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2020.02.072020年11月05日
「十二単衣を着た悪魔」の監督として作品作りに没頭
女優・黒木瞳!宝塚の学びから映画監督で見せた新境地
女優・黒木瞳さんの最新映画は、演者としてではなく、監督を務めた「十二単衣を着た悪魔」。その女優業・監督業にかける熱い思いを伺いました。
黒木瞳さんの最新映画は、女優としてではなく監督として挑戦
女優として、映画、テレビなどさまざまなステージで活躍されている黒木瞳さん。年齢を感じさせない美しさと凛とした魅力は、ハルメク世代の憧れです。その黒木瞳さんの最新映画は、女優としてではなく、監督を務めた最新作「十二単衣を着た悪魔」。監督デビュー作「嫌な女」(2016年)から4年ぶりに監督の仕事に戻ってきた黒木さんです。映画監督としての日々と、常にチャレンジを恐れないポジティブなパワーの秘密を、映画の裏話とともに取材しました。
現代のイケてない若者が源氏物語の世界にタイムスリップ⁉
黒木瞳さんが監督をした「十二単衣を着た悪魔」は、内館牧子さんの同名小説の映画化作品。就職が決まらずイケてない毎日を送る青年の雷(伊藤健太郎)が突然、平安時代へタイムスリップ。「源氏物語」の世界へ迷い込み、賢くて気が強い弘徽殿女御(こきでんのにょうご、三吉彩花)の影響を受けて、成長していく姿を描いた物語です。
内館牧子さんの『十二単衣を着た悪魔』に惚れて、映画化を決心!
―長編映画監督デビュー作「嫌な女」から4年たちますが、今回、「十二単衣を着た悪魔」には、女優ではなく監督として関わろうと思ったのはなぜでしょうか。監督が決まるまでの経緯を教えてください。
黒木瞳さん(以下、黒木瞳)
内館牧子さんが執筆された小説『十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞』を2012年の刊行当初に読みまして、とても面白くて感動したんです。そのときは映画にすることは考えていませんでしたが、この小説が好きという気持ちはずっと抱いていました。
「嫌な女」の監督の後、依頼を受けてショートフィルムを1本撮ったのですが、そのとき「私が演出した映画をお客様にまた見ていただきたい」という思いが芽生えてきたのです。『十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞』を映画化したいとキノフィルムズさんにお話を持っていき、監督として再び映画に関わることができました。
―原作のどういうところに惹かれたのでしょうか?
黒木瞳
一番面白いと思ったのは、雷が平安時代から現代へ戻ったとき、平安時代の言葉遣いが抜けなくて、ずっと平安言葉で話してしまうというところですね。
私は車でよく読書をするのですが、ちょうど車中でその場面を読んでいて、もうおかしくておかしくて……(笑)。笑いをこらえながら読んでいたので、お腹が痛くなりました(笑)。あのシーンは絶対に映画に生かしたいと思いましたね。もちろん、歯に衣着せずスパッと本音を語る弘徽殿女御のセリフや強く凛とした女性像も好きです。
―原作者の内館牧子さんは映画化についてどうおっしゃっていましたか?
黒木瞳
内館牧子さんは『十二単衣を着た悪魔』をよく映画化しようと思いましたね。あれを映像化するのは難しいと思いますよ」とおっしゃっていました。確かに、原作は長編ですし、源氏物語も登場人物が多いので、映画化するにあたって人物やエピソードを削らなくてはなりません。そこは内館さんと相談をしながら進めていきました。もちろん映画も見ていただいています。「難しい原作をよく映画化されましたね!」と感想を綴ったお手紙を頂戴して、うれしかったですね。
平安時代には珍しい!強い意志と発言力を持つヒロインに共感
―弘徽殿女御は本当にかっこいい女性ですね。今の時代に生きていたら、やり手の女性起業家のようなキャリアを築いているのでしょうか? 弘徽殿女御の魅力についてどう思いますか?
