通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第5期第2回

エッセー作品「自分だけのために」増田万紀子さん

公開日:2022.11.30

随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。 今月の作品のテーマは「オススメ」です。増田万紀子さんの作品「自分だけのために」と山本さんの講評です。

「自分だけのために」
エッセー作品「自分だけのために」増田万紀子さん

自分だけのために

40代半ばごろ、次から次へとピンチが続いた時期があった。
あまりの状況に、なんだか恐ろしくなってきて、この先良いことなどひとつもないのでは、と落ち込んでいたとき、ある女性がひと言アドバイスをくださった。
「ネイル、やってみて」と。

長い間、専業主婦として生きてきたわたしにとって、無縁だったネイル。
派手なネイルをした人を見ては「そんな爪じゃ家しごとなどできないでしょうね」などと、心の中で嫌味をつぶやいていた。
本当は、自分のことにお金や時間を使える人に嫉妬していただけだった。
今思えば、自分の「正しさのものさし」で、自分自身をがんじがらめにしていた。

そんなわたしが、月1回ネイルサロンに通うようになり、7年が過ぎた。
長さは短く、色は肌になじむピンクベージュ系、アートは両手の薬指に少し。いつもオーダーはそれだけ、あとはおまかせで。

ネイルをはじめて一番感じた変化は、自分の爪がきれいだと、とても気分がいいということだった。

手は日々の動作で必ずといっていいほど目にするパーツだ。セルフネイルとは違い、サロンでしてもらうジェルネイルは丈夫なので、がさつなわたしでも、普通に大抵の家しごとができる。
ぞうきんを持つ手も、包丁を持つ手も、何をしていても、つやつやの爪が目に入る。
爪が美しく整っていると、不思議と自信がわいてきて、うまくいかないことがあっても、
「なるようになるさー」と受け流せるようになった。

ずっと悩んでいたひどい手荒れも、だんだん治まってきて、それがうれしくて、前よりていねいにケアするようになった。
手のケアをしているだけなのに、わたし自身をいたわっているような感覚に、がんじがらめになっていた心もほどけ、癒された。

だれに見せるためでもなく、自分だけのためにネイルをする。

わたしにとって、ネイルサロン通いはとても贅沢なことだけれど、プライスレスの価値があった。
ネイルをすることで、自分の機嫌をとり、うきうきと心地よく毎日を過ごせている。
今こうしてペンを持つ手も……。

山本ふみこさんからひとこと

どうですか? 皆さん。おもしろいでしょう?とても素敵な、なりゆき物語。

派手なネイルをした人を見ては「そんな爪じゃ家しごとなどできないでしょうね」などと、心の中で嫌味をつぶやいていた。本当は、自分のことにお金や時間を使える人に嫉妬していただけだった。今思えば、自分の「正しいものさし」で、自分自身をがんじがらめにしていた。

このくだりにも、ハッとさせられました。

じつは私も還暦を迎えた日から、ネイルをするようになりました。ネイルサロンに毎月通っています。自分の爪を見るたび、ちょっとうれしくなり、励まされるのです。顔は見なくても過ごせますが、手はそうはゆきませんから。

ネイルのよいところはもうひとつ。粗忽者の私はそれまで刻みものをするとき、あわてて切り傷をつくることがあったのですが、それがなくなりました。守られている感覚があるのです。 

通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは

全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。

現在は第5期の講座を開催中(募集は終了しました)。次回第6期の参加者の募集は、2022年12月を予定しています。詳しくは雑誌「ハルメク」2023年1月号の誌上とハルメク365WEBサイトのページをご覧ください。


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ハルメク旅と講座

ハルメクならではのオリジナルイベントを企画・運営している部署、文化事業課。スタッフが日々面白いイベント作りのために奔走しています。人気イベント「あなたと歌うコンサート」や「たてもの散歩」など、年に約200本のイベントを開催。皆さんと会ってお話できるのを楽しみにしています♪

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