誰もが直面する可能性がある、大切な人との別れ

【体験談2】大切な子どもを亡くしたとき…悲しみの対処法(山﨑さんの場合)

【体験談2】大切な子どもを亡くしたとき…悲しみの対処法(山﨑さんの場合)

更新日:2025年07月26日

公開日:2025年07月23日

【体験談2】大切な子どもを亡くしたとき…悲しみの対処法(山﨑さんの場合)

誰もが直面する可能性がある、大切な人との別れ。深い悲しみに沈みそうになったときどう対処するべきなんでしょうか?家族との別れを経験した、山﨑美津江さんのエピソードを紹介します。

18年たち、今では笑顔で娘のことが話せます。天国で再会できる日を楽しみに

山﨑美津江さん (76歳)の場合

“元祖スーパー主婦”として、テレビなどでもおなじみの山﨑美津江さん。掃除や整理整頓、家計の管理法など、暮らしがうまく回る方法をさまざまなメディアを通して伝えています。実体験に基づいた確かな理論と明るい笑顔で、たくさんの迷える主婦たちを救ってきました。

そんな山﨑さんは、18年前、長女の範子(のりこ)さんの第一子である菜々(なな)ちゃんを引き取り、2歳半になるまで育てた経験があります。妊娠中に範子さんのがんが見つかり、菜々ちゃんが9か月のときに亡くなったからです。

山﨑美津江さん (76歳)の場合
範子さんがつけていた育児日記。菜々ちゃんを抱っこしてうれしそうに微笑むこの写真が、遺影になりました。

「吐き気がひどく、ひどいつわりかと思って受診したら、すぐ入院になって。スキルス胃がんと診断されました。おなかの子はまだ1キロにもなっていない時期でした」
すでに進行しており、余命は半年。範子さんの夫の判断で、本人には告知をせずに治療を進めることになります。

「結婚して8年目、待望の子どもでしたからね。本人が受けるショックを考えてのことでした。治る病気だよと、生まれてくる子どものためにも治療をがんばろうねと伝えました」

山﨑美津江さん (76歳)の場合
思い出の写真が飾られた壁。右下は、父親のもとに菜々ちゃんを送り届けた日のスナップと、高校生になった菜々ちゃんとの3ショットを並べたもの。時の流れを感じます。

母子を助けるため、子どもを取り出し、範子さんの胃を摘出する手術が行われました。菜々ちゃんの出生時の体重はわずか900gでしたが、幸いなことに順調に大きくなったそう。範子さんも免疫療法が奏功し、家に戻れることに。山﨑さんは栃木にある範子さん宅に泊まり込み、育児をサポートすることになります。

菜々ちゃんの存在に支えられて、初めての育児にも、治療にも前向きに取り組んだ範子さん。しかし寒さが増した頃、体調を崩します。その後がんであることを本人に伝え、最期は家族に見守られて息を引き取りました。享年30。がんがわかってから9か月後でした。

山﨑美津江さん (76歳)の場合
思い出はコンパクトにして、いつでも手に取れる場所に置いている山﨑さん。範子さんがつけていた育児日記や、思い出の手紙などをまとめたファイルも

「宣告された余命より3か月長く生きてくれました。菜々はやっと離乳食が始まったくらい。葬儀の後お婿さんから、しばらく菜々を育ててほしいと言われたんです。手のかかる乳児を、働きながら一人で育てることは難しいと考えたのでしょうね。苦渋の決断だったと思います」

10年くらいは、出掛けた先々で面影を探していました

10年くらいは、出掛けた先々で面影を探していました
この部屋は通称「主婦室」。家計簿をつける、原稿を書くといったデスクワークに加え、趣味の読書やギター練習もここで。山﨑さんの大切な居場所に、家族の写真が飾られています

60歳を目前にして、再び子育てをすることになった山﨑さん夫妻。神奈川のマンションで3人の暮らしが始まります。「とにかく必死だった」という山﨑さんですが、いつでも思い出に触れられるよう、小さかった菜々ちゃんと、育児に奮闘する山﨑さん夫妻の写真がデスク前の壁に飾られています。

10年くらいは、出掛けた先々で面影を探していました
好奇心旺盛な山﨑さんは、読書が大好き。大きな悲しみに見舞われたときも、読書を通じて得た広い視野が支えの一つに。

「あの頃は、育児という仕事に助けられていたのかもしれませんね。それでも10年くらいは、街中など出掛けた先々で、範子の面影を探していました。似た人がいると、『あ、範子だ、こんなところにいたんだ』って。今はもう、そんなことはありませんけどね」

だってまた会えるから、とポツリ。「いつかこの世でのお務めを終えたら、天国で再会できる」。そう信じて、山﨑さんは今日を精いっぱい生きています。

取材・文=取材・文=田島良子(ハルメク編集部)、撮影=上山知代子

※この記事は、雑誌「ハルメク」2024年12月号を再編集しています。

HALMEK up編集部
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