夏は胃腸の疲労や自律神経の乱れの対策を

夏バテの原因・症状・予防方法を徹底解説!

大河内 昌弘
監修者
おおこうち内科クリニック 理事長&院長
大河内 昌弘

公開日:2020.09.09

更新日:2023.07.31

なんだか疲れがとれない、食欲がない、だるい……。こんな症状はありませんか? もしからしたら夏バテかもしれません。自律神経の乱れを整えて、水分・睡眠不足を解消し、疲労回復に努めましょう! 見落としがちな「冷えバテ(クーラー病)」も必見です。

夏バテの原因・症状・予防方法
夏バテの原因・症状・予防方法

監修者プロフィール:大河内 昌弘さん(おおこうち内科クリニック 理事長&院長)

大河内 昌弘さん

名古屋市立大学医学部卒業。愛知県公立尾陽病院で内科医として勤務後、名古屋市立大学病院・アメリカルイジアナ州立大学・名古屋市立大学病院で研究員として勤務。厚生連尾西病院内分泌代謝科部長、名古屋市立大学消化器代謝内科学臨床准教授を務めた後、2012年10月におおこうち内科クリニックを開院。日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医、日本内科学会認定 総合内科専門医。

夏バテって何?どんな症状なの?

夏バテとは、夏の高温多湿な環境に体の機能が対応しきれずに起きた体調不良のことを言います。夏バテは医学用語ではありませんが、体がだるい・食欲がない・疲れやすいなど、主に自律神経系の乱れによる症状の総称として使われ、夏負け・暑気あたりとも呼ばれます。 

夏バテの症状は、以下のようなものがあります。

  • 疲れがとれない(疲労感・倦怠感)
  • だるい、やる気の低下
  • 食欲がなくなる(食欲減退)
  • めまい
  • 頭痛、肩こり
  • 熱っぽい
  • 下痢
  • イライラする

夏バテの原因とは?自律神経の乱れ・胃腸の冷えに注意

夏バテの直接的な原因は、高温多湿な環境による疲れの蓄積です。体温調節のために自律神経をフル稼働した結果、乱れが起こることが主な要因だと言われています。

その他、水分不足や睡眠不足、胃腸の冷えなどがあると、体の不調を引き起こしやすくなります。

夏バテの原因1:自律神経の乱れ

自律神経は体温や睡眠、免疫などを調整する役割を担っています。高温多湿な環境は、自律神経の体温調節機能に大きな負担がかかります。その結果、自律神経が乱れると、頭痛やめまいなどさまざまな症状が出るため、夏バテの原因となります。

夏バテの原因2:水分不足・脱水

人間は汗をかくことで体温調節をしますが、暑い夏にたくさん汗をかくと水分と塩分が失われ、脱水状態になることも。脱水状態になると、血流やリンパの流れが滞り、頭痛や体のだるさなどの体調不良を引き起こします。体内の水分不足は心臓や腎臓に負担がかかる原因にもなります。

夏バテの原因3:睡眠不足(暑さ→睡眠の質の低下)

夜になっても気温が下がらない熱帯夜が続くと、寝苦しさから睡眠の質が低下し、睡眠不足になることもあります。睡眠不足によって疲労回復が遅れると、だるさ・倦怠感につながります。

夏バテの原因4:胃腸の冷え

暑い日が続くと、冷たいものを食べることが多くなります。冷たい食べ物・飲み物ばかりをとっていると、胃腸が冷えてしまい、消化機能に問題が起きてしまうことも。食欲減退や下痢などの症状につながるため、胃腸の冷えには十分な注意が必要です。

夏バテ予防のポイントは食事・睡眠・運動などの生活習慣

夏バテ解消には、自律神経の乱れを整えることが第一! そのためにも、栄養バランスのよい食事・十分な睡眠・適度な運動を心掛けることが大切です。体調不良が続いている人は、ここで紹介する夏バテ予防のポイントをチェックして、生活習慣を見直しましょう。

夏バテの予防対策方法1:空調管理・体温調整

屋外と室内の温度差が大きくならないように、暑すぎず冷やしすぎない快適な室温を保ちましょう。身体に無理のない温度差は、夏場は5~7度程度とされています。そのため、室温は28度程度、屋外との温度差は7度以内にしましょう。

オフィスなど温度設定が変えられない環境では、風が直接あたらないよう風向きを変える、カーディガンや靴下などで体温調節するなどの対策がおすすめです。

夏バテの予防対策方法2:栄養バランスのよい食事

暑い夏は食欲が低下することが多いものです。また、そうめんなど炭水化物に偏った食事で栄養バランスが崩れがちです。夏バテで栄養不足にならないように、少量でも栄養価の高い食事を心がけましょう。タンパク質やビタミン・ミネラル類を豊富に含んだものが理想です。

夏バテによる食欲不振でだるさや疲労感を感じるときは、ビタミンB1を積極的にとりましょう。ビタミンB1は炭水化物に含まれる糖質を効率よくエネルギーに変える働きがあるため、疲労回復効果も高まります。

ビタミンB1が豊富な食材には、ウナギ、豚肉、カツオ、大豆製品、玄米などがあります。ビタミンB1の吸収を促進する「アリシン」という成分を含む、ニラやネギと一緒に食べるとより効果的です。ビタミンB1は、体に留めておくことができないため、こまめに取ることも大切です。

