定年女子はどこへ行く?

職場のジェネレーションギャップ…定年女子の賢い向き合い方は?

職場のジェネレーションギャップ…定年女子の賢い向き合い方は?

更新日:2025年08月07日

公開日:2025年07月30日

職場のジェネレーションギャップ…定年女子の賢い向き合い方は?

定年を迎える女性たちのこれからの生き方について、定年女子トーク実行委員会委員長、石崎公子さんが考える連載シリーズ。今回は、定年女子にも悩む人が多い「ジェネレーションギャップ」の対処法について。大人女性が身につけるべき、心の保ち方・守り方について考えます。

すれ違いは「時代」ではなく「育ち」の違い?

すれ違いは「時代」ではなく「育ち」の違い?
Ushico / PIXTA

私たち定年女子は、ジェネレーションギャップとどう向き合えばいいのか?

ジェネレーションギャップについては、昔と比較してついあれこれ言いたくなりますが、一方で、彼らの主張は、私たちが望んでいた働きやすい環境、それを求めていい時代になりつつあるからこそ、のこととも思うのです。

とは言うものの、前回ご紹介した定年女子Jさんの後輩女性の態度は、話を聞いているだけで私もやっぱりモヤモヤが募ります。

だって、私たちが若かった頃は、上司に叱られるのも、先輩に無理を言われるのも「仕事のうち」だとどこかで納得していたから。理不尽でも、「自分が未熟だから」と飲み込んできた人も多いのではないかしら。

けれど今は働く環境が変わり、働く若い世代の価値観は確実に変わっています。

若い世代の言うことが正しいこともあるし、喜ばしいことだったりもするのだけれど、考え方の違いに、私たち定年女子世代にはなんか腑に落ちなくてモヤモヤする……。

このモヤモヤを、私たちはどう考えたらよいのでしょう。どうやって折り合いをつけていったらよいのでしょう。

※定年女子=定年が気になる、定年をきっかけに自身の生き方働き方を考えたい働き続けてきた女性たちのこと

今の時代だからできる在宅勤務を選択した定年女子Kさん

今の時代だからできる在宅勤務を選択した定年女子Kさん
8x10 / PIXTA

定年女子Kさんは、チームの若いメンバーの一人と関係性に悩んでいました。こちらが声をかけても反応はそっけなく、話を聞いているのかどうかもわからない。意見を求めると明らかに不機嫌な様子。

そんな頃にコロナが始まり、会社の労働環境がガラッと変わりました。

出社禁止、リモートワークが当たり前になり、そのおかげでKさんはそのメンバーと対面で顔を合わせる機会がめっきり減り、気持ちもだんだん落ち着いていきました。

コロナが収束しても、Kさんの職場は出社する日と在宅勤務日を選択できるようになりました。Kさんは今、そのメンバーとは顔を合わせない出社日を選んで、働いています。

かつては早期退職も考え始めていたKさんでしたが、今ではその人とのストレスからは逃げられて、再びいきいきと働けるようになりました。

価値観が違うなどでお互いをわかり合えなくても、距離を取ることで少しは心が軽くなることもあるのですね。

会社に「叱らないでください」と言われた定年女子Lさん

会社に「怒らないでください」と言われた定年女子Lさん
earlinheart / PIXTA

キャリアを積み重ねてきたLさんは、数年前に転職しました。そこで入社時に言われたのが

「若い人には、叱らないでください。最近の子は叱られる経験がないので……」ということ。

叱るのではなく、若い世代に何か言う場合には、お願いするように伝えてほしいということでした。そう言われたLさんは、そういう時代なのだと理解しつつも、戸惑いもあったに違いありません。

「叱らない」ことで、確かにその場の空気は守れるかもしれないけれど、若い世代の成長する機会までが失われている気がするのは、私の余計なお世話なのかしら。だって、私たちはたくさん叱られながら育ててもらってきたと思うんですもの。

