専門家監修│疲れた時に!脳・筋肉・精神に効く食事

疲労回復にいい食べ物&栄養素!コンビニメニューも

林安津美
監修者
たいや内科クリニック
林安津美

公開日:2022.09.29

更新日:2024.08.01

なんだか体がだる重い。夏バテ気味だから、あっさり素麺だけでいいや、は実はNG! 疲労回復や疲れにくい体づくりのためには、食べ物が大切です。疲労回復効果が期待できるおすすめの食べ物は? 選び方のポイントや、コンビニメニューもご紹介します。

 

監修者プロフィール:林安津美さん

林安津美さん

大学卒業後JAあいち厚生連に入職し37年間病院の管理栄養士として勤務、その間豊田厚生病院・安城更生病院の技師長として17年間在籍。2022年5月よりたいや内科クリニックへ入職。病態栄養専門管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・腎臓病療養指導士・がん病態栄養専門管理栄養士・和漢薬膳師等の資格を生かし患者さんの思いを聴き・応え、患者目線でテーラーメイドの医療をお届けできるように努めています。

だるいから食べないはNG!疲労回復には食べ物が大切!

忙しい毎日の中で疲れがたまってしまっているときは、休むことと同じくらい「食事」が大切です。

人間の体は、食べ物や飲み物から摂取するエネルギーや栄養素によって、組織をつくったり、機能を維持しています。そして、疲れの原因となる物質に対抗するときにも、食べ物や飲み物に含まれる栄養素が影響すると考えられています。

これまで、疲労の原因は「乳酸」だと考えられていましたが、これは1900年代のこと。

現在では「乳酸は疲労物質ではない」という考えが定着しており、疲労の原因としては「活性酸素」が関係していることが考えられています。

疲労回復に効果的な食べ物の選び方のポイント

疲労回復に効果的な食べ物の選び方のポイント

まずは、疲労回復に効果的な食べ物の選び方のポイントをご紹介します。

栄養バランスのいい食事が基本

疲労回復効果が期待できる食べ物や飲み物としてさまざまものが知られていますが、特定の食べ物ばかりを食べるのはNG。

疲れて体がだるいとき、倦怠感のあるときは、疲労回復のためにも栄養バランスのいい食事を心掛けることが大切です。

食事で摂取したいくつもの栄養素は、お互いに影響し合って体の調子を整えており、特定の食品を食べたからといって疲れが劇的に改善することはありません。

栄養バランスが崩れると、なかなか疲れが取れない、疲れやすくなるなど逆に疲れにつながってしまう可能性があるため、栄養が偏らないよう注意しましょう。

疲労回復にいい栄養素をプラスする

疲労回復のためには、栄養バランスのいい食事に加えて、疲労回復効果が期待できる栄養素を含む食べ物・飲み物をプラスしましょう。

毎日のメニューにうまく取り入れれば、おいしく食事を楽しみながら疲労対策ができます。

疲労対策に必須の栄養素「ビタミンB群」を摂取する

疲労回復に欠かせない栄養素といわれるのが「ビタミンB群」です。

体は、タンパク質・糖質・脂質という三大栄養素を分解することで活動エネルギーを生み出しており、エネルギー不足になると、疲労感や倦怠感につながります。

エネルギーを生み出すためには、単に栄養素を摂取するだけではだめで、代謝を補助する成分が必要です。エネルギー合成をサポートするビタミンB群は、疲労対策に欠かせません。

しかし、ビタミンB群は以下のような性質から、不足しがちです。

  • 水溶性ビタミンのため調理で失われやすい
  • 体内に蓄えにくく、一度にたくさん摂取しても尿で排泄されるため毎日摂取する必要がある
  • 糖質や脂質の多い食生活をしていると、これらの分解のため多くのビタミンB1・ビタミンB2が必要になり不足につながる

疲労対策のためには、ビタミンB群を含む食べ物を積極的に摂取していきましょう。

疲労回復に即効性のある食べ物は?

