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- 「シュノーケリングは いかが」水木うららさん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月のテーマは「オススメ」です。水木うららさんの「シュノーケリングは いかが」と山本さんの講評です。
シュノーケリングは いかが
「ワァ! 冷たっ!」
久しぶりの海の水は身がひきしまるほど、冷たかった。
夫と2人、シュノーケリングにはまって、初めて挑戦したのは、石垣島の海で、18年前のことになる。
きっかけは、沖縄の知念で乗った、グラスボートの船底から見えた熱帯魚だった。
黄色、ピンク、青、緑、オレンジと色や、形、体長が違う魚たちが、まるで「広重ブルー」のような透き通った青い海で、悠々と泳いでいた。
ひと目で魅せられ、いつかきっと一緒に泳ぐという強い思いが湧いてきた。
3年待ってやっと願いがかなう。
水着の上に長袖のシャツを重ねて着る。水泳帽をかぶって、フィンの代わりに水陸両用のサンダルをはく。度付きのゴーグルを付けて、シュノーケルを口に入れる。
おっと、大事なものを忘れていた。子供用の浮き袋を使うのは、かっこ悪いかもしれないが、カクレクマノミやチョウチョウウオの仲間になって長い時間泳ぐためには必須の品だ。
夫考案の「オリジナルシュノーケリング ウィズ 浮き袋」だから「恥ずかしさ」は浜辺に捨てて、さあ海にはいろう。
身体が青に染まるくらいの海に、仰向けになってぽっかり浮かんだり、気にいった魚の後ろに付いて泳いだりする。
手を差し伸べると、魚たちはするっとどこかへ逃げてしまったり、そばに寄ってきたりして、自由に泳ぎまわる動きがかわいくて、見ていて飽きない。
この瞬間がシュノーケリングの醍醐味だ。
耳元で、ぶくぶくと泡の音がする。晴れわたった空を見上げると、太陽の眩しい光が射しこむのを肌で感じる。
爽快な気分のまま、潜ろうとすると「ぼわ~ん、ぼわ~ん」それまでに聴いたことのない、こもった音が耳を覆う。
いや、待てよ。はっきりした記憶はないけれど、母の胎内に浮かんでいた時の音に似ているような気がする。異次元の世界の音、どこか懐かしい。
年を重ねられた方々に、シュノーケリングの楽しさが届きますように。
いつか海の中で、ご一緒出来ますように。
山本ふみこさんからひとこと
旅やら、冒険やら、何か一つの経験を綴るとき、そのときのことを頭からはじめて全部描こうとすると……、内容が薄まります。小学生の頃(学校から)求められた、遠足や運動会の感想文みたいなことになるのです。
「シュノーケリングは いかが」はその日のことが描かれているけれど、いろいろな、場面と考察が置かれています。熱帯魚の話。「オリジナルシュノーケリング ウィズ 浮き袋」。胎内の記憶。シュノーケリングへの誘い。
はっきりした記憶はないけれど、母の胎内に浮かんでいた時の音に似ているような気がする。異次元の世界の音、どこか懐かしい。
へええ、と思わずこころを掴まれましたとさ。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
現在は第5期の講座を開催中(募集は終了しました)。次回第6期の参加者の募集は、2022年12月を予定しています。詳しくは雑誌「ハルメク」2023年1月号の誌上とハルメク365WEBサイトのページをご覧ください。
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