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- エッセー作品「修理してみれば」小田原薫さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月の作品のテーマは「修理」です。小田原薫さんの作品「修理してみれば」と山本さんの講評です。
修理してみれば
形あるものは、いつか壊れる。壊れたら、可能な限り修理する。
自分で出来ない場合は、まず夫に頼む。直ることが多いけれど、夫の手に負えない場合は修理を諦めて、店を探して買うことになる。
夫が修理してくれて直ると「新しい命」が吹き込まれて、全く別の新しい製品に生れ変わったように感じる。
さずがに技術者だなぁと感心する。
自転車のタイヤがパンクしたら、自転車屋さんへ。靴底がすり減ってきたら靴屋さんへ。
そして電気製品が壊れたら、電気屋さんへ行く、ではなくて、電気屋さんへ行く前に、まず夫に修理可能かどうかを聞く。
私の目から修理が難しそうに見えていても、簡単に解決してしまった場合があったからだ。
こうして「私は修理を依頼する人、夫は直す人」となった。
例えば、壊れた懐中電燈を直し始めた夫に、何か手伝うことある、と声をかけたら「何も手伝ってくれないのが一番の手伝いだ」とひと言。
本気なのか冗談なのかはわからないが、修理に手伝いは無用だと言わんばかりの口ぶりだった。
手伝いの出番は全くなくなり、思わず苦笑。
夫にとっては、修理の一つや二つは、在職中の仕事に比べれば「朝飯前」だと思っているのだろうな。
このように大助かりの日々が続いているけれど、最近は頼り過ぎの態度をあらためなくてはと、まずは出来そうな修理に自ら挑戦している。
聞こえにくくなったラジオを取り出して少しいじり、新しい乾電池を入れると好きなフォークソングが流れ出した。
修理後贈り物が届いたようだ。
電気製品に優しい気持ちが宿ったようで嬉しかった。
山本ふみこさんからひとこと
やさしく、あたたかい作品です。しかも、さりげなくやさしく、さりげなくあたたかい……。
文章を書くとき、力むと、この「さりげなさ」が実現しません。おしつけがましくなりがちです。やさしい感じに書こう、あたたかく綴ろう、と思って書くのではだめなのかもしれません。本作には、「小田原薫」という書き手の内面が滲みだしているのだと思います。
さてところで、原本には、こんな結びがついていました。
これからは、下手は下手なりに、不器用は不器用なりに、少しずつでもいいから、修理を通して貴重な時間を重ねていければいいなあ。
これはまとめ過ぎかなあ、と思います。トル、としました。どうですか、この結び、いい感じでしょう?
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
現在、参加者を募集中です。申込締切は2022年7月4日(月)まで。詳しくは雑誌「ハルメク」7月号の誌上ハルメク旅と講座サイトをご覧ください。
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