心待ちにしていた返事が届くと、娘を思う温かい心に励まされ、元気になったものです。
本当は楽しくて、うれしい話ができればよかったのですが、若く、経験の少ない私としては勉強することが多く、つらい内容がほとんどでした。
「ごめんね、お母さん。」
難病で遠のく記憶と会話
母が「パーキンソン病」と診断されたのは、亡くなる2年くらい前でした。薬では病状を遅らせることしかできず、服用していても症状はひどくなるばかり、歩行は困難、会話も成り立たない、記憶も薄れていってしまいました。
定期的に帰省をしているうちに、弟たちは「あなた誰?」と言われるようになっていました。滞在期間の最後の日にやっと思い出してもらえればまだ良くて、最悪なときは、まったく名前を呼んでもらえないこともありました。
話し掛けた内容は理解できましたが、母は言葉にならない音を発するだけです。それでもいくつか反応する単語があって、大きく、はっきりした言葉でしゃべる姿には驚き、思わず動画撮影をしました。その動画は、父の宝物のタブレットの中にあり、今も父を励ましています。
母が亡くなる一週間前に変な写真が撮れたので、
「すごく心配なの。お母さん、聞いて」と詳細を話すと、
「いーと思う、いーと思う」と、受話器越しの力強い返答に驚き、奇跡を感じました。
亡くなるぎりぎりまで母と話ができたことを幸せに思います。
強い人だったから、子どもたちは母にすべてを話せたのだろうなと思っています。どんなことでも話すことは、その人の中にしっかりと記憶として刻まれるのだということを痛感しています。
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