更年期障害とホルモン補充療法を体験しました(1)

【体験談】更年期うつからホルモン補充療法の開始まで

対馬ルリ子
監修者
対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座 院長
対馬ルリ子

公開日:2020.08.25

更新日:2024.10.22

閉経前後に訪れる「更年期」。気づかぬうちに始まった更年期の症状に悩まれていませんか? 更年期によってうつ状態になった医療ライターの宇山恵風さんが、自身が更年期障害だと気付いた経緯と、ホルモン補充療法を行った体験談をつづります。

更年期障害によるうつ症状の体験談
更年期障害によるうつ症状の体験談

何かがおかしい…仕事のトラブルでめまいと嘔吐が2週続く

更年期障害

現代の日本人女性の平均的な閉経年齢は50~52歳。私はちょうど55歳になったときに閉経を迎えました。それまで「寝汗をかく」「汗が出て化粧ノリが悪い」「月経痛がひどい」程度の更年期障害と思われる不調がありましたが、乳がん、子宮がん検診でも特に問題がなかったため、異常な発汗や月経痛も、だんだん月経が飛び飛びになっていく状況と合わせて考えて、「誰にでも来る閉経が近づいているサイン」だと軽く受け止めていました。

月経が約1年来なくなって3か月ほど過ぎた頃のこと。仕事で少々落ち込むトラブルが2週連続して起こったその直後、仕事中なのに突然、我慢できない吐き気、めまい、頭痛に襲われました。

以前だったら昼休みに30分くらい横になれば仕事に復帰できたのに、何時間経っても夕方に突然起こっためまいと嘔吐が止まらず、職場の休憩室で横になり、どうにか吐き気が収まった深夜にタクシーで帰宅するという、今までに経験のない体調不良が起こりました。

2週連続して同じ体調不良だったので、これはもしかしたら「更年期障害かなあ?」と思い、勤め先の病院の婦人科にある更年期外来を予約しました。私は医療ライターをしながら、東京医科歯科大学の広報担当として医療コミュニケーションに関する仕事をしています。またメノポーズカウンセラーとして女性誌に記事を書くことが多く、更年期外来に関しても知識がありました。

不安とは無縁のはずが知らない間に「うつ状態」!?

更年期障害によるうつ状態に

受診の日、更年期外来に行くと、医師の問診を受ける前に、さまざまな質問やアンケート用紙に記入するように言われました。おもしろかったのは、それがちょうど20代の恋愛適齢期に「食べ物は何が好き?」「土日は何して過ごすの?」と男性から質問されたことがあるような内容で、ちょっとドキドキしました。

回答を記入しているうちに、「もう長いこと、誰からもこんな質問をされたことがないし、自分が今、何に関心があって、これからどう生きたいかなんて、考えたこともなかったなあ……」と、自分自身に関心が少なくなっていたことに気が付きました。

問診、血液検査、尿検査などの結果、女性ホルモンの卵胞刺激ホルモン(FSH)エストロゲン値(E2)が激減して、閉経を示す数値にまで落ちていること、コレステロール値、中性脂肪などが高いことなどがわかり、さらに自分では全く自覚がなかった「メンタル面での落ち込みが強い」と指摘されました。これにはもうびっくり。昔から不安や落ち込みとは無縁の性格だった自分が、まさかうつ的な心理的状況にあったなんて……。
 

ホルモン補充療法を始める前に検査は必須

ホルモン補充療法

主治医からは抗うつ薬とホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy:HRT)を勧められましたが、同時に2種類の薬を飲み始めてしまうと、改善が見られた場合に、どちらの効果だったのかがわからないため、どちらか1つから始めることになりました。

私は最初に、ホルモン補充療法(以下、HRT)を選びました。ホルモン補充療法は、エストロゲンの欠乏によって引き起こされるのぼせ、めまい、ほてり、発汗、性交痛などの症状を、エストロゲンを薬で補充することによって改善させる方法です。

治療を始める前には、しっかりと検査を受けてHRTを受けられるかどうかを医師の診断で確認して安全性が認められた人だけが開始します。

私の場合、乳がんや子宮がんの検診を毎年受けており、特に異常が見つかっていなかったことなど、いくつかの条件が合致したこともあり、HRTを始めてみましょうということになりました。

薬は選択肢いろいろ。医師の説明を聞いて自分で考える!

HRTで補充するホルモンは2種類あり、使う人の状態によって医師が方向性を示し、使用方法を提示してくれます。

2種類のホルモン製剤は、女性らしい体を維持して子宮内膜を厚くするエストロゲン(卵胞ホルモン)製剤と、子宮内膜が厚くなり過ぎないようにして、子宮体がんを予防する働きを持つプロゲステロン(黄体ホルモン)製剤。主に子宮のない人が行うエストロゲンのみを補充する方法、子宮がある人が行うエストロゲンとプロゲステロンの両方を補充する方法があります。

エストロゲン製剤は、飲み薬、塗り薬(ジェルクリーム)、貼り薬(パッチ)などがあり、それぞれの特徴や副作用などをしっかり確認した上で、使いやすく、体質と生活習慣に合いそうなものを選びます。私の場合、含有するアルコールに対してアレルギーがなかったので、ジェル状のエストロゲン製剤を毎日塗り続ける方法を選びました。
さらに私の場合は、子宮があり閉経後3か月という閉経直後の期間にHRTを開始することになったため、エストロゲン製剤のジェルを毎日塗りながら、1か月に12日間だけ連続して朝夕2回、プロゲステロンの飲み薬を飲むという方法を、主治医の先生に勧められ、それを選びました。

この方法を選択した場合、定期的に月経のような出血があり、それは子宮内膜症や体がんを防ぐためだと、あらかじめ主治医に説明されました。さらにHRTを続ける場合には、年に1回は乳がんと子宮がんの検診を受けて、半年に1回は血液検査を受けてホルモン、コレステロール、中性脂肪、貧血の有無、肝機能などの異常がないかどうかを確認する必要があることも主治医から説明を受けました。

ホルモン補充療法を開始して

ジェル状のホルモン補充の薬

HRTを始めたことで、自分の健康状態や体の変化に敏感になりました。「忙しくて自分の体のことは二の次」という意識から、「健康でなければ仕事も家庭もうまく回らない!」と強く思うようになり、自分の体を大切にしようという気持ちが芽生えました。
 
2週連続で起きた嘔吐とめまいという更年期症状のサインと、更年期外来を受診するという経験が、私を大きく変えてくれました。

 

■もっと知りたい■

 

宇山恵風

うやま・けいふう 医療、健康、美容情報をわかりやすく伝えるライター。NHKなどの健康美容系テレビ番組にも出演中。オールアバウトガイド。国立大学講師等も務める。書道、ヨガ、料理教室主宰。HP(www.kenbijuku.com)
 

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