また、梅干し、お酢や、レモンなどの柑橘系に含まれるクエン酸は、疲れの原因になる乳酸の発生を抑えてくれます。

トマト、ナス 、きゅうり、 ピーマン 、 オクラ 、 スイカなどの旬の夏野菜や果物は、ビタミンやミネラルが豊富で彩りも良く、目からも食事を楽しむことができます。消化吸収を助けるオクラ、納豆、なめこ、山芋などのネバネバ食材も積極的に取り入れると良いです。

また、睡眠不足や暑さによりストレスが増えると、ビタミンCが消費されやすくなるので、不足しないように注意が必要です。


▼夏バテに効果的な食べ物と栄養

•    たんぱく質:肉、魚、卵や乳製品・大豆製品など
•    ビタミンB1:ウナギ、豚肉、カツオ、大豆製品、玄米など
•    ビタミンC・A・Eやカリウム、カロテン: トマト、ナス 、きゅうり、 ピーマン 、 オクラ 、 スイカなどの夏野菜や果物
•    クエン酸:梅干し、お酢や、レモンなどの柑橘類
•    ネバネバ食材: オクラ、納豆、なめこ、山芋など


夏バテの予防対策方法3:水分補給

水分不足にならないよう、水分補給で熱中症や脱水症状を防ぎましょう。「早めに」「こまめに」補給する事がポイントです。喉が渇いたと感じる時にはすでに脱水が始まっていることもあります。

また、発汗は水分だけでなく、塩分(電解質)も同時に失っています。特に、運動や暑い場所での作業後などで汗をかいた後は、失われたミネラルを補給するため、スポーツ飲料や経口補水液などによる水分補給がおすすめです。食事で摂れる水分以外に、1.0~1.5Lを200ml×6、7回に分けるなどして、こまめに飲むようにしましょう。

ただし、スポーツ飲料は糖分も多く含むため、常飲すると糖分過多になるので要注意です。糖分過多にならないように、普段の食事ではお茶や麦茶にするなど、飲み物を工夫しましょう。

また、冷たい飲み物ばかり飲むと内臓を冷やしてしまうので、常温か温かい飲み物にすると胃腸の負担を減らすことができます。

夏バテの予防対策方法4:休養・睡眠

疲労回復には、睡眠の質が重要になります。寝苦しくないようにエアコンで温度調節をするのがおすすめです。しかし、一晩中冷房をかけて体を冷やし過ぎると、疲れが取れずにだるさを感じることにつながりますので、「おやすみモード」のタイマーや「弱」に設定して風量を弱めることをおすすめします。

また、可能であれば寝室入口のドアや窓を少し開けたり、扇風機の首振り機能を使うことで空気の流れを作ることもよい方法です。

さらに、寝具に冷感マットやござ、吸・放湿性に優れた天然素材(綿、麻、絹など)を取り入れる、氷枕で直接頭部を冷やすことも効果的です。加えて、睡眠不足を感じたときは、20分程度の昼寝も効果的です。

夏バテの予防対策方法5:適度な運動

適度な運動で汗をかくことは、体温調節のサポートにもつながります。ただし、炎天下での運動は熱中症になる危険性もあるので、涼しい時間帯の朝や夜に行うようにしましょう。

ウォーキングや室内でできるストレッチ、ヨガなどの軽い体操や、簡単な筋トレなどがおすすめです。血流がアップして、体力維持にも役立ちます。また、なるべく歩く・階段を使うなど、日常で無理なくできる適度な運動に心がけましょう。

体が冷える「冷えバテ(冷房病・クーラー病)」にも注意

食べ物や冷房で体が冷える「冷えバテ」にも注意!

夏の体調不良は、暑さだけが原因ではない場合もあります。自律神経の乱れは屋外と室内の温度差によるものなので、冷房で体が冷え過ぎる「冷えバテ(冷房病・クーラー病)」にも注意が必要です。

では、冷えバテとはどんなもので、どのように予防すればよいのでしょうか。

冷えバテ(冷房病・クーラー病)とは?

暑いからといって、冷房が効いた部屋の中にばかりいると、知らず知らずのうちに体が冷え、血行不良になります。血行不良を起こすと、胃腸の冷えや食欲減退につながることも考えられます。

また、冷房が強く効いたエリアに長時間いた後、外に出て暑さにさらされることで、自律神経が混乱するため、夏バテや冷え性と同じように、だるさや肩こり、下痢などの症状を感じます。

夏でも体の冷やし過ぎには注意!冷えバテの予防方法

冷えバテかな? と思ったときは、以下のポイントをチェックしてみましょう。

  • エアコンで涼しい室内にずっといる
  • 入浴はシャワーだけで、湯船に浸からない
  • 外出してもあまり歩かない(車移動が多い)
  • 下着を着用せず、肌の上に直接衣類を着る

冷えバテの予防として、エアコンで冷やし過ぎないことが大切です。夏だからといって薄着は禁物です。特に、首や足などは冷えやすいので、カーディガンやひざ掛けになるスカーフなどを持参して服装で調整しましょう。

また、夏でも38~40度程度のぬるめのお湯にゆっくり(目安は10分以上)浸かってしっかり身体を温めることも冷えバテの予防につながります。

暑い夏に体の不調や疲れを感じたときは、食事・睡眠・運動とともに、体を冷やし過ぎないことにも注意が必要です。自律神経の乱れに注意して、夏の暑さを乗り切りましょう。

※この記事は2020年9月の記事を再編集をして掲載しています。

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