「種種雑多な世界」水木うららさん
2024.11.302024年11月30日
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第9期第2回
「ゆうすげ」傳田啓子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。第9期2回目のテーマは「集める」。傳田啓子さんの作品「ゆうすげ」と山本さんの講評です。
ゆうすげ
気がついたら。サフランが紫色の花を咲かせていた。
今年は紅葉する前に、パラパラと葉が枯れ落ち、すす病で黒くなったり、ツツジグンバイ(病害虫)で白くなったりする葉が多いので、重い腰を上げ、草木の足元の草や、草よけという言い訳で、取った草をまとめ、そのまま置いていて枯れくちたものを、ようやく片付け始め、地面がきれいになった直後のことだった。
サフランは、枯草の下で、出番をじっと待っていたようだ。
太い身体をすき間にねじ込んで、木々の下を埋めている枯葉や鳥が食べたヒマワリの種のからなどを集めてかき出すと、「土」が見えてきて、スッキリときれいになった。
すると、見えてくるものがある。
山ツツジにおおいかぶさっていたのは、いつの間にか育ち過ぎた、知らないうちに鳥が運んできたらしい、ガマズミ、ウメモト、ツリバナなどの実生だった。
また、通り道を無くすほどに大きくなったツツジである。
いずれも、もったいないと思わぬことにして、花をあきらめ、切ってみた。
ゾーンに入るというそんな境地が、私にも訪れたのか、集中力が増し、植物の配置や形、切る枝の判断に迷いがなくなったのである。
これまでのためらいが信じられないほどで、来春にわかる出来映えが悪くても、その時はその時と思えるからフシギだ。
勢いのある枝をひたすら見つけることに夢中になって……「徒長枝のように勢いのある枝を切る」という教えを忠実に、ひとつずつ切っていった。
枝々の間から、周囲の景色が透けて見えるほどに、しだいに形が出来てくると、「これだ!」と、久しぶりの自分の働きぶりも含めて、大満足の日々を過ごした。
庭仕事を続けているうちに、ふと思い浮かんだのは、少し前に、小学校の同級生が持ってきてくれた、「うさぎやのそばまんじゅう」の包装紙のことだった。
これまで見慣れていたはずが、何の花のイラストか気になり、さっそく数えてみたら10種類以上ある。
この花々を集めた庭はどうだろうか。
まずは「ゆうすげ」の種を蒔くことから始めてみよう。
山本ふみこさんからひとこと
庭仕事を続けているうちに、ふと思い浮かんだのは、少し前に、小学校の同級生が持ってきてきうれた「うさぎやのそばまんじゅう」の包装紙だった。
庭仕事の情景にも引きこまれましたが、包装紙の花の絵を見て、その花花を育てようと思いつくセンスに、打たれました。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は講座の受講期間の半年間、毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。
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