黒木瞳
やり手の起業家というより、もっと母親としての務めを重要視していると思います。私はラジオでさまざまな業界の方とお話をするトーク番組のナビゲーターを務めているのですが、女性起業家の方にも、たくさんお話を聞いてきました。みなさん、すごい野心をお持ちで、かつ、チャレンジャーなんですね。「失うものは何もない!」というスタンスでお仕事をされています。
でも弘徽殿女御は、そういう方とはまた少し違います。生きていく上で「自分を律するにはどうしたらいいのか」ということが、わかっている人です。彼女には息子の春宮を帝にしたいという強い気持ちがあり、それは野心というよりも、我が子への愛情。夫である帝の女性問題を乗り越えて、知恵を尽くして、息子を帝にする道筋をつけていくのです。あのような強い意志を持った女性は、当時では珍しかったと思うし、それが彼女の魅力だと思います。
宝塚歌劇団時代に培ったセルフプロデュース力が監督と女優の仕事に生かされている
―読者には宝塚歌劇ファンも多いのですが、宝塚時代の経験や磨かれた芸術センスなどが、監督や女優の仕事に生かされていることはありますか?
黒木瞳
宝塚歌劇で舞台に立つとき、衣装は舞台衣装担当が用意してくれますが、実はウイッグやアクセサリーなどは自分で用意するんです。もちろんヘアメイクも自分でやります!
男役の方から髪型が良くないと言われたら、別なウィッグに急きょ変更しないといけないので、常に3つくらいのウイッグを用意して、アクセサリーと衣装のコーディネートを考えるなど、お客様にどう見られるのが一番よいかを、常に意識して準備してきました。
なので、宝塚の役者はセルフプロデュース力がとても鍛えられていると思います。そういう経験があったからこそ、それが宝塚卒業後の女優業や監督業に生かされていると思っています。
―それが本作で女優陣が着ている十二単衣にも生かされているんですね。衣装の十二単衣は、黒木監督がこだわった部分だそうですね。本当にとてもきれいな衣装でした。
黒木瞳
衣装を褒められるのが、何よりもうれしい(笑)。楽しい作業だったので、苦労とは思っていないのですが、制作にかなり時間がかかり、衣装スタッフは大変だったと思います。男性監督だったら、衣装さんにお任せだったかもしれませんが、この映画において十二単衣は重要な演出ポイントだったので、衣装にはかなりこだわりました。ぜひ注目していただきたいです。
映画のすべてに関われる監督の仕事が大好き!
―長編2作目を監督しての感想は?
黒木瞳
反省点はたくさんあります。もっとこうすれば……と思ったりもしますが、そのときできることを全身全霊でやりました。女優が監督をすることが珍しいのか「嫌な女」のインタビューのとき「どこまで手掛けたんですか?」と聞かれたのですが、前作も本作も、私は監督としてすべてに関わっています。
もちろん各パートに照明さん、美術さん、衣装さんなど専門のスタッフがいますが、彼らと一緒にクランクイン前から撮影中、ずっと細部にわたるまで細かい作業をやってきましたし、撮影が終わった後は編集の仕事も行っていました。とても大変な仕事ですけど、本当にやりがいに溢れてて、私には向いているようです。改めて映画監督の仕事がとても好きだと思いましたね!
■作品情報
「十二単衣を着た悪魔」(2020年11月6日公開)
監督:黒木瞳
出演:伊藤健太郎、三吉彩花、伊藤沙莉、戸田菜穂、ラサール石井、伊勢谷友介、山村紅葉、笹野高史
■黒木瞳プロフィール
くろきひとみ 福岡県出身。1981年宝塚歌劇団入団。入団2年目で月組の娘役のトップ女優に。85年に退団。その後は、多数の映画、ドラマ、舞台に出演している。「化身」(86年)で第10回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。「失楽園」(97年)で第21回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞ほか数々の映画賞を受賞した。他ヒット作に多数出演。エッセイや絵本の翻訳も手掛けており、『母の言い訳』は日本文芸大賞エッセイ賞を受賞。2016年「嫌な女」で監督デビュー。「十二単衣を着た悪魔」は、長編監督2作目である。
取材・文=斎藤香 写真=泉三郎 編集=鳥居史(ハルメクWEB)
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