疲れているときは、少しでも早く疲れを取りたいと思うもの。ですが、「これを食べればすぐに疲労が回復する、疲れに効く」といった即効性のある食べ物は、残念ながら存在しません。

しかし、栄養バランスのいい食事に加えて、疲労回復にいい栄養素をプラスすることで、疲労回復スピードが早くなったり、疲れにくい体づくりにつなげることができます。

仕事や勉強を長時間行う際に脳のエネルギー源となる糖を間食として摂取する、運動後にタンパク質や糖質を摂取するなどは、疲労回復に効果的です。

疲労回復・疲れにくい体に!おすすめの食べ物

疲労回復・疲れにくい体に!おすすめの食べ物

ここからは、疲労回復・疲れにくい体におすすめの食べ物をご紹介します。

動物性タンパク質は、肉体疲労にも精神疲労にも効果的といわれています。タンパク質は筋肉の修復に役立ち、肉に含まれるアミノ酸「トリプトファン」は、精神的な疲れに関係するホルモンである「セロトニン」の材料になります。

豚肉、鶏肉、牛肉、羊肉、鯨肉など肉にはさまざまな種類がありますが、中でも豚肉と鶏肉は疲労回復におすすめです。

豚肉には、一般的な肉の中ではビタミンB1が最も多く含まれています。ビタミンB1は糖質からエネルギーを生み出すために欠かせない栄養素で、疲れに有効です。不足すると倦怠感、疲労感、体がだるいなどの症状につながるため注意しましょう。

鶏肉には、2つのアミノ酸がくっついた「イミダゾールジペプチド(イミダペプチド、イミダゾールペプチド)」が含まれています。

イミダゾールジペプチドは、渡り鳥が休むことなく長距離を飛び続けるパワーの源として注目を集めている成分です。疲労の原因と考えられている活性酸素を除去・抑制する抗酸化作用があります。

また、疲れたときに食べたい食材として女性におすすめなのが、鯨肉。鯨肉にはイミダゾールジペプチドの一種であるバレニンが含まれており、抗疲労効果、抗酸化作用が期待できます。

鯨肉には鉄分が多く含まれているので、生理や貧血などで鉄分を積極的に摂取したい場合にも向いています。

レバー

レバーも、疲労対策として取り入れたい食材の一つです。肉類に含まれる鉄分は「ヘム鉄」と呼ばれタンパク質と結びついており、植物性の食べ物に含まれる「非ヘム鉄」よりも吸収されやすいという特徴があります。

レバーには、脂質をエネルギーに変える作用のあるビタミンB2も豊富。特に鉄分含有量が多い、豚や鶏のレバーを選ぶのがおすすめです。

うなぎ

うなぎは滋養強壮にいい食べ物としても知られており、栄養価が高く、疲れへの効果が期待できるさまざまな栄養素を含んでいます。

ビタミンB1の含有量は魚介類の中でもトップクラスで、ビタミンB2やビタミンEも含まれています。ビタミンEには抗酸化作用や、血流を良くする効果があります。

カツオ

カツオは、動物性タンパク質を豊富に含んでいる食品です。また、カツオにもイミダゾールジペプチドが含まれています。

さらに、タンパク質や糖質、脂質をエネルギーに変えるビタミンB群も豊富に含まれているため、疲れているときにおすすめの食材です。

果物

果物には、ビタミンやミネラル、糖質が豊富に含まれており、疲労回復の他にも脳の活性化、脂質や塩分の排出など数多くの効果が期待できます。

果物に含まれる代表的なビタミンであるビタミンCには、抗酸化作用があります。

疲労回復におすすめなのは、オレンジやグレープフルーツ、みかん、レモンなどの柑橘類です。キウイやいちごも、ビタミンCが豊富であるためおすすめです。

果物には疲労回復効果が期待できるクエン酸も含まれているので、疲れているときは果物もプラスするといいでしょう。

甘酒

「飲む点滴」と呼ばれ、江戸時代から重宝されていたという甘酒もおすすめ。アミノ酸やビタミンなど疲労回復効果が期待される栄養素を含み、吸収もいいです。

市販のものを選ぶときは、なるべく砂糖が使われていないものを選びましょう。

疲れのタイプ別!おすすめの栄養素

疲れのタイプ別!おすすめの栄養素

疲れといっても、タイプはさまざまです。ここからは、疲れのタイプ別におすすめの栄養素をご紹介します。

全身の疲れ・総合的な疲労回復に

全身の疲れがある場合は、ビタミンB群やカルシウム、鉄を積極的に摂取しましょう。

ビタミンB群が不足すると疲労感が出ることがあるため、不足しないように毎日一定量を摂取することが大切です。

カルシウムが不足すると骨が弱り、筋肉や関節に負担がかかって疲労につながります。女性は年を重ねると骨粗鬆症にかかりやすくなるため、カルシウムは積極的に摂取しましょう。

