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更新日:2021年09月04日 公開日:2021年09月01日
戦争を語り継ぐ…原爆で被爆したマリア像
映画「祈りー幻に長崎を想う刻(とき)―」で、第二次世界大戦で破壊された長崎・浦上天主堂のマリア様を救おうと奔走するクリスチャンの女性を演じた高島礼子さん。映画の裏側から高島さん自身のライフスタイルまでお話を伺いしました。
田中千禾夫の戯曲「マリアの首―幻に長崎を想う曲―」を社会性のある作品を発表してきた松村克弥監督が映画化。高島礼子さんは、看護師と娼婦として働きながら、長崎に落ちた原爆により破壊された浦上天主堂のマリア様を救い出すことに懸命な女性、鹿を演じています。
戦後の大変な日々を生き抜く鹿ですが、映画は悲しみやつらさよりも、彼女の強い信仰心からくる力も描いています。まずは高島さんが鹿を演じることに込めた思いについて、お話を伺いました。
―映画を拝見させていただき、戦争を知る世代の方たちよりも知らない世代が多い時代である今、こういう作品は語り継がれるべきだと思いました。この映画の依頼があったときのことを教えてください。
高島礼子さん(以下、高島礼子)
お話をいただいたときは、うれしかったです。いつもと同じようにまず脚本を読ませていただいたのですが、長崎に落ちた原爆のことは知っていても、浦上天主堂のことなど知らないことも多かったので「どこまで事実かしら?」など考えながら読ませていただきました。すごくやりがいのある役をいただき、ぜひ演じたいと思いましたね。
―鹿はとてもやさしくて、かつ、強い女性として描かれていますが、役作りはいかがでしたか?
高島礼子
鹿は、隠れキリシタンの先祖を持つ女性で、看護師でもあり、娼婦でもありという、とても複雑なプロフィールを持った女性です。娼婦の役というのは、このような職業はしたくないけど、やらざるをえないという場合が多いので、自分自身を消して、他人になりきるようにお化粧を厚くしたりすることがよくあるのですが、鹿は慈悲の心、人を救いたいという気持ちから看護師と娼婦の仕事をしているので、この役では、特にお化粧を厚くする必要はありませんでした。
どのような仕事でも鹿として存在すればいい、何も隠すことはないからです。「看護師と娼婦の役の演じ分けは大変じゃないですか?」とよく聞かれましたが、キリスト教徒の一人の女性が2つの職業を持っているというだけで、演じ分けるということは考えずに「鹿として生きよう!」と思いました。
―役の人間性をつかんでおけば大丈夫という感じだったんですね。
高島礼子
そうですね。でも最初からそう決めて演じていたわけじゃないんですよ。演じながらつかんでいった部分は大きいです。最初は監督に「もっとお化粧を濃くした方がいいでしょうか?」と聞いたりしていましたから。でも監督に「そんなことしなくていい、鹿として存在していてほしい」とアドバイスを受けました。確かに彼女はいつも堂々としていますから、ヴィジュアルに変化を加えたりしなくてもよかったんですね。
―カトリック教徒という役ですが、高島さんはそのことについてはどういう解釈をしましたか?
高島礼子
私はカトリック教徒ではないし、宗教について深くかかわってこなかったのですが、この映画で、信仰心ある女性を演じさせていただき、信仰を持つことの素晴らしさ、強さを知りました。鹿は被爆者でもあり、差別も受けていました。私は「こんな境遇の中で、彼女がこんなに強くて優しいのはなぜ?」と思っていたのですが、信仰心が彼女を支えていたんですね。
鹿は先祖代々カトリック教徒の家系で、明治時代、どんな迫害にも屈しなかった強いご先祖様を持っています。信仰心は親から受け継ぐものもあると思うので、鹿が強いのは、信仰の強さを力にして生き抜いてきた家族がいたからじゃないかと思います。
―確かにそうですね。この映画に出演して、高島さんの中でキリスト教や信仰心について、考え方など変化はありましたか?
高島礼子
どのような宗教でも、ご縁があって、その宗教を心の支えにしているのですから、すごくいいことだと思っています。私自身は特に信仰している宗教はありませんが「信仰心はあった方がいいのかな」と改めて考えました。何を信じるかは、人によって違いますし、キリスト教や仏教などの宗教じゃなくても、自分の心の中で信じるものがあれば、ご先祖様でもいいと思います。お墓参りして、ご先祖様に「見守っていてくださいね」とお祈りしたりするじゃないですか。そういう気持ちを持つことは素敵だと思いました。
―完成した映画を見て、改めてどんな感想を持ちましたか?
高島礼子
自分が出ているシーンは、冷静に見られなくて、「もっとこうすればよかったかな」とか思ったりすることもあるのですが、監督がOKを出した演技ですから、後悔はありません。
共演の俳優さんたちのシーンでは、映画の世界に入って見ていました。特に黒谷友香さんが演じた忍ちゃんのシーンは印象深いです。彼女もカトリック教徒で、マリア様を救うという志が一緒だったせいか、いろいろ感じることが多くて。
黒谷さんとも話したのですが、鹿と違って、忍ちゃんは戦争によって心が壊れかけていた人だったのかもしれません。水さえない状況の中で、次五郎(金児憲史)からもらったトマトが命を救ったけれど、そのあとにつらい思いもして……。極限状態の中で生きた彼女のシーンはいろいろ考えさせられました。
―なるほど、自分が出演していないシーンは観客として見ていたんですね。
高島礼子
あと、劇中、マリア様に祈るシーンがあるのですが、映画を見てくださった神父さんが「普通はあんなに深く真剣にお祈りはしないですね」とおっしゃったんです。最初は「やり過ぎたのかしら」と不安になったのですが、よく考えてみると、時代の違いだと気付きました。
今は真剣に深くお祈りしなくてもいい、平和な時代なんですね。映画の舞台になった時代は戦後、みんなボロボロで必死に生き延びようとしていた時代。鹿たちは毎日、命をかけて祈っていたんです。破壊された浦安天主堂からマリア様を救い出すことが、鹿たちの生きがいでしたから、祈ることで彼女は強い心を維持していたのだと思います。
高島礼子(たかしま・れいこ)
1964年、神奈川県生まれ。1988年ドラマ「暴れん坊将軍Ⅲ」で女優デビュー。映画「さまよえる脳髄」(1993年)で映画初主演。1996~1998年「陽炎」シリーズ(2・3・4)で主演。1999~2005年「極道の妻たち 赤い殺意」以降のシリーズに主演。映画、ドラマ、舞台など幅広く活躍。2000年「長崎ぶらぶら節」の演技で第24回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。ほか、主演映画「おみおくり」(2018年)「犬鳴村」(2000年)などがある。
「祈りー幻に長崎を想う刻(とき)―」(2021年8月20日より全国順次ロードショー)
監督:松村克弥
出演:高島礼子、黒谷友香、田辺誠一、金児憲史、村田雄浩、寺田農、柄本明、美輪明宏(声の出演)藤本隆宏、温水洋一、馬渕英里何、宮﨑香蓮、大桃美代子、井手麻渡、城之内正明、玉浦有之祐、たくみ稜
衣装/ プレインピープル アクセサリー/フォーエバーマーク
取材・文=斎藤香 写真=泉三郎 スタイリスト=村井緑 メイク=水野 みゆき 編集=鳥居史(ハルメクWEB)
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