通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第5期第2回

エッセー作品「深夜放送」宮脇洋子さん

公開日:2022.11.30

随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。 今月の作品のテーマは「オススメ」です。宮脇洋子さんの作品「深夜放送」と山本さんの講評です。

「深夜放送」
エッセー作品「深夜放送」宮脇洋子さん

深夜放送

いつの頃からか、夜中に2度、3度と目覚めるのが当たり前になっていた。
そんなある日、枕元にラジオを置くことにした。
深夜に目が覚めたとき、ラジオのスイッチを入れてみた。
昭和の時代の懐かしい歌謡曲が流れている。
何曲か聞いたが、気がつくと朝方になっていた。枕元では、ラジオの音が流れているにも関わらず、知らぬ間に寝入っていたのだ。

それからというもの、夜中に目が覚めると、私の手は、ラジオのスイッチに伸びる。
深夜の2時台には、ヴィンテージロック、3時台には、昭和の歌謡曲、時にはクラシックやジャズ、民謡も流れる。それらのどれも、聞き慣れた曲が多くて、懐かしい。歌謡曲などは、母がよく台所で口ずさんでいたので、聞き覚えのある大正時代の曲まで流れている。
4時台ともなれば、いろんなジャンルで輝いた生き方をしている人と、ラジオのディレクターさんとの軽快なトーク番組が楽しい。
でも、たいてい番組の最後までは聞いていないし、そんな日は当然、1時間程の朝寝坊だ。

思春期のころにテレビが普及し始めて以来、家にはずっとテレビの画像が流れていた。
ラジオといえば、幼い日に音声の悪いスピーカーから流れるドラマや音楽に、耳を近づけて聞いていた記憶があるが、テレビが普及すると同時に私の中で、長年ラジオの存在は消えていた。

以前、かなり年上の友人が、「深夜のラジオが面白いよ!」
と言ったことが頭の片隅に残っていたのだろう。
読書家の彼女は、夜寝るのが惜しいと言って睡眠時間の短いことを、当時の私は内心、心配していたことも思い出した。

先日、「夜、眠れないのよ」と言う友達にラジオの深夜放送を勧めてみたが、さて。

山本ふみこさんからひとこと

ラジオが大好きです。共感しつつ、はずんで読みました。深夜放送への誘いとしても、優しく、頼もしく。

眠れないことを悩みだけでなく、新しい道をつくってゆく感覚。この感覚はものを書くときの道導(みちしるべ)となります。

一見芳(かんば)しくない事ごとの見方、受けとめ方を変えるところから、文章世界は広がってゆきます。  

通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは

全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。

現在は第5期の講座を開催中(募集は終了しました)。次回第6期の参加者の募集は、2022年12月を予定しています。詳しくは雑誌「ハルメク」2023年1月号の誌上とハルメク365WEBサイトのページをご覧ください。


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ハルメクならではのオリジナルイベントを企画・運営している部署、文化事業課。スタッフが日々面白いイベント作りのために奔走しています。人気イベント「あなたと歌うコンサート」や「たてもの散歩」など、年に約200本のイベントを開催。皆さんと会ってお話できるのを楽しみにしています♪

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