鉄分は体に酸素を運ぶ際に必要不可欠な栄養素で、疲れやすさを取り除く作用があります。

肉体疲労・筋肉疲労

肉体疲労・筋肉疲労がある場合、ビタミンB1とアリシンを同時に摂取するのがおすすめです。

アリシンはにんにくやニラ、ネギに含まれているので、薬味として取り入れると手軽に摂取できます。

慢性疲労・精神疲労

慢性疲労や精神疲労があるときは、βカロテンやビタミンC、ビタミンEがおすすめです。これらの栄養素は、活性酸素を除去する抗酸化作用を持っています。

にんじんやかぼちゃ、ほうれん草などの緑黄色野菜に豊富に含まれています。

疲労軽減効果のあるクエン酸もおすすめです。クエン酸は柑橘類、梅干し、酢などに豊富に含まれています。

目の疲れ

目の疲れの原因の一つは、目の周囲の筋肉の疲労です。目の機能維持に関わるビタミンB1、粘膜の健康を維持するビタミンB2、神経の機能維持に関連するビタミンB6やビタミンB12を摂取するといいでしょう。

また、ビタミンAも目にとって重要です。ビタミンAは、結膜や角膜の働きをサポートしています。目の水晶体に多く含まれるビタミンCもしっかり取りましょう。

肩こり、腰痛

肩こりや腰痛には、筋肉や神経の疲労を緩和させる働きが期待できるビタミンB1を始めとしたビタミンB群を摂取するのがおすすめです。

末梢の血管の血流をよくし、酸素や栄養、体の老廃物を運ぶのを助けるビタミンEも一緒に取りましょう。

腰痛がある場合、上記に加えてタンパク質やカルシウムもプラスしましょう。これらの栄養素によって筋肉や骨を強化することで、腰痛の改善や予防に役立ちます。

夏バテ(季節的な疲労)

夏バテによる季節的な疲労は、食欲不振や胃腸の不調として現れます。胃腸機能の低下により食べ物がうまく消化・吸収できなくなると栄養不足になって、疲れやだるさが起こります。

疲れによって食欲が落ちてしまったときは、辛いものや酸っぱいものなど食欲を増進させてくれる食べ物もおすすめです。

爽やかな香り・風味で食欲が湧いてくる「薬味ミックス」、茶カテキンの他にもビタミンB1など栄養豊富な「お茶でさっぱり夏バテ解消レシピ」も夏バテにぴったり。

季節の変わり目の気温の変化に対応できずに不調が起こる「秋バテ」が気になる人は「レモンはちみつ漬けレシピ」もぜひ試してみてください。

疲れたときにおすすめのコンビニメニュー

忙しいときや手軽に栄養補給したいときは、コンビニを活用すると手軽です。疲れたときにおすすめのコンビニメニューとしては、以下のようなものがあります。

  • カットフルーツや冷凍フルーツ
  • 梅干しのおにぎり
  • 幕の内弁当
  • 黒酢ドリンク
  • 甘酒
  • ゆで卵
  • サラダチキン
  • プロテインドリンク、プロテインバー
  • アーモンド、小魚(アーモンドフィッシュ)
  • するめいか
  • バナナ など

食事と食事の時間が空いてしまうときなどは、間食として、疲れに効く食べ物を取り入れてもいいかもしれません。

栄養バランスのいい食事で疲労回復!

疲労回復のためには、栄養バランスのいい食事が基本です。疲れが気になるときは、それに加えてさらに疲労回復効果が期待できる栄養素を取り入れましょう。

疲労回復のためには食事だけではなく、質のいい睡眠や適度な運動も大切です。普段から体の調子を整えるよう心掛け、疲れにくい体をつくりましょう。

※この記事は2022年9月の記事を再編集をして掲載しています。

■もっと知りたい■

 

ハルメク365編集部

女性誌No.1「ハルメク」の公式サイト。50代からの女性の毎日を応援する「観る・聴く・学ぶ・つながる」体験型コンテンツをお届けします。
会員登録をすれば、会員限定動画を始めさまざまな特典が楽しめます!

マイページに保存

\ この記事をみんなに伝えよう /

注目企画