不安増す50代女性、変わる仕事と人生観
8割が将来や仕事に不安……それでも50代女性が転職したくないのはなぜ?
8割が将来や仕事に不安……それでも50代女性が転職したくないのはなぜ?
更新日:2025年08月20日
公開日:2025年08月17日
“働き方”と“人生観”が大きく変化する中で
高度経済成長期に生まれバブルを経験し、子育てや家事、仕事に奔走してきた現在の50代女性たち。かつては「家計を支えるサブ的役割」やパート・非正規雇用のイメージで語られることが多くありましたが、時代は大きく変わりました。
今では、管理職や長く第一線で活躍する女性も増え、社会が求める女性像もますます多様化。“生涯現役”という考え方も当たり前となり、今、従来とは異なる新しいロールモデルが必要とされています。
一方で、「人生100年時代」と言われる現在、定年延長や少子高齢化、そして急速な社会の変化が進む中、「働いていれば、将来の不安はない」から「定年後も続く自分の人生をどう生きるか」へと意識がシフト。
これからの生き方や働き方について迷いや悩みを抱える50代女性が増えています。
50代の「8割以上が将来や仕事に不安」その要因は
最新の調査(※)によると、50代女性の8割以上が「将来や仕事に不安を感じている」と回答しました。
将来、自分の仕事が続けられるか、定年後の生活はどうなるか、年金は本当に頼れるのか……。
また、「やりたいことを仕事にできていない」と実感している人も半数に上ります。
主な要因には、「終身雇用や年功序列の崩壊」「雇用や賃金、年金への不安」「親や配偶者の介護、家族関係の複雑化」「期待されたキャリアや自己実現とのギャップ」などが挙げられています。
一方、不安を抱えながらも「転職したい」と考える人は少なく、50代の63%が「今の職場にとどまりたい」と答えています。
“迷っているけど現状維持”を選ばざるを得ない、その背景には「年齢による転職リスク」「生活や家族を守る責任」「新しい環境への不安」も見え隠れしています。
今回の調査から、「将来に不安がある」「やりたいことを仕事にできていない」と感じているにも関わらず、現状を変えようとはしない、転職も考えていない――そんな中年層特有の行き詰まり感も見てとれます。
この“現状への不満”と“行動への消極さ”とのギャップこそが、40~50代の多くが直面する「ミッドライフ・クライシス」の一端と言えるのかもしれません。迷いや諦めによって、不安を抱えつつも変化を選べない状態が続いてしまっているのではないでしょうか。
社会の変化と50代女性 “停滞”から“行動”への転換点は?
新型コロナの影響やSNSやAIなどテクノロジーの進化、働き方や家族の多様化も、今後の50代女性に大きな影響を与えています。
在宅ワークや副業が身近に
介護との両立や、体調の変化を考慮しながら働きたい――そんな50代のニーズに応えるように、在宅ワークや副業の選択肢が広がっています。また、リスキリング(学び直し)には、国や行政の多様な支援制度があり、費用補助や再就職支援も充実しています。
女性活躍・シニア世代への支援拡大
ミドル・シニア世代の女性を対象にした再就職セミナーや自治体の職業訓練、キャリア相談など支援策が充実しています。また厚生労働省ではジョブ・カードという制度があり、職務経歴や資格、希望などを整理できるツールで、キャリアの棚卸しや相談時に活用できます。
家族のかたちも多様に
パートナーとの暮らしを見直したり、子どもが独立して“おひとりさま”になったりと、家族の形が多様化。50代は「自分のための時間」や「やりたいこと」に目を向けるチャンスでもあります。「私らしい人生を送りたい」と願う方を後押しする社会の風潮も強まっています。
セカンドステージを楽しむ人が増加
定年後も働き続ける人、趣味やボランティアに積極的に参加する人など、50代から“第二の人生”を新しく切り拓く方が増えています。生涯学習講座や市民活動支援、NPOボランティアセンターでの活動のほか、オンラインで気軽に学べる趣味や資格の講座など、多彩な選択肢があります。
これら時代の流れを受けて、年齢に関係なく新しい目標や仲間と出会い、前向きに挑戦することでいきいきと活躍する方が増えています。
一方、現状にとどまり続けると、孤立や生活、健康面でのリスクも高まる可能性が。自分で考え、自分らしい一歩を踏み出すことが大切です。
50代からの「小さな挑戦」が未来を変える
実際、小さな一歩から人生が変わった50代女性も増えています。
子育てと介護を経て、専業主婦として過ごしていたまいこさん(54歳)は、40代後半から人生に焦りを感じ、自宅で2冊の参考書を徹底的に学ぶ、という方法で保育士や宅建の資格を取得しました。50歳からは資格を生かして保育園勤務を始め、さらにInstagramで好きだった本の情報を発信して新しい居場所を見つけ、自分らしく社会復帰を果たしています。
一方、外資系企業で長年働いていたユミさん(57歳)は、49歳で早期退職。その後は、フリーランスで酒蔵と契約し営業職を続ける傍ら、趣味だった旅と料理を生かして「旅する料理人」に転身と、二足のわらじで自分らしい働き方にシフトしました。不安もあったものの、楽しみながら人脈と経験を広げ、日々をいきいきと楽しむ第二の人生を歩んでいます。
また最近は「定年女子トーク 」など、働くという選択をしてきた大人女性のためのコミュニティも活発。「同じような悩みや不安、これからの働き方を分かち合える場所があると、考え方も前向きになれる」という声も。
株式会社ジコリカイCEOの阿部和也さんは「急激に環境や仕事を変える必要はないが、『自己理解を深め、柔軟に変化と向き合うこと』こそがこの世代には大切」と語っています。
「どんな生き方・働き方が自分にフィットするか」を探し、機が熟せば学び直しや仲間探しも積極的に――。
そんな“内側からの変化”が、新しい未来につながるカギです。
ポジティブな人生後半は“自らの行動”で始まる
今までと同じ場所にとどまるのは安心に見えて、実は社会やテクノロジーの変化にますます置いていかれやすい時代。
けれど、ほんの少し勇気を持って準備したり、新しいチャレンジを始めたりすることで、50代からでも未来に大きな違いが生まれます。
「もう遅い」と立ち止まるのではなく、「第二のスタート」の時を迎えられる今こそ、自分の未来を自分でつくる時代。
大きな変化でなくても、小さな一歩から、自分だけの人生を色づけてみませんか?




