通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第4期第2回

エッセー作品「分厚い靴下」三澤モナさん

公開日:2022.06.02

随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月の作品のテーマは「修理」です。三澤モナさんの作品「分厚い靴下」と山本さんの講評です。

分厚い靴下

息子が赤ちゃんの時に診てもらった医師は、一歳前の息子を診断しながら言った。
「この子はすごく大きくなるよ」
何が根拠だったのかはわからないが、医師の言うことを信じた。
とてもよく食べる子だったので、預けた保育ママさんには、食費を二人分渡した。
医師の予言通り、息子はすくすくと大きくなった。
高校を卒業するころはひょろりと伸びて、身長185センチ。
手足もとても大きい。靴や靴下は「Lサイズの店」に探しに行った。

大学生の息子が帰省したときのこと。衣類の洗濯をして気づいた。
靴下がやけに分厚くモコモコしている。よく見ると、細かくてふぞろいの縫い目が見える。
穴が開いているところから、別の靴下の生地がのぞいている。
繕ったのだ。穴を塞ぐのに、別の靴下を重ねて縫い合わせ、また穴が開いたらさらに重ね、分厚くなったのだ。
黒い糸の細かい縫い目がランダムに並んでいるのを見ていたら、大きな体を丸めてチクチク縫っている息子の姿が重なって見えた。
新しい靴下を買えないわけではなかっただろうが、彼なりのこだわりの節約だったのだろう。

息子が小学校入学の時に、新しいふでばこを、「6年生まで使おうね」と言って渡した。
壊れたら新品を買う友だちが多い中、テープで補修しながら6年間使わせたことを思い出した。
初めての自転車は、私の甥っ子からのお下がり。勉強机は私の友人が処分しようとしたものをもらって使わせた。
そんな私の、もったいない薬というか、けちんぼ薬が効きすぎたのだろうか……分厚くゴロンとした靴下を手に、しばしあれこれ考えたのだった。

卒業して東京で就職した息子は、やがて少し遅い結婚をした。
今はどうしているかな?靴下。

 

山本ふみこさんからひとこと

読みながら、ちょっぴり泣きました(みなさんの作品を読ませていただきながら、しばしば泣くのです、私は)。

このような作品に講評は要りませんね。みなさん、それぞれ、ゆっくり味わってくださいまし。身近に起こった話、特に佳い話を書くときの書き方を、これから学んでゆきましょう。難しいのです、どうかすると、感じの悪い自慢話になってしまいますからね。 

 

通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは

全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。

現在、参加者を募集中です。申込締切は2022年7月4日(月)まで。詳しくは雑誌「ハルメク」7月号の誌上ハルメク旅と講座サイトをご覧ください。


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