叱らないようにと伝え方を思い悩みながら日々働くのは、なかなかのストレスでしょう。そういう定年女子も少なくないのかもしれませんね。

怒ってばかりいるのは全然違うけれど、怒らなきゃいけない場面だってあるはず。それでも若い世代を叱ってはいけない、というのは、やっぱりおかしいと思うんですけどね、私は。

これは、モヤモヤするなあ。

今になって”他者と交わる ”ことに意味があるとふりかえる定年女子Mさん

今になって”行く場所がある ”ことに意味があるとふりかえる定年女子Mさん
Luce / PIXTA

Mさんは定年を機に会社員生活を卒業しました。好きなことを好きな時間に自由に過ごすようになりましたが、かつての会社員生活を、ジェネレーションギャップも含めていろいろ意味があったとふりかえります。

「嫌なこともたくさんあったけれど、“行く場所がある”って、本当にありがたいことだったんだなと、今になって思うんです」

会社という場所では、意図せずさまざまな人と関わることになります。そこでは、自分とは全然違う価値観に出合ったり、理解できない態度に戸惑ったり、時には腹を立てたり、悩んだり……。

けれどそれこそが、「他者と交わる」ということだったんだなあ、と。

今はSNSもYouTubeも、自分好みにカスタマイズされて、「見たいものしか見なくて済む」時代。けれどMさんは言うのです。「思いもよらない考え方に触れられるのが会社だった。今思えば、あれが面白さでもあったなと思います」

渦中では大変なことも、未来の自分から見るとどう思えるかって視点があると、また少し気持ちも変わりそうです。

当たり前を「わかり合えない」ところから始めよう

当たり前を「わかり合えない」ところから始めよう
saki / PIXTA

きっとジェネレーションギャップとは、時代や社会の変化によって生まれた「”当たり前”の違い」なのですね。

イライラ、モヤモヤのときに私たちはつい、「最近の若い子は、何を考えているのかわからない」と思い、一人で悩みを抱え込んでしまいがちだけど、もはやそれは当たり前のこと、「わかり合えないのは当然」という前提から考えてみた方がよさそうです。

わかろうとする努力は大切ではあるけれど、「わからないまま」で終わってもいいじゃないですか!

働く環境でのことだとしたら、うまく伝わらなかったとしても、私は私のやるべきことをやったと思えれば、それでいい。無理にわかり合おうとせず、無理に変わろうとせず、時には距離を置くことも、やさしさの一つだと割り切っていけばいいじゃないですか。

きっと、それぞれの“当たり前”がすれ違ったときに、それをスルーすることなく、それでもなお相手と向き合おうとする、相手の価値観を知ろうとしながら自分の在り方を問い直そうとする、その痛みと努力などの葛藤が、今のジェネレーションギャップの正体なのです。

今の若い人たちが悪いわけではない。そして、私たちが時代遅れなわけでもない。

育った時代、環境が違えば、常識も価値観も違う。何より生きてきた年数が違うのだから、経験が違う、体験が違う。その違いに、モヤモヤしたり、戸惑ったりしながら「こんな人もいるんだ」「こんな考え方もあるんだ」と思うのは、長く働き続けてきたからこそ感じられる、“今”を生きる面白さの一つ なのだと捉えられるようになりたいものです。

ふと、かつて私たちが若かった頃、ジェネレーションギャップを感じていた昔のおじさんたちは、私たちをどう感じていたんだろう? ……そんなことを聞いてみたくなりました。

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石崎公子
石崎公子

定年女子トーク実行委員会・委員長。新卒で広告代理店に入社し、勤続25年で退職、独立。会社に囚われない働き方を志向し、新規事業を起ち上げるも失敗、試行錯誤を繰り返す。現在は定年女子キャリア講座のナビゲーターを中心に、よりよく生きるための終活講座も手がける。共著に定年女子ライフシリーズ「そろそろこれからを考えよう、定年女子ライフ計画」ほか。

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